日向坂46「Love yourself!」MV分析:小坂菜緒の指揮が先導するグループの新章 20人の個の表現と全体の調和
「Love yourself!」のMVを語る上で欠かせないのが、視覚的な鮮やかさと遊び心に満ちた空間設計だ。中でも印象的なのは、全員のダンスパートでメンバーが着ている紫を基調とした衣装の配色。「アザトカワイイ」でのアシンメトリーなデザインなど、過去曲を想起させるようなディテールに加え、青やピンクを差し色に用いたことで、MV全体がカラフルで前向きなトーンに包まれている。今回の衣装に採用されている紫は、可愛らしさと上品な印象を備えた色彩であり、グループの“ハッピーオーラ”を損なうことなく、落ち着きや芯の強さを感じさせる仕上がりとなっている。
また、YouTubeのコメント欄にはそのカラフルな衣装や次々とロケーションが変わる構成に「JOYFUL LOVE」を連想したという声もあり、これまでの作品とも地続きであることを示唆する要素としても、この色使いとロケーション選びは非常に意義深い。新しい章を彩るMVでありながら、これまでの日向坂46の系譜も感じさせるビジュアル面での工夫が、ファンの感情に自然と共鳴しているのだろう。
MVにおける振り付けは、楽曲のメッセージを身体表現として伝える大きな力を持っている。たとえば、ハートを模した手の動きだ。「Love yourself!」というタイトルを体現するように、随所にハートのモチーフが登場し、それが繰り返されることで「自分を愛する」というメッセージが、視覚的にも身体的にも観る者に浸透していく。小西夏菜実はブログで「この曲を表現するためにはまず自分自身を愛さないとできないなと思った」(※1)と綴っているように、内面のテーマと踊りが深く結びついていることがうかがえる。
さらに、MV中には小坂の“指揮者”の動きに合わせ、メンバーが踊る場面も登場する。これにより、“個”としての自己愛だけでなく、“グループ”として一つの音を奏でるという協調性や一体感も映し出され、日向坂46の持ち味である明るさと連帯感が振り付けに込められていることがよくわかる。20人という編成でありながらも各々の表情と動きがしっかりとカメラに収められている点は、MVとしての完成度を一段高めているように思うのだ。個の表現と全体の調和。その両立が、この振り付けの中に自然と落とし込まれている。
「Love yourself!」のMVは、新体制での船出を描いているというだけではなく、コンセプト、歌詞、振り付け、映像美、パフォーマンスのすべてが、ひとつのテーマ――“自己肯定”をめぐって見事に調和しているという、作品としての完成度の高さがある。
日向坂46はこれまで、明るさ、優しさ、誠実さをもって、時代の空気を柔らかく照らしてきた。そして「Love yourself!」は、そうしたグループの姿勢をさらに洗練させながら、新たな章への覚悟と希望を示す表現となった。今後このグループがどんな表現へと舵を切るのか。その指針を「自分自身を愛する」というテーマに託したこのMVは、しばらくの間、記憶に残る標となり続けるに違いない。
※1:https://www.hinatazaka46.com/s/official/diary/member/list?&ct=27
























