Mashoeが音楽に向けるピュアな気持ち 『ブルース・ブラザース』との出会い、ブラックミュージックが育んだ表現の核
100年後に残るくらいクラシックなものを作れるように
ーー曲作りはどのように始められたんですか?
Mashoe:そもそも僕は声のキーが高くないんですけど、僕の学生の頃は、結構キーが高い系の曲が流行っていたんですよね。back numberとか、ワンオク(ONE OK ROCK)とか。そこに僕はついていけないですし、カラオケでもモテないんですよ。やっぱり、ワンオクを歌えないと悲しくて。
ーーなるほど(笑)。
Mashoe:自分の好きな歌謡曲を歌っても、カラオケで同級生は盛り上がらないですし。じゃあ自分で歌えるキーで曲を作ろうというところから、曲作りを始めたんです。最初はギターの弾き語りでしたね。秦 基博さんみたいな繊細な音楽に影響を受けていたんですけど、やっぱり高校生だと上辺だけしかすくえないんですよ。上澄みだけの曲ができ上がって、「なんだこれ?」みたいなことが結構多かったです(笑)。そんなことをやりながら、曲作りのいろはを肌で感じて、覚えていったという感じですね。ただ最初の段階で、楽器ひとつだけで曲を作っていたことは、今になって「いい経験だったな」と思います。そこはやっぱり、「基本のき」というか。「歌と楽器一本だけで、いい曲を作れるかどうか」って、やっぱり必要なことだと思うので。
ーーたしかに。
Mashoe:それから退院して、20歳になり、Macのパソコンを買ったんですよ。DTMを始めようと思って。というのも、トム・ミッシュが10分で曲を作るっていう企画動画があって。その時、彼はLogicを使って10分で曲を作ったんですけど、それを見て「なにこれ? めっちゃ面白そう!」と思って。当時はまだずっとアコギの弾き語りだったので、アンサンブルを作ったことがなかったんですよ。だから、すごく興味が沸いたんです。ファンクやソウルを聴いているのに楽器一個だけ、というのもちょっと面白くなくなってきたタイミングだったので。それで20歳の誕生日に表参道のAppleに行ってMacを買って。20歳の1日目から僕は債務者になったんですけど(笑)、同時に、そこからMashoeとしてのキャリアが始まったっていう感じですね。
ーー「All I Need」を聴いていても、この先Mashoeさんがどんな音楽を作るのか、とても気になるんですよね。どんどんプリミティブで肉体的なものが生まれるのかもしれないし、もっと華やかでゴージャスなものが生まれるのかもしれないし、より実験的なものが生まれるのかもしれないし……。「All I Need」1曲に、すごくいろいろな可能性が含まれているような気がします。ご自身としては、この先どんな曲を作っていきたいと思っていますか?
Mashoe:ベーシックとしては、あまりジャンルに縛られ過ぎずやっていきたい、という思いはありますね。ブラックミュージックという部分は自分のルーツなので壊れないと思うんですけど、よりアンテナを張って、多感でいるうちはいろいろなエッセンスを取り込んでいきたいなと思います。エクスペリメンタルなものもちょっとやってみたいですし。「踊らせる」という根元だけはブラさずに、いろいろなことにチャレンジしていきたいなと思います。例えば、日本であまり馴染みのないようなジャンルもまだあると思うんですけど、「垣根をなくしたい」っていう気持ちはやっぱりあって。最近は割とジャンルレスな傾向にあると思うんですけど、それでも「ポップス」という枠組みではあまり語られない音楽もありますよね。そういうものも大きく包括してもらえるような足掛かりに自分がなれればな、と思います。極端な言い方ですけど、100年後に「こんな音楽があってさ」って言ってもらえるくらいクラシックなものを作れるように、キャリアを積んでいきたいなと思っています。
ーースティービー・ワンダーやダニー・ハサウェイ、『ブルース・ブラザース』との出会い。そういった出会いがある度に、Mashoeさんの中に新しい何かが芽生えたことが、今日のお話の中でわかりました。そうしたブラックミュージックと出会った時の衝撃って、一体何だったのか。Mashoeさんは何故、ブラックミュージックや踊れる音楽に惹かれたのか、言葉にしてみると、どう思いますか?
Mashoe:あー、それは難しいですね。でも……やっぱり、当たり前じゃなかったんです。当たり前じゃないのに、耳馴染みがよかった。非日常なのに、どこか寄り添ってくれるような気がした。それは、斜に構えて「よくわからないけど、みんな聴いているから、わかっているフリをする」みたいなこととは全然違ったんですよね。根幹がすごくポップで、それなのにリズムが革新的だったり、自分の日本人にはない血やセンスを感じたり……「遠いのに近い」とか、「刺激的だけど耳心地がいい」とか、そういうところに僕はすごく惹かれたんじゃないかと思います。
ーーその「遠いのに近い」みたいな感覚って、コミュニケーションとしてすごく理想的というか、尊い感じがしますね。
Mashoe:本当にそうですね。尊い。そんな感じがします。
■リリース情報
デジタルシングル「All I Need」
2025/7/9 RELEASE
配信URL:https://lnk.to/mashoe_allineed
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