NoGoD「自分たちよりかっこいいバンドを観たことがない」 自信と葛藤の狭間で鳴らす音楽と20年を語る

 ヴィジュアル系ロックバンド NoGoDの結成20周年記念ベストアルバム『Le: VOYAGE』がリリースされた。

 結成10周年を記念して発表された作品『VOYAGE ~10TH ANNIVERSARY BEST ALBUM』の再来(Re:)という意味に加え、「Le voyage de ma vie」(私の人生の旅)というテーマを反映した本作には、2016年以降の作品から選りすぐりの楽曲をコンパイル。さらに新曲「I Can’t Say Goodbye」も収められ、ここ10年の軌跡とこの先のNoGoDを体感できるベストに仕上がっている。メンバーの団長(Vo)、Shinno(Gt)、K(Dr)、hibiki(Ba)、Iyoda Kohey(サポートギター)に本作の制作、これまでのバンドのキャリア、将来的なビジョンなどについて語ってもらった。(森朋之)

日本でやる以上はJ-POPから外れちゃいけない(団長)

――結成20周年、おめでとうございます! ヴィジュアル系のシーンにおいて、ここまでオーセンティックなヘヴィメタルを体現し続けているバンドはほかにいないと思います。

K:自分たちもそう思いたいです。(ほかのメンバーへ向けて)どうですか?

団長:どうなんでしょうね(笑)。そもそも20年前にこのバンドをスタートさせた時、ヴィジュアル系をやろうとは思っていなかったんです。その前は日本のメタル、いわゆるジャパメタ(ジャパニーズメタル)のシーンにいたんですけど、なかなかマニアックな世界というか、10代の自分にはちょっと息苦しく感じていたところがあって。「メタルはこうじゃなくちゃいけない」みたいな感じがわずらわしかったし、もっと自由に好きな音楽をやりたいと思って、ヴィジュアル系のフィールドに行ったんですよ。

――好きな音楽を自由にやるための決断だったと。

団長:そうですね。hibikiちゃんみたいにジャパメタのシーンで名を上げたかったんですけど、我々にはその技量がなく、やり方もわからず。

hibiki:先輩バンドに加入するという方法もあるけどね。

団長:それ、ボーカルには無理でしょ。

hibiki:(笑)。今はシーンもだいぶ変わってきてますけどね。ヴィジュアル系のかっこいい人たちがモダンなメタルをやっていたりするので。

団長:そうだね。我々がこのバンドを始めた頃はヴィジュアル系に対する偏見もあったし。さっきも言ったように自分たちはただ自由を求めていただけで、ヴィジュアル系に固執していたわけでもなくて。もちろんヴィジュアル系の歴史や成り立ちも勉強しましたけどね。

K:自由にやるというのがコンセプトだったと言いますか。コロナの時期には「(オフラインでのライブができないの)だったら配信でやろう」とスタッフを含めて柔軟に対応できたし、だからこそ続けてこれたんだろうなと。

Shinno:大前提として楽しくないとダメだと思っていて。好きなことをやるって、楽しいだけじゃないとは思うんですけど、それでも自由にやらせてもらえた環境があったから、この5人に巡り合えたというか。「続けてきてよかった」と感じられる瞬間があるのは素晴らしいことだし、歩みを止めなかったから今の状況があると思えるのは幸せですね。

NoGoD Chronicle 2005-2012【Visions Ⅰ】Studio Live 2020.06.10

――なるほど。Iyodaさんはサポートギタリストという立場ですが、今のバンドの状態をどう捉えていますか?

Iyoda Kohei(以下、Iyoda):楽しく、のびのびやらせてもらっています。団長さんを筆頭に、メンバーのみなさんもすごく自由にやっていて。もちろん音楽的にも素晴らしいし、「こうやって20年続けてきたんだな」と実感していますね。サウンド的にもすごく好みなんですよ。(脱退した)Kyrieさんのプレイ、コードの組み立てやボイシングなどもそうですけど、学べることもすごく多くて。ギタリスト人生において、吸収できることがたくさんあるし、今後もみなさんの背中を追いかけていきたいなと。

団長:20年前って、7歳でしょ?

Iyoda:そうですね。ドッチボールが楽しかったです(笑)。

――hibikiさんは2018年からNoGoDをサポートしはじめ、その後、正式加入。実際に関わる前はこのバンドに対してどんな印象を持っていたんですか?

hibiki:僕はヘヴィメタル界隈にいたので、ヴィジュアル系のシーンでやっているNoGoDは「華やかにやってるな」と思ってましたね。前のベースの華凛さんが抜けたあと、何人かゲストベーシストが呼ばれていて、いちばん最後が僕だったんですよ。声をかけてもらった時は「最初に呼べよ」って思いましたけど。

団長:ははははは!

hibiki:「呼ぶべきベースはここにいるだろう!」っていう(笑)。NoGoDの曲は知っていたし、「大抵のところはカバーできるよ」という自負もあって。

団長:もちろん、僕らも呼びたかったんですよ。でも、hibikiはメタルの申し子みたいな人だったから、「ヴィジュアル系のフィールドでやってもらえるのかな?」という部分があって。そういう心配はあったよね?

K:うん。

hibiki:正直、もうメイクはきついですけどね。

団長:本当に言ってる? 積極的にやってるように見えるけど。

hibiki:もちろん冗談です(笑)。自分の人生的にもたくさんの幸せをもたらしてくれたし、必要とされる状況はうれしいじゃないですか。メンバーもそうだし、信者(ファンの呼称)の皆さんにも求められると「ベースを続けていてよかったな」って。僕、音符をたくさん弾くのは得意なんですけど、NoGoDに入るまでは、いまいち自分の存在がメタルファンに突き刺さり切ってなかったと思うんですよ。このバンドに声をかけてもらって、引っ張り上げてもらって。やりたいことと求められることのバランスが取れた感じはありますね。

団長:こちらも同じ意見というか、hibikiが入ってくれて本当に良かったと思っています。前任ギターのKyrieはメタルだけじゃなくて、プログレやポップスもカバーできたし、それがNoGoDのサウンドのイメージにもなっていたんですよね。僕とKさん、Shinnoさんはどちらかというとパッションで音楽をやるタイプだったから、理数系みたいな感じで音楽を作れるKyrieがいたからこそ、このバンドのサウンドの面白さにつながっていたというか。なので彼が抜けた時はかなり危機感があったんです。そこにhibikiちゃんが入ってくれて、NoGoDのパブリックイメージを守ってくれたし、さらに新しい引き出しを与えてくれて。

hibiki:ありがとうございます。

――今のNoGoDは、いろんな時代のメタルが混ざっているイメージもあります。

団長:そうですね。ただ、最先端のモダンメタルには届いてないんですよ。そこは自分たちのルーツではないので。

hibiki:確かに最新じゃないけど、古いヘヴィメタルではないですよね。メタルコアの要素があったり。

団長:そこから先は海外の人にお任せと言いますか。日本人ができる限界値をギリギリまで高めたいし、“日本人のために”というのも念頭に置いてて。日本でやる以上はJ-POPから外れちゃいけないと思っているんですよ。その枠から出るんだったら海外でやるべきだし、英語詞で歌うべきなので。

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