さらに特筆すべきは、こうした表現がハイパーポップのサウンドで鳴らされている点。メロディ自体はJ-POPの王道に根差しているが、それを彩るサウンドは過剰で破裂的。耳を突き刺すようなトラックによって、“ギャル語×デジタル崩壊サウンド”という、ポップの自己破壊的再生が試みられているのだ。シンガーソングライターである彼女自身の志向に加えて、アルバムをともに手がけたプロデューサー・CHIHIROの存在も、このユニークなサウンドデザインに貢献しているのだろう。

　「愛されたい」「自分らしくいたい」「でも傷つくのは怖い」といったジレンマは、90年代以降の女性シンガーたちが繰り返し描いてきた感情だ。だが浜野はるきは、それらをネオポップの形で更新している。その結果、彼女は「可愛くて、弱くて、強くて、賢くて、愚かで、ギャルで、メンヘラで、だけど明るい」という、まるで矛盾の塊のようなキャラクターを自然体で成立させている。あらゆるジャンルに片足を突っ込みながら、どこにもいなかった“誰か”になる――それが浜野はるきなのだ。

　だからこそ、彼女は“正解の女性像”からはみ出してしまった人たちに寄り添う存在になりうるはずだ。愛されたくて泣き、けれども愛されすぎると怖くなるような人たちに向けて、そっと背中を押してくれるような歌がそこにはある。浜野はるきは、時代の裂け目から現れた、いそうでいなかったアーティストなのだ。

■リリース情報
1stアルバム『NET BaBY』
配信中

配信URL：https://linkco.re/tBsrnAN1

＜収録曲＞
M1. CuL
M2. ちゅ
M3. Vengeance
M4. NINNIN
M5. クズやん
M6. 腑抜けたSoda
M7. 『I』
M8. Voice memo 001

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