YONA YONA WEEKENDERS、『予酔いの宵』誕生の裏側 葛藤を抱えた再出発、形が変わっても進み続ける覚悟
YONA YONA WEEKENDERSによる6枚目のEP『予酔いの宵』は、これまでの軌跡の振り返りを通して“自分たちらしさ”を再確認した3人が生み出した、渾身の代表作にして、新しいスタートラインとなる一作だ。昨年末、3人体制として新しく再出発をしたことは、彼らのバンド史にとって非常に大きなターニングポイントとなった。
今回のインタビューの中で磯野くん(Vo/Gt)が語っているように、2025年から本格的に幕を開けたバンドの新しい旅路は葛藤の連続の日々だったが、しなやかに変化を受け入れ、3人は逞しく前進し続けた。その結実として生まれたEP『予酔いの宵』の全5曲の収録曲の制作秘話を、3人に語ってもらった。(松本侃士)
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三人体制初の挑戦、形が変わっても進み続ける覚悟
——今回のEPの中から一番最初に世に出たのが、2月にリリースされた「あたらしい旅」です。昨年末、3人体制になってから初めてリリースされた曲でもありますね。
磯野くん:そうですね。ちょうど3人体制になることが決まった頃に、テレビ大阪さんからドラマ『地球の歩き方SP inベトナム』のエンディング曲を書いてほしいという依頼をいただいて。僕はたまたまベトナムにひとりで旅行に行ったことがあったので、内容的にも“旅”がテーマということでリンクする部分がありました。
あと、1行目で〈かたちは変わってゆくの〉って書いてるんですけど……前のバンドを含めて長いこと活動してきましたが、サポートを入れてバンドをやったことは一度もなくて。ましてや、YONA YONA WEEKENDERSのサウンドをギターで担ってたメンバーがいなくなって、どうすっかなっていう。とにかく不安で、「どうなっていくんだろう」と今まで味わったことがないぐらい心の中はぐちゃぐちゃでした。でも、僕はリーダーなので、自分がふわふわしてたらダメだなと。
3人になって最初のライブは三重のANSWERというライブハウスだったんですけど、その時はサポートギターを入れる時間がなくて、僕ら3人と、いつもサポートしてくれてるキーボードの4人でやったんです。正直、頭が真っ白でよく覚えてないんですけど、スタッフを含め周りから「よかったよ」と言ってもらえて。その時に思ったのが、「形が変わったとしても進んでいかなきゃいけない」「YONA YONA WEEKENDERSを続けていくっていう覚悟を決めた以上、頑張っていかなきゃいけない」ということ。そういうことがあって、ドラマの世界観とリンクさせつつ歌詞を書き始めていったら、歌詞が自然と自分の心情そのままになりました(笑)。
——次に発表されたのが、4月リリースの「イケてるPOP」ですね。4月7日の「ヨナの日」のライブで初めて聴いた時、キラキラとした輝きと温かい親しみ深さを感じて、王道ポップスとしての響きに感動しました。磯野さんの歌を、今まで以上に遠くへ届けようとする気概も伝わってきました。
磯野くん:この曲、実は7、8年ぐらい前に作っていた曲で。友達のシンガーの女の子とふたりでライブすることがあって、「一緒に歌える曲を作ろうよ」というところから生まれた曲なんです。今までの作品にも何回か入れようとしてたんですけど、アレンジの部分などでなかなか形にならず、そのままお蔵入りになってて。「あたらしい旅」の次の一手をどうするか悩んでいた時に、この曲を引っ張り出してきました。
サビの歌詞はわりと当時のままですが、それ以外は今の心境で書き直しました。この曲、「音楽にありがとう」みたいなことを書いてるんです。辛い時も、過去を振り返る時も、未来に進んでいく時も、いつもそばにあるのは音楽。だから、自分たちは音楽とともにあり続けるみたいな、そういう意味で。もともとYONA YONA WEEKENDERSは「僕の歌をみんなで活かすバンドをやりたい」という感じで始まったので、そこに立ち返る意味でも、この曲はよかったと思います。
でも、「ヨナの日」にライブで初めて披露する時は「ちょっとポップすぎるんじゃないか」って不安でした。でも、実際に歌った時にめっちゃ感情が乗って。その後の東京・WWW Xの5日間連続ライブの最終日に歌った時には、泣いちゃいましたね。いろんなことがあっても、やっぱり助けてくれるのは音楽や周りにいる仲間だよね、と実感できた。音楽は魔法だと。「ありがとう」って思ったら、その気持ちがすごく乗りました。「ヨナの日」ではサポートのホーンふたりも加わってくれて、ライブに参加してくれるならレコーディングもお願いしようと。サウンドも豪華になって、周年を祝う特別なステージで披露できたこともあり、とても気持ちの入る曲になりました。
——6月には、「I.K.T.W」(読み方:あいけーてぃーだぶりゅ」)がリリースされました。
磯野くん:実は、去年出した2ndアルバム『LIVE』の時からデモ自体はあったんです。「イケてるPOP」を作って、じゃあ次は何にしようかと迷っていた時に、去年ライブで台湾に行ったのがすごく楽しかったことを思い出して。EP全体のコンセプトは一旦置いといて、また行きたいしライブをしたい、という台湾へのラブコールみたいな気持ちを込めた曲です。
——先ほども少し話が出ましたが、同じく6月にはWWW Xで、1日ずつ過去5枚のEP収録曲をフィーチャーする5日間連続公演がありました。これまでの軌跡を再確認する意味合いがあったと思いますが、あの5日間を通してどのようなことを感じましたか?
スズキシンゴ(以下、スズキ):やっぱりライブって、僕らだけじゃなくてお客さんと作るものじゃないですか。もちろんお金を払って観に来てくれてるんですけど、一緒に作るっていう、その熱量を再確認できた。それに、先輩方が「YONA YONAのお客さんっていいよね」って言ってくださったこともあって、それは誇りに思いましたね。
——8月には、「未明のブルー」がリリースされました。最後に〈朝が来る/こんな夜にも〉というラインがあって、とても美しいなと思いました。バンド名にも“夜”を表す言葉が入っていますが、これまで夜を歌い続けてきたYONA YONA WEEKENDERSが、未明、夜明け朝を歌うって、これはエポックメイキングなことなんじゃないかなと思います。
磯野くん:夜っていろんな感情が渦巻くじゃないですか。自分たちもそうですけど、真っ直ぐ、真面目に生きてきただけじゃなくて、いろんなね、寝れない夜もあったわけですよ。やっぱり人は過ちだって犯すし、失敗もする。だけど結局、朝はやってくる。その感覚を歌に込めました。
——もしかしたら多くの人は「朝が来ることを忘れてずっと踊っていたい、飲んでいたい、ずっと夜に縋っていたい」と思うことが多いかもしれませんが、この曲は、朝が来ることを肯定的に捉えているように感じました。
小原“Beatsoldier”壮史(以下、小原):リアルな夜ですよね。これまでのほかの曲は理想論とまではいかずとも比較的ポジティブな歌詞を歌ってたりすると思うんですけど、この曲は暗さみたいなものがあって。だからこそ、さっきおっしゃっていただいた最後の歌詞が刺さるんでしょうね。