NOAが表現する感情のジェットコースター 『ホテル・インヒューマンズ』EDテーマで向き合った“役割”

 NOAが新曲「Merry Go Round」をリリースした。同曲は、現在放送中のアニメ『ホテル・インヒューマンズ』(テレビ東京系)のエンディングテーマ。ホテルのコンシェルジュと殺し屋の営みを描き出すこの作品に、NOAはどのように寄り添い、何を表現したのだろうか。もともとアニメが好きだったというNOAに話を聞かせてもらった。「Merry Go Round」について、そしてデビュー5周年の今について、語ってくれた。(編集部)

「すごくわくわくしました」――初めてのアニメタイアップへの憧憬

――『ホテル・インヒューマンズ』のエンディングテーマに決定した時、どんな気持ちでしたか? 初めてのアニメタイアップにもなりますが、当時の心境を教えてください。

NOA:率直に、とても嬉しかったです。僕の曲がアニメの世界観に入り込むことは初めての経験だったので、すごくわくわくしました。そもそも小さい頃からアニメを観て育ってきたし、僕自身アニメが大好きなので、エンディング曲が毎回エピソードを締めくくる重要な役割を担っていることも知っています。だからこそ、プレッシャーもありましたが、楽しんでやらせていただきました。

――アニメがお好きとのことですが、以前からアニメ音楽への憧れのようなものはあったのでしょうか?

NOA:ありましたね。韓国にいた頃もよく日本のアニメを観ていましたし。あの頃は、日本のアニメ特有のエモさに惹かれていたというか、ある意味外国人の目線で日本のアニメに触れていたところもあった気がします。特に『君の名は。』を観た時は、音楽とアニメの世界観の独特のマッチングに興奮したことを覚えています。

――実際にアニメにインスパイアされて曲を作ったことはありますか?

NOA:「Fireworks」(2023年リリース)は、アニメを観ながら制作した曲です。やっぱり日本のアニメの世界観はエモーショナルなストーリーのものも多いので、エモい曲を作りたい時にはアニメがインスピレーション源になることも多いですね。

――『ホテル・インヒューマンズ』という作品に初めて触れた時は、どのような印象をお持ちになりましたか?

NOA:殺し屋が題材となっているのですが、エピソードごとに登場する殺し屋それぞれのストーリーに共感できるところがあって。これまでに感じたことのない、新鮮な感情を覚えましたね。アクションシーンも印象的で、まさに感情のジェットコースターのようなものを原作の漫画を読みながら感じていました。

――殺し屋という設定でありながら共感できるというのは、たしかに新鮮ですね。

NOA:それぞれが隠し持っている人間味を表に出していく過程での切なさというか、殺し屋という設定ではあるけれど、観る人が共感できる部分がたくさんあって。人間にはやっぱり表裏があるんだなと思いました。たとえば、表向きはこう見えているけれど、実は裏では逆の考え方を持っていたり、「もっと早くその問題を解決していればどうなったんだろう?」と思うような複雑な背景もあったりする。そういった部分が、最初に想像する殺し屋のイメージとは違う一面を見せてくれるんです。僕自身、今年は光と影をテーマにして曲を作っていることもあって、そういった二面性にすごく共感しました。

TVアニメ「ホテル・インヒューマンズ」ノンクレジットED

――NOAさんのこれまでの楽曲のなかにはアップテンポでダンサブルなものやダンスホール、トラップといった重低音が響くインパクトのあるものも多い印象がありますが、今回は音数が少なく、落ち着いているけれどもバラードでもないという、これまでにない楽曲だと思いました。そこに新しい挑戦を感じたというか。

NOA:その通りですね。監督からいただいた「ノスタルジックなもの」という楽曲イメージを聞いた時に、これまで作ったことのない世界観になるなと直感的に思いました。それで、トラックも含めてすべて匂いて新感覚になれるものを意識した結果、バラードでもダンサブルでもない、中間的な楽曲ができあがりました。

WATWINGの八村倫太郎と思い出し笑い――「歌詞に込めた想いと重なる」

――楽曲の制作は、どのような形で進められたのでしょうか?

NOA:制作面では、UTAさんにトラックを全面的に作っていただいて、歌詞とメロディは僕とSunnyさんがメインになって作りました。制作中は基本的に3人でずっと同じ場所に一緒にいて。UTAさんがトラックを作っている裏で、僕とSunnyさんが「どういうテーマがいいか」「どんなメロディがいいか」を話し合いながら作っていって。3人でいろいろな話を重ねながら作っていきました。

――楽曲制作において、いちばんのリファレンスとなったものは何だったのでしょうか?

NOA:いちばんは、原作を読むことでした。原作を読んで、そのなかで感じる特有の色味だったり、極力頭のなかで世界観をずっと想像しながら作業を進めていきましたね。監督から“遊園地”というテーマを事前にいただいていたので、そのことをひたすら考えて作りました。

――そこから「Merry Go Round」というタイトルが生まれたわけですよね。

NOA:“エモさ”、“切なさ”という感情がモチーフとしてありました。そこで考えた時に、メリーゴーランドがいいじゃないか、と思いました。もともとメリーゴーランドに対して、ロマンチックな印象があったんです。特に夜にいちばん光り輝いていて、あたたかみのある印象が小さい頃からあって。そのあたたかみを切なさに変えて作ってみたらどうだろうか、という発想もありました。それに加えて、ずっと回り続けているということと一生すれ違うという切なさがメリーゴーランドにはあるなと思い、そこもうまくつなげられたと思っています。

――メリーゴーランドに、NOAさん自身は何か思い出がありますか?

NOA:小さい頃に、お父さんとお母さんと一緒に乗った記憶があります。人によっては、たとえば大人になれば友達や恋人と乗ったり、将来は自分の子どもと乗ったりするのかもしれない。だから、年代によって一緒に乗る人が変わっていくなと思うんです。それに、遊園地のアトラクションで言えば、ジェットコースターは怖くて乗れない人もいるけど、メリーゴーランドは誰でも乗れて、誰でも楽しい思い出が作れる。そういうエモーショナルな思い出がたくさん詰まった乗り物だなと思います。

――アニメのタイアップ曲を作るという制作プロセスにおいて、新しい発見はありましたか?

NOA:普段は自分の世界観のなかで自由に作っているので、決められた世界観をもっての作業は正直大変でした。でも、だからこそ普段思いつかないフレーズや世界観が生まれたので、そこは新しい発見でしたね。迷った時には原作を読み返して、常に目に見えるリファレンスがあるということにも新鮮さを覚えました。

――歌詞ではどのような表現にこだわったのですか?

NOA:殺し屋たちの人間らしさを出すうえで、「これを言ってしまうとネガティブになりすぎるかな?」と思った部分をあえて入れてみたり、とにかく自分の気持ちに素直になって歌詞を書くことを大事にしました。〈そばにいようとすると/君は離れていく〉から始まる一節は、離れるべきだとわかっているのに、どうしてもまだ一緒にいたいと思ってしまう気持ちを表現した、心情的にはつらい内容です。これまではそういう歌詞、感情は書いてこなかったのですが、今回は素直に書いてみました。

 サビの前半の4行は、いちばん伝えたい部分ですね。それから、〈蘇る言葉/思い出し笑いが溢れる〉という部分は、実際に作品のなかでも見られる、殺し屋が抱えている今までの楽しかった思い出や幸せな思い出を振り返るシーンとリンクする部分だと思っています。

――今、「思い出し笑い」という歌詞の話が出てきましたが、NOAさんご自身は最近思い出し笑いをされたことはありますか?

NOA:つい最近、WATWINGの八村倫太郎くんと会った時に、今思い返すと何がそんなに面白かったのかは覚えていないんですけど(笑)、8LOOMとして活動していた頃の話をしていた時に、思い出し笑いをしましたね。そういう体験が、まさに歌詞に込めた想いと重なる部分だなと思います。

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