ano、2ndアルバム『BONE BORN BOMB』全曲解説 エッジーかつポップ!自由すぎるサウンドの中に潜ませる切実なメッセージ
anoから2ndアルバム『BONE BORN BOMB』が届けられた。「絶絶絶絶対聖域(ano feat.幾田りら)」(映画「デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション」前章主題歌)、「許婚っきゅん」(TVアニメ「らんま 1/2」オープニングテーマ)、「ロりロっきゅんロボ♡」(劇場版『僕とロボコ』主題歌)、「ハッピーラッキーチャッピー」(アニメ『タコピーの原罪』オープニングテーマ)など12曲を収録。表現者としての彼女の本質と、急速に広がり続ける音楽性・エンタメ性を併せ持った本作。12曲の解説を通し、エッジーかつポップな『BONE BORN BOMB』の世界を堪能してほしい。
1.「絶絶絶絶対聖域」(ano feat. 幾田りら)(作詞:あの 作編曲:TK)
TK from 凛として時雨が作曲・編曲を手がけ、幾田りらをフィーチャーした「絶絶絶絶対聖域」は、アーティスト・anoの本質を改めて提示すると同時に、さらに増幅させることに成功した記念碑的な楽曲だ。最大のポイントは、オルタナティブな志向とナチュラル・ボーン・ポップな佇まいのコントラスト。鋭利に尖りまくり、圧倒的な高揚感をたたえたバンドサウンドのなかで激しくデスボイスを響かせながら、強度の高いポップネスを成立させる。この離れ業はまちがいなく、彼女の大きな武器だろう。
2.「Bubble Me Face」(作詞:あの 作編曲:TAKU INOUE)
歪みまくったエレキギター、バチバチと弾けるようなシンセの音、強靭な4つ打ちビートがせめぎ合うダンスチューン。〈多様性が生むんだ可能性嘘くせー〉というライン一発で世の中にはびこる欺瞞を気持ちよくさらけ出すリリック、いきなりジャズのようなノリになったかと思った次の瞬間、再びハイテンションな音像へと舞い戻る構成を含め、本能のまま突き進んでいるうちに観客を気持ちよく巻き込むanoの特性がダイレクトに表れている。彼女の音楽世界の構築に欠かせないクリエイターの一人、TAKU INOUEによる見事な仕事ぶりだ。
3.「骨バキ☆ゆうぐれダイアリー」(作詞:あの 作曲:あの/こめだわら/ロマンチック中毒 編曲:こめだわら)
あの自身も作曲に参加した、暴力的ハードコアチューン。大暴れしながらぶっ飛んでいくビート、いきなり炸裂するデスボイス系シャウトからはじまり、サビではいきなりロリポップ的な声色と切なくてエモいメロディが響き渡る。その後の展開もまったく予測不能。いったい何曲分のアイデアをぶち込んだんだ?! というほどの情報量だが、この自由奔放さを成立させてしまうのが、anoというアーティストのポテンシャルなのだと思う。
4.「ロりロっきゅんロぼ♡」(作詞・作曲:あの 編曲:TAKU INOUE)
美少女メイドロボ=“ロボコ”が一般家庭に普及した近未来を舞台にした『僕とロボコ』(原作コミック・宮崎周平)の劇場版主題歌。ポップでストレンジで可愛くておかしくて、徹底的に遊びまくっているのに計算され尽くしているようにも感じるプロダクションはそのまま『僕とロボコ』の世界観と直結しているし、anoの新機軸と称すべき楽曲に仕上がっている。大胆にエフェクトされた歌声から放たれる〈ロっきゅん♡ローるは無窮に〉というフレーズは、神聖かまってちゃんに対するオマージュか。
5.「許婚っきゅん」(作詞:あの/真部脩一 作曲:真部脩一 編曲:TAKU INOUE)
大ヒット曲「ちゅ、多様性。」の制作陣が再集結した一曲。ano×真部脩一ワールドの再来を楽しみにしていたのは、おそらく筆者だけではないだろう。本曲で軸になっているのは、超緻密に構築・計算されたサウンドメイクとどこまでも自由に遊んでいる(ように聴こえる)ボーカリゼーション。銅鑼の音からスタートし、似非チャイニーズポップ風の旋律、ダンサブルなアレンジなどを織り交ぜながら“架空のアジアン・エキゾチズム”と称すべき世界観を描き出すこの曲は、両者のコラボレーションでなければ絶対に実現しなかったはず。原作のラブコメ的要素にフォーカスした歌詞も楽しい。
6.「愛してる、なんてね。」(作詞:あの 作曲:尾崎世界観(クリープハイプ) 編曲:ケンモチヒデフミ)
anoの音楽的ルーツの一人である尾崎世界観が作曲を手がけたシングル曲。尾崎との共作は「普変」(アルバム『猫猫吐吐』収録)に続き2作目だが、前回の曲が“普通”に対する抗いを表明する楽曲だったとすれば、「愛してる、なんてね。」は、そんなanoの姿勢を支持する人々に対する愛を表した曲と言えるだろう。エレクトロ的なトラックと切なくてエモいメロディライン、〈ヘイトも傷もエンタメに全部書き換えてあげる〉というキラーフレーズが響き合う瞬間に訪れる、圧倒的なカタルシスを体感してほしい。