絶対的な信頼とイタズラ心が成立させるカロンズベカラズ節

ーーそこから3曲目の「ドウドウ」につながりますが、こちらもハロウィン感というか、テーマパーク的な感覚があり、「どうだっていい」「堂々」、相手を落ち着かせる「ドウドウ」のように言葉遊びも感じられる楽曲です。

ナナホシ管弦楽団：この曲はかなり締め切りが迫っていたなかで作りました（笑）。「もう帰りましょう」は、こういう曲を入れたいという明確なビジョンがあって作っていたんですが、もう一曲をどうしようというところで、「何か新しいものを作らなあかん」と。そうやってグルグル考えていたので、「堂々巡り」の「ドウドウ」でもありますね。

SymaG：単純にノリやすい曲ですし、歌詞の内容もわりとネガティブというか、泣き言のようなところがあるので、僕的には大好物で（笑）。

ナナホシ管弦楽団：得意ジャンルだ（笑）。

SymaG：「ヘンな曲が来たぞ〜！　ヨシッ！」という感じもあって、歌入れもよりやる気になりました（笑）。

ーーナナホシさんが「島爺」に楽曲提供をしていた頃から、「この曲、どう歌うの？」という、絶対的な信頼とイタズラ心のあるやりとりが尖った音楽性につながっていますね。

SymaG：そこは今も変わらないですね。

ナナホシ管弦楽団：カロンズベカラズを組んで、より解釈を任せる感覚が強くなっているというか。歌入れを楽しみにしています。

ーー4曲目の「いたみわけ」もカロンズベカラズならではの世界観で、色気と和のテイストが効いた一曲です。以前から思っていたのですが、SymaGさんもナナホシさんも、女性的なペルソナを表現するのが得意なのかなと。

ナナホシ管弦楽団：誤解を恐れずいうと、僕、できることなら女性に生まれたかったんですよね。自分のなかに男性的な面があまりないような気がしていて、そういう感覚がこの曲にも自然と出ているのかもしれないです。歌詞の内容はかなり性格悪いですけど（笑）、SymaGさんが歌うことでひねくれすぎないイメージになっていますね。物悲しさみたいなニュアンスは、僕のデモの段階ではなかったので。

SymaG：これはEP全体にも言えることなんですが、アートワークも素晴らしくて、MVに使わせてもらっているおさるのかごやさんのイラストを見ながらレコーディングしたんですよね。どういう歌い方をしたら一番しっくりくるか、と色々試した楽曲で、今の形からは想像がつかないような、がなりが多めのバージョンもあったり、もっとウィスパーで歌ってみたりもして。最終的に、おさるのかごやさんのイラストに合うのはこれやな、というのが決め手になりました。

ーー5曲目の「もう帰りましょう」は、「いたみわけ」と裏表に感じる部分もあり、最終曲の「パンドラ」ともつながる部分があって、曲順も抜群だと思います。洒脱で転がるような歌詞もカロンズベカラズの魅力ですが、ひとつも難しい言葉を使わずにドラマを感じさせるバラードで、SymaGさんの伸びやかな歌唱がライブでも映えていました。

ナナホシ管弦楽団：アンケートで以前から「バラードを聴いてみたい」という声をいただいていたのがきっかけですが、この曲も「もう帰りましょう」というタイトルが先にあってできました。バラードと言いつつ、ギターがなければライブのときに僕がすることがなくなることもあって（笑）、ロックバラード調になって。EP全体のなかでは、前半に溜め込んだ黒い部分を浄化するような位置づけで、「パンドラ」にうまくつながる、母性のあるニュアンスを意識しました。

SymaG：歌入れは最後になったんですが、ちょうど花粉症がピークで鼻声になってしまって大変だったんですよ（笑）。納期が迫るなかで、その日のコンディションでフレーズごとに録り分けたりもしていたので、整合性がとれてホッとしたというか。

ーーライブで通して歌い切るのは、SymaGさんにとっても新鮮なことだったり。

SymaG：そうですね。この曲に関しては本当に歌だけに集中しているというか、曲のイメージだけを思い浮かべて歌っているので、ライブであるということすら意識していなかったかもしれません。一言で表現すると「母性」ですが、僕は男性なので「母性はこうあってほしい」という願望を含んだイメージになっていると思います。

ナナホシ管弦楽団：無謀なところに挑戦していって、失敗して「あかんかったわ……」と肩を落とした人に対して、「もう帰りましょう」というイメージで作ったので、歌にそのニュアンスが出ていてさすがやなと。