f5ve、新アルバムが海外で話題に クィアポップとの親和性を持ちつつ独自に打ち出す“女性らしさ”の視座

 そして、クィアフレンドリーな美学は、ひと捻りもふた捻りもある表現に繋がっている。それが、いわば女性性の表象に対する「真剣さと遊戯性の混在」とも言えるようなパフォーマンス。ポップカルチャーの中でどう「女性らしさ」を見せていくか――その距離の取り方や態度のバランスで、f5veは独自の路線を突き詰めているのだ。

 ポップカルチャーにおける女性性とは、たとえばミニスカートに濃いメイク、ヘソ出しといったセクシーさや可愛さが挙げられよう。おしとやかなふるまいや従順さといった柔らかな受動性もあるだろうし、ピンクやリボンといった装飾的記号もあるだろう。それらは、良くも悪くもポップカルチャーが繰り返し提示してきた、理想の女性のイメージとして存在している。

f5ve - Magic Clock (Official MV)

 f5veは、そういった女性性を、まずは真剣に美しくやり切る態度がある。フォーメーションや振付に込められた自己主張的なセクシーさ、メイクや衣装に見られる細部までのスタイリング、カメラワークも含めた“自分を見せる”ことへの意識の高さ——。メンバーは、「可愛い/綺麗な女の子像」を単に揶揄するのではなく、むしろちゃんと演じきっているのだ。

 ただ、ここからがf5veの興味深い点で、そこには真剣さがありつつも、“それ”を本気にしすぎない距離感=遊戯性も備えている。明らかにやりすぎなまでのメイクやヘアスタイル、歌詞やMVの中で感じられるちょっとしたズレやユーモアには、まるで「女の子ってこうでしょ?」と自分たちでやってみせるような茶目っ気や誇張、皮肉めいた感じがある。それはキャンプ的な“盛り”とも繋がるだろうし、「女らしさ」に対して真剣でありつつも、同時に少し斜に構えた目線がある。

f5ve 1st album 『SEQUENCE 01』 (highlight medley album teaser)

 このように、女性性を真面目に演じながら、どこかでそれを茶化してもいるという態度は、J-POPアイドル的な「可愛さ」や「頑張り」とも、K-POP的な「洗練された完璧さ」とも違った、意識的な遊びと引用のスタイルとして受け取られ、主に海外でじわじわと支持を拡大しつつある。特にSNSでは、海外のファンがf5veのパフォーマンスに対して捻ったユーモアを感じ取りリアクションしているシーンをよく目にする。f5veは、まだどこにもない現代的なグローバル・ガールズカルチャーの進化系として、従来のグループ像をアップデートしているのだ。リリースされたばかりの1stアルバム『SEQUENCE 01』からは、全編通してそのような魅力が感じられるし、単にグローバル基準でつくられたポップグループだけでは語れないことも伝わってくる。「可愛い」の更新、「女性性」の遊戯、そして「クィア性」の開かれ方において、唯一無二の表現にトライすることでポップの中心に躍り出ようとしているのだ。今年、6月28日に開催される『LadyLand Festival』ではどのようなステージが届けられるのか。今から楽しみでならない。

※1:https://www.nme.com/lists/end-of-year/best-songs-2024-3817596/https://www.nme.com/lists/nme-100/the-nme-100-essential-emerging-artists-for-2025-3834328#f5ve

f5ve『SEQUENCE 01』

■リリース情報
f5ve 1stアルバム『SEQUENCE 01』
発売中

通常盤(CD) / XNLD-10238 / ¥3,300(税込)
※ジュエルケース+トレーディングカード封入(全10種からランダム2枚入り)

配信リンク:https://orcd.co/sequence01
CD購入:https://ldh.lnk.to/SEQUENCE01

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