“AI作詞作曲”リリースになぜ挑戦した? 世が世なら!!!「AIでええ愛」企画者に聞く試みの狙い
堀切氏に“AI作詞作曲”というチャレンジにあたり苦労した点について尋ねると、やはり権利上の問題が大きかったという。
「AIへのオーダーをシンプルにした理由ともつながってくるのですが、『●●●のような楽曲』といったアーティスト名や楽曲名をプロンプトに使用した時点で、著作権法に触れてしまいます。またヒット曲だけをAIに学習させて楽曲を制作することも同様です。なので『情熱的に』『夏っぽく』『アップテンポ』などシンプルなキーワードの組み合わせで制作する必要がありました。そのあたりは事前に弁護士などにも確認しながら勉強しました。また、いざ曲が完成して配信リリースするに至ってもAIのみで制作した音楽には現状著作権が認められていないため、音楽出版社に出版権を預けてプロモーションをするというのが難しくなってしまいました。担当者は前のめりだったとしても、会社としては『AI楽曲を預かるのは様子を見よう』という判断になってしまい、扱ってくださる出版社は正直少なかったです。それでも曲をオンエアしたいと言ってくださったラジオ局があり大変感謝しています」
「今後も“AI作詞作曲”に挑戦してみたいと思うか?」という質問を投げかけてみると、堀切氏は「今のところは考えていない」としつつも、音楽分野におけるAI活用の機会は増えていくだろうと予測する。
「今回はまだ誰もやったことのない試みであったからこそ、そして1回きりだからこそ出せた熱量だったので……今後も“AI作詞作曲”をやるということは、今のところは考えていないというのが正直な気持ちです。自分自身も作詞作曲をする人間だからこそ、音楽・芸術で最終的にAIが人間に勝ることはないと確信しています。ただ今後、AIが発達していくことで創作中にこれまでよりも活用することは確実に増えると思います。作詞にも作曲にも活用する方が増えるとは思いますね。また編曲やジャケットデザイン、衣装やライブのセット等々でAIを活用するセクションは必ず増えていくと思います」
最後に、世が世なら!!!の「AIでええ愛」の制作プロセスや楽曲自体を通して届けたいメッセージについて以下のように語った。
「AIと人間が融合することで計り知れない可能性があるということ、それと同時にどこまでAIを活用して、リスナーはどこまでの範囲でAIを使った作品を許すのか、そう言ったことを考えるきっかけになったらとてもうれしいです。実際、“AI作詞作曲”でここまでのクオリティで音楽を制作できたこと、そしてその“AI作詞作曲”の楽曲に世が世なら!!!がレコーディングで歌を入れ、ディレクターが手を加え、AIと人間の融合作品を作れたことに対してとても有意義なチャレンジになりました。一方でもしもこの先、“AI作詞作曲”で音楽シーンが溢れてしまったら、はたしてそれはエンタメと言えるのか……そういった問題提起も含め、この楽曲が何か未来に繋がればとも思っています」