韓国フェス『Asian Pop Festival 2025』から窺えた主催者の思い EGO-WRAPPIN'やtofubeatsら出演、貴重なコラボステージも

土井コマキのアジア音楽探訪 Vol.18

 韓国の仁川で2025年6月21日・22日の2日間にわたり開催された『Asian Pop Festival 2025』(以下『APF』)についての後編です。

 日本のアーティストの出演が昨年よりも多かった今年の『APF』ですが、10年ぶりの韓国での演奏になったのがEGO-WRAPPIN'。獣のような中納良恵の歌声は、やはり本能にダイレクトに訴えるのだと感じました。エゴならではのスカバイブスというか、大阪バイブスは、本当にどこでも人を惹きつけますよね。「CITY STAGE」のホール内は自由に踊る人たちで溢れていました。そうそう、ラインナップの妙のお話を前回(※1)も書きましたが、この日、野外の「PARADISE STAGE」にトップバッターで登場したのが、Kingston Rudieskaという韓国のスカバンド。このバンドは、EGO-WRAPPIN'と同じくやはりジャマイカの伝説のThe Skatalitesに影響を受けていて、韓国のスカシーンの立役者なんだとか。そんなバンドとEGO-WRAPPIN'が同じ日に出演するという、フェス主催者の思いが窺えます。

 韓国のエレクトリック・ダンスミュージックのアーティスト/DJ/リミキサーのKIRARAと日本のtofubeatsが、CLUB CHROMAを利用した「CHROMA STAGE」に続けて登場したのも、ナイスでした。KIRARAはDJセットでのパフォーマンスなのですが、盛り上げ方が鮮やかで、私もまんまと踊らされてしまいました。クラブの映像、照明、音響、フロアとの距離感、集まる人たちの好み、全てを理解した上でのパフォーマンス。まさに、指先ひとつで操られる気持ちよさを体感しました。m-floのリミックス企画に参加しているとのことで、“今からやるけど再生回数稼ぎたいからストリーミングでも聴いて”と言ってました。かわいい。去年も出演していたのですが、会場で大学生グループにお目当てのアーティストを質問してみたら、KIRARAの名前が挙がっていて、ロックフェスでDJをピックアップするんだと意外だったのですが、今年観てみて納得でした。楽しかった!

 観れたら嬉しいな〜と思っていたコラボレーションが叶ったのが、台湾のEnno Chengのステージへの韓国のイ・ランのゲスト出演です。2人は台湾の音楽アワードでコラボ曲を演奏していたので、もしかしたら今回実現するのでは? と思っていたら、やはり! 言葉をちゃんと伝えたいというEnno ChengのMCの通訳もして、本当にこの2人は願いや表現者としての信念が重なり合っているのだなと、国を超えて共感できることに心打たれました。コラボ曲「寬寬仔來到祁的面前」とEnno Chengの「千千萬萬」を2人で歌唱。フロアはお客さんの掲げたスマホライトが右左に揺れて、曲のテーマの通りに無数の星が会場を埋め尽くし、会場が一つになりました。さらに、アウトロのイ・ランによるポエトリーリーディングによって、その感動の余韻が深く残りました。

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