NCT YUTA・TEN、日本でソロ作品発表 それぞれのルーツや生き様を強く感じさせる2曲

TEN「Silence」――日本語での初ソロで際立つTENの感性

TEN テン 'Silence' MV

 TENの「Silence」は、誰にも届かない孤独感、自分しか存在しないかのような静寂の中に揺れる心象風景を描いている。幻想的なサウンドが余白を作り出し、その中にTENのボーカルが切なく美しく響く。

 特に印象的なのは、長いフレーズの中に日本語特有の語感を違和感なく収めている点だ。流れるようなフロウの中でも言葉の繋がりを丁寧に捉え、サウンドのアクセントや日本語の抑揚を自在に操る。タイ語、英語、韓国語、中国語……すでに多くの外国語を操るTENだが、そこからさらに日本語の勉強もしているという。日本語の響きや意味のニュアンスを汲み取り、音楽に昇華させる彼の感性は圧巻だ。

Cover | TEN – ベテルギウス (BETELGEUSE) (優里)

 TENはこれまでも、2024年5月にYouTubeで公開した優里「ベテルギウス」のカバーにおいて、日本語の響きを維持しつつ、自身の感性で再構築した歌唱表現を見せていた。多言語/多文化を跨ぐ活動の中で磨きがかかった表現が日本語楽曲でも楽しめることは、グローバルな視点と豊かな感受性を併せ持つアーティストとしての彼の魅力を、より広い層に伝える契機となるだろう。

 エッジの効いた〈Silence〉という低音フレーズでサビに突入し、ビートが前面に出る展開も印象的だ。ここでTENのボーカルも芯のある響きに移行し、楽曲のフックとして聴き手を引き込む。

 振付にも注目したい。ダンスビハインド映像では、TENが細かなニュアンスをコレオグラファーに積極的に伝え、一緒になって表現を練り上げていく様子が映されていた。そうして出来上がったMVのダンスシーンでは、ソロアーティストとしてセンターに立ちながらも、ダンサーたちと一体となって空間を描き出していた。過去にTENはソロ曲「Birthday」や「Nightwalker」でもダンサーとともに作品を作り上げており、その表現からは、ソロ楽曲でありながら集団芸術としてのコレオグラフィーでの魅せ方に対する独自の感性が窺える。

 歌、ダンス、コンセプトを通して作品の“カラーリング”を行うTENの表現力は、グループ活動の中でも際立っていたが、ソロではその独自性がさらに強く発揮されているように感じる。

 YUTAとTEN、それぞれの個性が表れる日本ソロ楽曲。2人とも全く異なる作品を日本で発信しているが、両者のキャリアはNCTとしてデビューしたところから始まる。彼らの独自の音楽活動からは、改めて既存のボーイズグループの概念を大きく変えてきたNCTの精神を感じることができる。2人以外にもNCTメンバーにはソロデビューを果たし、それぞれがオリジナリティを発揮しているメンバーも多い。YUTA、TEN以外のメンバーの日本でのソロデビューも期待したい。

※1:https://www.billboard-japan.com/special/detail/4634

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