YONA YONA WEEKENDERSが鳴らす“人生”に寄り添う音楽 「バンドやっててよかった」と零した一夜を振り返る

YONA YONA WEEKENDERS ライブレポ

 10月11日、YONA YONA WEEKENDERSのZepp Shinjuku公演が開催された。彼らは、7月24日に2枚目のフルアルバム『LIVE』を発表し、同作を掲げたリリースツアーを数カ月間にわたって敢行してきた。今回のライブは、そのツアーファイナル公演にあたる。『LIVE』と題されたアルバムに収録されている楽曲たちが、数々のライブを重ねてきた中でどのような変化/進化を見せるのかーーそうした期待を抱きながら参加したファンもきっと多かったと思う。この記事では、長きにわたるツアーの万感の終幕を飾った一夜の模様を順を追って振り返っていく。

YONA YONA WEEKENDERS(撮影=Isamu Honma)

 開演前のBGMは、秦基博「ひまわりの約束」やEvery Little Thing「Time goes by」をはじめとした数々のJ-POPナンバー。アルバム『LIVE』の制作においてJ-POPというテーマを掲げていた(※1)ことが、こうした選曲に繋がっているのだろう。なお、開演前のスクリーンには、開演に向けて準備を進めるメンバーとスタッフのLINEのやり取りがありのまま公開されていた。開演を告げるSEが鳴り、メンバーが登場。今回も、サポートメンバーとして高橋遼(Key)、西恵利香(Cho)を迎えた磐石の6人編成によるステージだ。SEが鳴り止むのと同時に、磯野くん(Vo/Gt)が、ステージ中央に設置された冷蔵庫(中には、たくさんのビールが入っている)の上部に置かれた『LIVE』のロゴのスイッチをオンに。そして、「東京、久しぶり、楽しみましょう!」という高らかな呼び掛けから、アルバムの冒頭2曲「シナプス」「Long Ride」を披露。筆者は、アルバムリリース前日の7月23日に行われた代官山UNIT公演も観たが、その時と比べて、『LIVE』の各曲がメンバーの身体に深く馴染んでいるような印象を受けた。しなやかに、ダイナミックに躍動するバンドサウンド。逞しい響きを放つ磯野の歌。それらが渾然一体となった時に生まれるライブだからこその熱烈なエネルギーに、冒頭から圧倒されてしまった。

磯野くん(撮影=Isamu Honma)
磯野くん
キイチ(撮影=Isamu Honma)
キイチ
スズキシンゴ(撮影=Isamu Honma)
スズキシンゴ

 最初のMCパートで、彼らのライブ恒例となっている乾杯タイムへ。磯野が缶を開ける音をマイクを通して会場に響かせた後、満を持して乾杯の音頭を取る。そして小原“Beatsoldier”壮史(Dr)のドラムロールを受け、この日の1杯目を一気に飲み干してみせる。「普段どおりやりますんで、踊れますか? 飲めますか?」と問いかけ、再びライブパートへ。

YONA YONA WEEKENDERS(撮影=Isamu Honma)

 数々の楽曲が披露されていく中で、今回特に大きな存在感を放っていたのが、やはり『LIVE』の収録曲たち。「メシ食って寝るだけ」の終盤の激烈なバンドセッションから「寿司と酒」へとアルバムの曲順どおりに繋ぐ流れでは一際大きな歓声が巻き起こり、そして、磯野の〈腹の底から〉という豪快なアジテーションを受け、フロアの熱気が際限なく高まっていく。あまりにも熱い展開だった。

小原“Beatsoldier”壮史(撮影=Isamu Honma)
小原“Beatsoldier”壮史
高橋遼(撮影=Isamu Honma)
高橋遼

YONA YONA WEEKENDERS(撮影=Isamu Honma)

 まだまだ前半にもかかわらず、この日2度目の乾杯タイムへ。磯野は、ツアーで周った全国各地の思い出を振り返りつつ、「(ツアーを通して)育った私の子たちを、ぜひ今日は焼き付けて帰ってください。」と告げる。そしてここから、『LIVE』の収録曲の中でも、YONA YONA WEEKENDERS流のJ-POPの要素が特に色濃く滲む楽曲が立て続けて披露されていく。まずは、「春よ来い」の冒頭におけるアカペラの歌い出しによって、熱し切ったフロアの空気を瞬く間に変え、凛とした歌心で会場を満たしていく。

YONA YONA WEEKENDERS(撮影=Isamu Honma)

 そして、磯野と西によるデュエットで「Orange Moon」を披露。スローテンポの穏やかな曲調ではあるが、彼らが打ち鳴らすバンドサウンドには熾烈に昂るエモーションがひしひしと滲んでいて、音源よりもさらに深く重く心に沁みる。その後、「あんしん」から「東京ミッドナイトクルージングクラブ」へシームレスに繋ぐ展開も見事で、また、〈赤いランプがうるさく灯る〉という歌詞に合わせて、暗いステージに赤いライトを一つ灯らせる演出も非常に粋だった。

磯野くん(撮影=Isamu Honma)

西恵利香
西恵利香

 磯野は、『LIVE』のリリースから約3カ月が経ったことに触れつつ、「皆さんの生きる日常の中でどんな風に鳴っているか、考えるだけで嬉しい」「皆さんの生活に溶け込めたら嬉しい」と語り、そして、これからもまだまだ「しぶとく歌い続けます」と10年後、20年後を見据えた覚悟を伝えた。その後に披露されたのは、『LIVE』のラストを飾る「Happy Sad」「アーバンなLife」「30」の3曲。

YONA YONA WEEKENDERS(撮影=Isamu Honma)

 年を重ね、否応もなく人生のフェーズが変わっていく中では、楽しいことや嬉しいことだけではなく、辛いこと、苦しいこと、切ないことに直面する場面も増えていく。それでも、そうしたビターな味わいを噛み締めながら、しっかりと地に足をつけ、これから先の未来へ向けて力強く歩み続けていく。そうした切実にしてポジティブなエネルギーに触れ、強く奮い立たされるような思いを抱いた。「30」の後に、蒼き初期衝動が込められた「15」が披露される展開も感動的で、また、磯野が同曲の中で叫んだ「まだまだバンドやるぞー!」という言葉に改めて胸を打たれた。

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