SymaG（島爺）とナナホシ管弦楽団によるユニット・カロンズベカラズが、EP『UNVOXED』リリースに伴う東阪ツアー『パンドラ』を開催し、いずれの公演も大成功の中で幕を閉じた。

　タイトルが示す通り、人生の苦楽を昇華した多彩な楽曲が、さながらおもちゃ箱のように詰め込まれた『UNVOXED』。ソロでは実現できない、SymaGとナナホシ管弦楽団が持つ才能の化学反応から生まれたエッジのある楽曲を楽しむことができる。

　リアルサウンドでは、同ツアーを終えたばかりのカロンズベカラズにインタビュー。『UNVOXED』の制作背景をはじめ、ライブを通して作品を届けた手応え、カロンズベカラズの今について話を聞いた（編集部）。

僕らの表現、音楽活動自体を面白がってくれている（SymaG）

ーーEP『UNVOXED』のリリースから約1カ月、大阪・東京ツアー『パンドラ』で楽曲が披露されましたが、ものすごい盛り上がりでしたね。お二人は、本作のこれまでの反響をどう受け止めていますか。

ナナホシ管弦楽団：楽曲ごとのバリエーションの違いを楽しんでもらえているようで、意図した形で受け取ってもらえているな、と思います。

SymaG：リスナーの方が個別の楽曲を選んで手軽に聴くことができる時代なので、アーティストが多彩な楽曲を送り出していても、「この人にはこういう楽曲は求めてないねん」という感覚を持って、お気に入りの作品以外はスルーしている人も少なくないと思うんです。そんななかで、僕らには古くから支えてくれてるファンの方々がいらっしゃって、個別の楽曲を消費するのではなくて、その奥にある僕らの表現、音楽活動自体を面白がってくれているんだな、ということをあらためて実感しましたね。

ーーSymaGさんが観客に「お気に入りの楽曲」を聞いたときに、「全部！」という元気のいい返答がありました。それぞれの楽曲に比較が難しい個性／魅力があり、お世辞ではなさそうです。

ナナホシ管弦楽団：これまでのライブでアンケートを取らせてもらっていて、今回は「こんな曲がほしい！」という声に応えようという部分があって。希望の多いバラードだったり、言葉遊びが楽しかったり、コール＆レスポンスで盛り上がれたり、求められる要素を取り入れながら、自由に挑戦できたのがよかったのかもしれないですね。

ーーそうした色とりどりの楽曲を収録したEPが、『UNVOXED』という気の利いたタイトルになりました。箱を開ける（UNBOXED）というニュアンスに、VOX（声）という要素を掛け合わせた造語ですが、こちらはどんな流れで決まったのでしょう？

SymaG：最初にツアータイトルが『パンドラ』に決まったんですよね。

ナナホシ管弦楽団：そこからめちゃくちゃ迷走しました（笑）。

SymaG：「パンドラ」は楽曲タイトルにして、EPはまた別のタイトルにしようと。そこから、パンドラ→箱を開ける→BOX→声のVOX、という流れだったと思います。ジャケットにも表現されているような、遊園地みたいにワクワクするイメージも含めて、結果的にいいタイトルになったなと。

ーーそれぞれの楽曲についても聞かせてください。1曲目の「エスオーエス」はアーケード音楽ゲーム『maimai でらっくす』に向けて書き下ろされた楽曲で、音ゲーに映えるノリのあるロックサウンドと、救難信号のSOSから「オーエス オーエス」とリスナーを鼓舞するようなフレーズが印象的で、ライブの定番曲になっていくのではと。

ナナホシ管弦楽団：いただいたオーダーが、「カロンズベカラズ」（1stEP『曲者』収録曲）のようなロックテイストの楽曲を、ということだけだったので、好きに作らせてもらいました（笑）。筐体と向き合って遊ぶ音ゲー用の曲が、ライブであんな盛り上がり方をするとは思っていなかったですね。

SymaG：制作したタイミングでTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTにハマっていて、ミッシェルの話をよくしていたんですよね。僕が「そういう曲を作ってくれ」と言ったわけではないんですが、だから最初のリフも含めて、どこか懐かしさも感じるロックになったのかもしれないな、と思います。

ーー2曲目の「悪魔の取り分」は”遊園地感”がEP全体のコンセプトにもつながっている楽曲ですが、タイトルは蒸留酒の用語で、1st Full Album『Sprout』に収録された「天使の分け前」と対応する言葉ですね。

SymaG：最初は2024年のクリスマスにリリースしたいと考えていて、だからテーマパーク感のある楽曲になったんですよね。

ナナホシ管弦楽団：「天使の分け前」のときから「悪魔の取り分」というワードは考えていて、タイトル先行でできた楽曲です。「天使の分け前」がクリーンな曲だったので、こっちはダーティな感じで行こうと。シンセ・ロック的な曲がほしいと思っていたこともあって、こんな形になりました。

SymaG：ボーカルとしては、比較的歌いやすい曲です。一聴して「難しそうやな」と思う曲の方が実は歌いやすくて、声の情報量を加える隙がないというか、「これ以上は無理やな」と諦めがつきやすくて（笑）。逆に「もう帰りましょう」のようなシンプルに聴こえる曲は、一音一音にこめる情報量がえげつないことになるので、かえって大変だったりしますね。「悪魔の取り分」はライブでも気持ちよかったです。