「EGO-WRAPPIN’が、音楽が、唯一の居場所」 30周年に向かう森雅樹と中納良恵に聞く、熱を失うことない活動の秘訣

EGO-WRAPPIN’のライブは常に「いい意味で潰しにかかっている(笑)」

――EGO-WRAPPIN’としての新曲は2021年にNHK連続ドラマ『オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ』の主題歌に書き下ろした「The Hunter」以来になりますが、コロナ禍を挟んだこの数年は森さんはドラマの劇伴、中納さんはソロでの活動がありましたね。

中納:私がソロで『あまい』を出した頃はコロナ禍の真っ只中で、ライブもソーシャルディスタンス。この状態がこのまま続くんやったら、うちらはもうライブできへんのかなと思ったことも。ライブはすべて配信なんてことになったらイヤやなーって。

森:密はアカン、声出すのもアカンでは、バンドは商売あがったり。無観客の配信もちょっと観たりしたけど、お客さんが一緒になって盛り上がるバンドはホンマにきつかった。

――前回のアルバム『Dream Baby Dream』が2019年ですから、来年の30周年に向けてそろそろニューアルバムの声も?

森:このペースでやらせてもらえるのはホントにありがたいことですけど、アルバムの制作は始めているので、もう少し待ってください。

――リリースこそ時間が空きましたが、ライブは精力的に継続。先日も中国ツアーや韓国のフェスへ出演しましたね。

森:行って来ましたよ。北京と上海。

中納:北京はとにかく何もかもデカい。天安門広場には辿り着けなくて、スタバだけ寄って帰ってきた(笑)。でも、お客さんはめちゃくちゃ盛り上がってくれました。

森:うん。すごく楽しかった。

中納:お客さんは若い人が多くて、ピュアな感じでしたね。ライブはいつも通り、MCは翻訳機を使って。アジア圏は韓国、台湾、タイのフェスにも一度出ましたけど、どこの国でもSNSで情報が行き渡っているんですよね。

森:日本の外に出ると、時代は変わっていると感じますね。

中納:お客さんのノリはちょっと違うところはあるけど、ライブを楽しみたいという思いは国は違えど一緒やなと。

――規模の大小を問わず、国内外あらゆるフェスやイベントから声がかかるのはEGOの圧倒的なライブパフォーマンスあってこそですね。

中納:お陰様で。そういえば、「お陰様」の陰に様が付くってどういう意味なんやろ? 

森:お日様にも様付けるしなー(笑)。

中納:陰ながらコツコツやってきたことが身になるから感謝みたいな? 違うか(笑)。

――先日のホールツアー『HALL LOTTA LOVE ~ホールに溢れる愛を~』では、魅せる、踊らせるEGOとはまたひと味違う聴かせるEGOを堪能しましたが、ライブに対する意識に変化はありますか?

森:いろんな音楽が好きやし、それをEGOで表現しているつもりなんですけど、ライブではアルバムのリード曲やみんなが聴きたい曲を優先することもあって、アルバムの中の自分の可愛い子みたいな曲が時には埋もれてしまいがちで。そういう曲を野音やキネマ(倶楽部/年末にワンマンライブ『Midnight Dejavu』を開催)、ホールツアーのセトリに工夫をしながら入れて変化をつけるのが楽しいんです。野音なら踊れるノリノリの曲、キネマならオールドスタイルの曲をここで入れてみようかとか、ホールではメロウな曲を聴かせられるな、とかね。可愛い曲たちにちゃんと日の目を浴びさせることができる。

――幅広い音楽性が活かせる適材適所な場があるのは大きいですね。

森:それぞれ照明や見せ方も違うからお客さんの楽しみ方も違うと思うし。

中納:座って観てもらうホールの良さもあるし、スタンディングでガンガン踊って騒いでもらうのもいいし。ライブの内容がよかったら疲れないというか、たぶん、体も楽しい方が勝るんですよね。

――EGOが結成された90年代半ばはロックやクラブミュージックなどが渾然となった時代でしたが、そんな中からEGOがジャンルを超越するような音楽で登場したのは衝撃でした。

中納:90年代はジャンルも年代も関係なく色んな音楽を聴いてましたね。あの頃は70年代とかすごく昔のイメージがあったけど、90年代ももう30年も前なんですよね。今の若い世代は90年代のMassive AttackやPortisheadを新鮮に受けとめているみたいで、私らが90年代に70年代のソウルを聴いていたのと一緒やなと。

森:そうやな。時代は巡るやないけど。

――デビューしてからは昭和歌謡と呼ばれることもありましたが?

森:ありましたね。インタビューでも昭和歌謡の影響うんぬんを聞かれて困った。

中納:そういう風に形容すると安心するんでしょうね。私は子どもの頃はTVから流れてきた歌謡曲が好きやったから、今思えば自分のルーツに昭和歌謡は入っていたような気もするけど、森くんはないよね?

森:昔の音楽は好きでしたけど、僕は昭和歌謡というものがどんな音楽かよくわからなかったですね。そんな風なイメージなんやと他人事みたいに感じて。

――ライブで笠置シヅ子の「買い物ブギ」(作詞:村雨まさを、作編曲:服部良一)を披露したこともあり、それがのちのNHK連続テレビ小説『ブギウギ』 の主題歌「ハッピー☆ブギ」の中納さんの起用に繋がったこともありましたが。

中納:そうですね。ありがたいことに服部隆之さんに引っ張っていただいて。

――中納さんはボーカリストとして様々なアーティストのアルバムやライブに客演されていますが、森さんの感触は?

森:いや、僕もうれしいですよ。よっちゃんが歌うことで充実していると体にも良さそうやし。

中納:そうかもしれない。こんな歌い手がいることを世の中に知ってもらうにはいい機会だと思って。

――粋で洒脱でありながら、ある種の破壊力と熱い衝動を併せ持つのがEGO-WRAPPIN’の唯一無二の魅力ですが、その根底にパンク魂みたいなものがあるのではないかと?

中納:そうですね。いい意味で潰しにかかっているというか(笑)。

森:うん。何かしらの熱いものはありますね。

中納:お洒落にさらっというわけにはいかない。自分でも何なんだろう? と思いますよ。性格なんですかね?

森:だから、ライブでもきっちりした構成とか演出は向いてない。常にもっと自由にやりたいという。

中納:クラムボンの原田郁子ちゃんに言わせると、「森くんが手綱を握っているから、よっちゃんが自由に歌って動ける」んやって。

森:まぁ、バンドですからね。

――初期から変わらないその熱さを30周年を迎えようとする今も失わずにいるのは?

森:自分が楽しいかどうかは大事にしているかもしれない。曲作りもライブも。

中納:ライブはいつでもどの場所でも面白いし、やっぱり好きなんでしょうね。それに尽きると思います。私にとっては音楽が、EGO-WRAPPIN’が、自分の唯一の居場所なんです。森くんと一緒に音楽を作ったり、ライブをしているときにそれを一番感じる。

ーーそもそもEGO-WRAPPIN’は中納さんが森さんを誘って結成したんですよね。

中納:そう。私が森くんに声をかけたんですけど、なかなかこんな人いないし、いいご縁に恵まれました(笑)。なぁ?

森:そやな(笑)。ただ、僕自身、「絶対にミュージシャンになるんや」みたいな強い意志があったわけではなく、EGOを結成してから曲作りもレコーディングのやり方もすべて自己流でやってきたわけです。合奏しても僕だけ音がはみ出したりして悩んだりした時代を経て、30年も自己流でやっていくうちにある程度視野も広がり、コミュニケーションもとれるようになってきたかなと。そう思えるようになってきたのは最近ですよ。

――それを確認できたことがあったんですか?

森:この前の中国でも再確認しました。自己流で30年やってきて中国で認められた! これは少しは自信持ってもいいだろうと(笑)。

中納:よかった(笑)。

森:だから、自己流をやらしてくれたよっちゃんやメンバー、スタッフには感謝しています。

――自己流を貫いたからこそ既存のスタイルに収まりきらない個性を発揮し続けることができたんですね。

森:型にはまっていかないと生き残っていけないんじゃないか? とか思ったことはあるし、今もたまには思うこともあるけど……。

中納:型にはまらんでもいいと思うけどな。私も昔は憧れていたボーカリストはいたけど、勇気をもらえる存在にはなっても自分はその人にはなれないから。

森:そうやねん。憧れの呪縛はいつ解けるんやろう? すごい人はいっぱいいますからね。

中納:この前、『日比谷音楽祭 2025』で甲本ヒロトさんが「涙くんさよなら」を歌っている映像を観たんですけど、めっちゃ感動して。ヒロトさん、ヤバいですよね。

――そういうヤバい、清濁併せ呑むエネルギーはEGOからも感じますよ。

森:そう。毒もちょっと入ってないとね。

中納:確かに。

――今年の『Dance, Dance, Dance』は、日比谷公園大音楽堂がリニューアルされる前の最後のライブになります。

中納:夏の野音はだんだん日が陰る時間帯がええ感じなんですよ。お客さんもだんだん出来上がっていって。

――観客があれほど無邪気に楽しんでいる解放感溢れるライブはEGOを置いて他にないですから。

森:お客さんがむちゃくちゃ楽しんでくれているのが僕らもうれしいんですよ。そういう場をこれからもつくっていきたいですね。

――30周年へ向けてのEGO-WRAPPIN’のアクションを期待しています。

中納:はい。これからもスリルを追い求めていきます。

森:先ずはお中元の新曲を聴いてもらって、自己流で進んでいきます。

 

■リリース情報
アナログ2タイトル同時リリース
2025年7月2日(水)リリース&同日配信
購入:https://ego-wrappin.lnk.to/treasureshigh_sunnysidesteady

・LP『AQUA ROBE / Treasures High』
12inch(45rpm)TFJC-38137 2,750円(税込)
<収録曲>
SUN SIDE「Treasures High」
作詞:中納良恵 作曲:森雅樹 / 中納良恵 編曲:EGO-WRAPPIN'
MOON SIDE「AQUA ROBE」
作詞:中納良恵 作曲:森雅樹 / 中納良恵 編曲:EGO-WRAPPIN'

・EP『Sunny Side Steady』
7inch(33rpm)TFKC-38138 2,200円(税込)
<収録曲>
SIDE A「Sunny Side Steady」
作詞:中納良恵 作曲:森雅樹 / 中納良恵 編曲:EGO-WRAPPIN'
SIDE B「Sunny Side Dub -Prince Fatty Dubwise-」

■公演情報
『EGO-WRAPPIN' “Dance, Dance, Dance”』
会場:日比谷公園大音楽堂
開催日程:2025年7月12日(土)
OPEN 17:00/START 18:00

会場:大阪城音楽堂
開催日程:2025年8月2日(土)
OPEN 16:30/START 17:30

チケット料金:7,500円(税込/指定・立見)

■関連リンク
EGO-WRAPPIN’ Official Site:https://www.egowrappin.com/
EGO-WRAPPIN’ TOY'S FACTORY Site:https://www.toysfactory.co.jp/artist/egowrappin

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