連載「lit!」第146回：SEEDA、SALU、CHOUJI & Gacha Medz……キャリアや人生観を総括したヒップホップ5作

YOU THUG『GET OUT OF』

　演歌的な“和”の歌心とトラップ、ハードなドリルミュージックのサウンドの融合。若手ラッパーとして独特な存在感を放つYOU THUGは、ストリートに詩情を与えるような存在だ。彼の1stアルバムとなった今作では、多様なラップスタイル、フロウが全編に散りばめられ、彼の異端性をはっきりと脳裏に焼き付けられる。全9曲それぞれがバラエティに富みながら、シーンの中でのYOU THUGの独自性を証明している。特に、Jin Doggとのハードな「BILLION」で聴かせる高速フロウや、「Grandma」や「STAR」で見せるメロディアスな情景は、彼が併せ持つ両極の魅力を感じ取るのに相応しい。さらに、アルバム全体の良いアクセントになっているYvngboi Pや、お互いのスキルを激突させ合うようなWatsonとの共演など、彼の個性を引き立たせる客演陣の参加曲も聴き逃せない。

SALU『BIS4』

　SALUによるミックステープシリーズの新作は、彼のスキルフルなライミングとメロディアスでキャッチーなソングライティングが詰め込まれた、内省的でありながらも煌びやかな作品だ。一光、Nemlo Uneeq、TWIGY、YOUNG DAISらゲストを招きながらも、全体はソリッドな感触でまとまっており、BACHLOGICらのプロデュースもSALUのパーソナルなラップを引き立てている。特に「Kintsugi」では、さまざまなアーティストの名前を挙げ、自らの過去を赤裸々に振り返るストーリーテリングを強固なライミングで披露しており、スキル面・トピック面においても聴き逃せない楽曲である。上述したSEEDAのアルバムと同様、自らのキャリア、人生を一つの線として結びながら、今のSALUならではのリリックで書き上げている点は、胸に迫るものがある。ミックステープという形態でありながら、展開はアルバムのように練られており、終盤のポジティブで開けた方向に舵を切っていく様は、何よりもSALUらしいバイブスに溢れている。