稲垣吾郎の”声”が与える安心感 NHK Eテレ新番組『toi-toi』で果たす役割、番組の要を担う絶妙なバランス
番組の要を担いながらも、決して前には出過ぎない。MCではなく、ナレーションというポジションを愛しているところも、実に稲垣らしいではないか。振り返ってみれば、稲垣にとってナレーションをはじめとした“声”の仕事は、いつも誰かの思いを汲み取り、聞き手に柔らかく届けるものだった。
現在パーソナリティを担当しているラジオでもそうだ。編集長として女性誌を作っていくというコンセプトの『編集長 稲垣吾郎』(文化放送)では、“Goro’s Search”と称してさまざまなジャンルの有識者に電話対談をするコーナーがある。なかにはメディアに慣れていない人が登場することも少なくないが、稲垣がそっとエスコートする声はゲストにとっても、そしてリスナーにとっても安心して楽しめる安定感がある。
また、架空のレコード店の店長に扮して送られるワイドラジオ『THE TRAD』(TOKYO FM)では、個性豊かな著名人やミュージシャン、アーティストたちが登場。こちらはゲストがのびのびと話せる空間を提供しながらも、リスナーとの温度差を埋めつつ、生放送の枠組みをしっかり守る落ち着きも求められる。難なくこなしているように見えるが、そのさり気なさこそ職人的な仕事ぶりだ。
先のインタビューでも「顔は見えなくても、どのくらいそこに存在するのか、さじ加減が難しい」と話していたように、稲垣は意識的にその存在感の奥行きを声で表現できる人なのだ。知っている声というだけでホッとさせてくれたかと思いきや、その先は自由に動けるようにそっと見守る側に立つ。そんな稲垣の品を感じさせる心地よいナレーション。その声がきっかけとなれば、より多くの人に“問い”が届き、一緒に考えていける希望すら感じられる。
※1:https://www.oricon.co.jp/news/2377318/full/
※2:https://www.asahi.com/articles/AST483DBHT48BNQI00LM.html