Mrs. GREEN APPLE、ELLEGARDEN、Number_i、ヨルシカ、ILLIT、Kis-My-Ft2……注目新譜6作をレビュー
New Releases In Focus
毎週発表される新譜の中から注目作品をレビューしていく連載「New Releases In Focus」。今回はMrs. GREEN APPLE「夏の影」、Number_i「未確認領域」、ELLEGARDEN「カーマイン」、ヨルシカ「修羅」、ILLIT「Topping」、Kis-My-Ft2「A CHA CHA CHA」の6作品をピックアップした。(編集部)
Mrs. GREEN APPLE「夏の影」
蝉の鳴き声とギターの音色、〈吹いた/そよ風が/夏を揺らすの〉というフレーズ、グラスのなかで氷が揺れる音などが混じり合う音像から伝わってくるのはもちろん、夏という季節の温度、匂い、景色。ストリーミング累計9億回を突破(※1)した「青と夏」以来、約7年ぶりに“夏”を題名に冠した新曲「夏の影」は、メロディ、歌詞、サウンド、SE、演奏、歌など、すべての要素を総動員して、夏そのものを結晶化した楽曲に仕上がっている。歌詞の根底にあるのは、時間の経過とともに少しずつ、しかし確実に姿を変えていく世界と人々の姿。時間芸術である音楽の特性、そして、季節の移り変わりに思いを馳せるこの国の情緒を感じさせるという意味において、とてもオーソドックスな(≒普遍的な)楽曲だと思う。(森)
ELLEGARDEN「カーマイン」
TVアニメ『ONE PIECE』(フジテレビ系)の新オープニング主題歌。“大人気アニメ×大人気バンド”のタッグにどよめく声も多いが、そもそもELLEGARDENにとってアニメタイアップとしての書き下ろしはこれが初。もともとメンバーは原作やアニメの大ファンであると公言していたから、満を持して実現した組み合わせなのだろう。元気に突っ走るパンクではない、ずっしりしたミドルテンポのロックがたまらなくハマっている。小学生で初期の『ONE PIECE』にハマったり中高生でELLEGARDENに夢中になった世代はすでにいい大人になっているはずで、サビで繰り返される〈立ち止まるその足を踏み出そうぜ〉のフレーズは、作品、バンド、ファンたち全員のテーマとして響く。(石井)
Number_i「未確認領域」
日米のiTunes「MV総合ランキング」で1位を記録するなど、世界的ヒットの兆しを見せている新曲「未確認領域」は、生のストリングス隊によるイントロから始まる、派手さとドープ感を併せ持ったHIPHOPチューン。強靭なビート、尖りまくったラップ、壮大なスケール感、繊細なメロディラインなど多彩な要素をナチュラルに一体化させ、聴いた瞬間のインパクトと何度聴いても飽きないスルメ感を併せ持った楽曲へと導いている。HIPHOPのトレンドを取り入れつつ、意外性に溢れたアイデアが共存する楽曲の成り立ち自体がまさに未確認の領域。ここにきて彼らは、誰にも似ていない圧倒的なオリジナリティを獲得しつつあるようだ。(森)
ヨルシカ「修羅」
宮沢賢治の詩集『春と修羅』は、風景と心象を互いに反映させた言語表現を用いながら、生命力と明るさに溢れた春と果てしない苦闘や激しい情感を表す修羅を描き出した作品。ヨルシカの「修羅」もまた、『春と修羅』の作風を投影しつつ、相反するファクターを鮮やかに表現している。ネオソウル経由の軽快なバンドグルーヴとどこか淡々としたメロディ、感情の起伏を抑えたボーカリゼーションと〈寂しいと私の胸よ裂けろ〉が生み出すコントラストはどこまでも美しく、奥深い。文学作品をモチーフにしたn-buna(Gt/Composer)のソングライティングはさらに豊かさを増し、楽曲のコンセプトを正確に声に置き換えるsuis(Vo)のコラボレーションは、曲を重ねるたびに進化を続けている。(森)
ILLIT「Topping」
韓国で昨年デビューした5人組ガールグループから届く、日本1stシングルの先行配信曲。軽やかなダンスミュージックに乗る歌詞は日本語と英語を織り交ぜたもので、言葉がストレートに入ってくるぶんメンバーの若さと愛らしさが際立つ、抜群にキュートなラブソングである。作詞作曲は源田爽馬とdyvahhによる共同作業、またトップラインに限ってはバズの天才として名を馳せるソングライターの乃紫が担当。〈結局、デートかどうかって/着る服次第でしょ?〉というパンチラインはさすがであり、そこから弾ける〈Top Top Topping My feelings〉も天才的な中毒性。口にするだけでも楽しいし、指を使ったダンスもこの夏流行りそうだ。(石井)
Kis-My-Ft2「A CHA CHA CHA」
Kis-My-Ft2初のデジタルシングル。力強いバスドラとスネアを強調したトラックは90年代前半に流行したBoom bap HIPHOPをベースにしたもの。本格的なラップナンバーではなく、軽やかに踊りたくなる夏のパーティーチューンといった趣で、作詞作曲にはグループと初タッグとなるkatsuki.CF、今井大介の名前が並んでいる。これまでの路線と違うのはアダルトな遊び心がふんだんに入っているところで、〈サングラス越しの Sexy Girl〉〈イイコぶんな〉〈日焼けと彼女がお土産です〉といった歌詞が、ひと夏の出会いを楽しむ男女をさらに盛り上げる。もっとも、下心はあっても下品さはナシ。あくまで眩しい夏のダンスナンバーとして聴かせてくれる。(石井)
※1:https://www.billboard-japan.com/d_news/detail/152333/2