布袋寅泰が語る最高傑作『GUITARHYTHM VIII』 Char、吉井和哉、石野卓球……進化し続ける音楽探求の衝動
吉井和哉、石野卓球――「進化させるには、新しい刺激が必要だった」
――吉井さんらしいロマンチストな詞世界が広がる「Falling」。「Dangerous」での共演もインパクトがありましたが、今回タッグの経緯を教えてください。また、布袋さんから見た“吉井和哉”というアーティスト/作家は、どのように映っていますか?
布袋:吉井くんの詞ってさ、すごくロマンチックで、ちょっとミステリアスなところがあるじゃない? 歳を取るとラブソングを書こうとするとどうしても観念的になってしまうので、ここはラブソングの巨匠にゆだねようと。「Falling〜」というサビはデモのまま残してもらい、運命の出会いを果たした男と女が、愛しい闇に堕ちながら昇天してゆく、ちょっとスピリチュアルな曲に仕上がったね。彼はいつもレスポンスがとても早くて、第一稿が上がってきてまずは歌ってみて、少し気になる部分を相談して何度かのやりとりで仕上げた。最終稿はTHE YELLOW MONKEYの武道館の前日の夜に届いたよ。ライブ前の大変な時に仕上げてくれて感謝しかない。お互いのスタイルが違うからこそ、ぶつかるんじゃなくて、いい意味で溶け合う。僕らふたりならではの関係性があると思ってるよ。彼の詩は赤く燃えているのにどこかひんやり冷たい、刹那的だけど心が満たされるような二面性を備えているところが好き。この曲のギターにリフもBilly Idolの横で弾いていたSteve Stevensを意識したんだ。懐かしいだろ? Andy Summersとかね。ギタリスト諸君にはぜひコピーにトライしてほしいな。
――テクノサウンドとソリッドなギターの相性が抜群の「Move Your Body」も、今までありそうでなかった意外な組み合わせです。この曲では石野卓球さんとコラボしていますが、布袋さんは卓球さんや電気グルーヴをこれまでどういうふうな音楽/アーティストとして捉えていましたか?
布袋:『GUITARHYTHM』を進化させるには、新しい刺激が必要だった。卓球さんと曲を作るのは初めてだったけど、彼=電気グルーヴの音楽には以前から共感する部分があった。お互い80年代のニューウェーブやエレクトロに影響を受けてきた世代だし、目指すべき世界観が明確だった。「D.A.F.のような太くて攻撃的なシンセベースに、メタリカの重さとGang of Fourの鋭いギターを組み合わせよう!」って盛り上がったよ。制作もすごくスリリングで、予想以上に刺激的なコラボになった。「Move Your Body」は、ファーストの「MATERIALS」にも通じる、インダストリアルロックの旨みが凝縮した傑作だと思ってる。〈電気の墓場で Do the モンキーダンス〉っていうキッチュな歌詞も気に入ってる。いつかライブで、彼のDJに合わせてギターを弾いてみたいね。
――19年ぶりのCharさんとのコラボも実現しています。布袋さんにとってCharさんの存在は、交流と共演を重ねることでどう変わっていきましたか? 「Stereocaster」ではバチバチのギターバトルという趣きがありましたが、「Side by Side」はおふたりが寄り添い合っている印象を受けました。
布袋:まずは19年ぶりということにふたりとも驚いた。「嘘だろ? 10年ぐらいかと思ってたよ!」って感じで。Charさんは本当にお人柄が優しく自然体でユーモアに溢れていて、いつ会っても久しぶりな感じがしないんだよね。今回はJeff Beckのトリビュートライブにお声がけいただいた時に、自然と「ああ、Charさんと久しぶりに気持ちよくギターで会話がしたいな」と思いオファーをした。7つも上の先輩に対して言うのも失礼かもしれないけど、ふたりが元気なうちにできるだけご一緒したいな、なんて思うんだよ。Jeffが気づかせてくれたところもあるね。何度か共演したり、プライベートでも会ううちに、ギタリストとしてのリスペクトはもちろん、人としてもすごく深いところで共感できるようになってきた。「Stereocaster」の時はギターのバトルって感じだったけど、「Side by Side」ではお互いの音に寄り添うような、もっと大人な関係性が出てきたと思う。年を重ねた今だからこそできたコラボだったと思うよ。
――「Side by Side」の制作に関してはYouTube対談でも語られていますが、個人的な感想としてはCharさんのアーミングが布袋さんっぽかったり、布袋さんのサウンドがCharさんに寄っているような部分もある気がしました。楽曲制作はどのように進んでいきましたか?
布袋:この曲は下書きのベーシックな進行を僕が作って一緒にスタジオに入り、文字通りセッションしながら構成を考えたりしたよ。あまり初めから決め込んだフレーズを弾くのは退屈だし照れくさいし、テーマの1小節だけ決めてあとはバンドとの一発録り。ちなみに途中で出てくる「Battle Without Honor or Humanity」と「Smoky」のキメは僕のフラッシュアイデア。Charさんはただニンマリ笑ってたよ。こういう気の利いたジョークって大切だよね。しかも一瞬でお互いの歴史がスパークするフレーズを持っているというのが強いよね。ベースラインもあまり裏打ちにアクセントと付けず淡々の弾いてもらい、シンセベースを裏に重ねたところが80’sオマージュ。ギターって、ちょっとしたビブラートやチョーキングのニュアンスが本当に繊細でね。自分のギターもそれに呼応するように弾いていくと、言葉じゃない会話が生まれるというか。ギターって、やっぱり心で弾くものなんだなって再確認したね。とても気に入っている曲だよ。
CharとBrian Setzerとの約束「またあの3人でライブを実現しよう」
――これまでのキャリアを振り返れば、誰かの横でギターを弾いている時間とボーカリストとして歌に向き合う時間、その両方が存在していたと思います。ご自身の歌声について思うこと、ボーカリストとしての自分とはどう向き合ってきましたか?
布袋:最初はもう、自分の声に全然自信なかったんだよ。ギターは武器だけど、歌は“弱点”だと思ってた。でも、だんだんと「この声でしか伝えられないこともある」って思えるようになってきて。今はね、声もギターと同じように、自分の“音”のひとつだと思ってる。完璧じゃなくても、心がこもってるかどうかがいちばん大事だなって思うよ。また歌うギタリストは、そうではないギタリストとは根本的なアプローチが違うと思うよ。呼吸ひとつとってもね。先日Brian Setzerが自己免疫疾患でギターを弾くことができなくなったというアナウンスがあって、とてもショックを受けた。彼もまた歌うギタリストの最高峰だからね。Charさんも心配して、早速Brianにふたりからメールを入れたらとても喜んでくれたよ。またあの3人でライブを実現しよう、って約束したよ。
――今後の『GUITARHYTHM』シリーズの展開はどうなっていくのでしょうか? 今、見えていること、考えていることなど、話せる範囲でお願いします。
布袋:実はもう、次の構想もちょっとずつ浮かんできてて(笑)。なんてまんざら嘘でもなく、下手にスタジオに入るとまた作り始めちゃうから今は我慢してる。これからリリースがあり長いツアーが待ち受けているわけだから、実際そんな余裕はないしね。でも、あまり『GUITARHYTHM』だからこうあるべき、みたいな縛りは持ちたくないんだ。あくまで自分にとっての楽しみながら模索するクリエイティブなプロジェクトでありたいし、今回も満足のゆく形が作れたから、次はまたガラッと違う方向に行くかもしれないし、逆にもっと原点回帰するかもしれない。決まってるのは、まだまだ『GUITARHYTHM』は終わらないってことかな。とりあえず『GUITARHYTHM X』を目標に頑張るつもりだよ。
――『HOTEI the LIVE 2025 “GUITARHYTHM VIII TOUR”』もまもなく始まります。最後にツアーへの意気込みなど、お教えいただけたらと思います。
布袋:このアルバムはライブがすごいよ。間違いない。2024年はツアーをやらなかったので全国のファンのみんなもウズウズしてると思うんだよね。思い切り踊って弾けて、そして心の隅まで染み渡るような音を届けたいね。もちろん最新作からの曲を中心に、久しぶりに訪れる場所も多いので、みんなが聴きたい曲もセットリストにうまく取り入れて、誰もが満足してもらえるような構成を目指したい。山木さんが初めてツアーに参加してくれるので、日本最高峰のドラミングも堪能してほしい。斬新なライティングや演出、ファッションにも注目してほしいね。やっぱりライブは、自分にとって“最前線”なんだよね。レコーディングで作り込んだ音が、ステージでどう“生き物”になるか。それを確かめる場所でもあるし、観てくれる人と一緒に音楽を体感する時間だから。全身で浴びにきてほしいね、“最新の布袋”の音の嵐を。
■リリース情報
アルバム『GUITARHYTHM VIII』
発売中
配信URL:https://hotei.lnk.to/guitarhythm_8ID
・完全数量限定盤(CD+2BD):TYCT-69347/14,000円+税(税込15,400円)
・完全数量限定盤(CD+2DVD):TYCT-69348/13,000円+税(税込14,300円)
・Deluxe Edition A(CD+BD):TYCT-69349/9,000円+税(税込9,900円)
・Deluxe Edition A(CD+DVD):TYCT-69350/8,500円+税(税込9,350円)
・Deluxe Edition B(CD+BD):TYCT-69351/9,000円+税(税込9,900円)
・Deluxe Edition B(CD+DVD):TYCT-60252/8,500円+税(税込9,350円)
・通常盤(CD):TYCT-60247/3,000円+税(税込3,300円)
<CD収録内容>
01. Jump
02. No More Killing
03. 憂鬱なジキル
04. Love is
05. Side by Side (feat. Char)
06. Finally
07. Falling
08. オフィーリア
09. Boogie Woogie Under Moonlight
10. Move Your Body (feat. 石野卓球)
11. Funk It Up
12. Ghost of Pain (G8 ver.)
<映像収録内容>(BD/DVD共通)
Deluxe Edition A
『LIVE IN BUDOKAN 〜The HOTEI〜 “The HITS” 2024年12月6日日本武道館』
・スリル
・BE MY BABY
・Marionette
・RUSSIAN ROULETTE
・NOCTURNE No.9
・CIRCUS
・ラストシーン
・季節が君だけを変える
・1990
・Battle Without Honor or Humanity
・Give It To The Universe
・STILL ALIVE
・さらば青春の光
・SURRENDER
・バンビーナ
・B・BLUE
・恋をとめないで
・Dreamin’
・Stereocaster
・C'MON EVERYBODY
・GLORIOUS DAYS
・POISON
Deluxe Edition B
『LIVE IN BUDOKAN 〜The HOTEI〜 “The HISTORY” 2024年12月7日日本武道館』
・NO. NEW YORK
・Marionette
・BAD FEELING
・BE MY BABY
・PROPAGANDA
・MATERIALS
・MEMORY
・DANCING WITH THE MOONLIGHT
・FLY INTO YOUR DREAM
・SUPERSONIC GENERATION
・GOOD SAVAGE
・DIVING WITH MY CAR
・TEENAGE EMOTION
・LONDON GAME
・MERRY-GO-ROUND
・C'MON EVERYBODY
・GLORIOUS DAYS
・Dreamin’
・Stereocaster
・Battle Without Honor or Humanity
・LONELY★WILD
・POISON
・バンビーナ
※完全数量限定盤には『LIVE IN BUDOKAN 〜The HOTEI〜 “The HITS” 2024年12月6日日本武道館』『LIVE IN BUDOKAN 〜The HOTEI〜 “The HISTORY” 2024年12月7日日本武道館』をそれぞれ全曲収録。
■ツアー情報
『HOTEI the LIVE 2025 “GUITARHYTHM VIII TOUR”』
04月26日(土)高崎芸術劇場 大劇場・群馬
04月27日(日)高崎芸術劇場 大劇場・群馬
04月29日(火・祝)栃木県総合文化センター メインホール・栃木
05月03日(土・祝)奥州市文化会館 Zホール 大ホール・岩手
05月04日(日・祝)けんしん郡山文化センター(郡山市民文化センター)大ホール・福島
05月10日(土)サンポートホール高松 大ホール・香川
05月11日(日)高知県立県民文化ホール オレンジホール・高知
05月17日(土)新潟県民会館 大ホール・新潟
05月18日(日)富山オーバード・ホール 大ホール・富山
05月25日(日)福岡サンパレス ホテル&ホール・福岡
05月28日(水)相模女子大学グリーンホール 大ホール・神奈川
06月01日(日)水戸市民会館 グロービスホール・茨城
06月06日(金)カナモトホール(札幌市民ホール)・北海道
06月08日(日)函館市民会館 大ホール・北海道
06月15日(日)NHKホール・東京
06月20日(金)フェスティバルホール・大阪
06月21日(土)フェスティバルホール・大阪
06月28日(土)佐賀市文化会館 大ホール・佐賀
06月29日(日)熊本城ホール メインホール・熊本
07月11日(金)市川市文化会館 大ホール・千葉
07月12日(土)市川市文化会館 大ホール・千葉
07月19日(土)愛知県芸術劇場 大ホール・愛知
07月20日(日)愛知県芸術劇場 大ホール・愛知
07月26日(土)アクトシティ浜松 大ホール・静岡
07月27日(日)ロームシアター京都 メインホール・京都
08月02日(土)上野学園ホール・広島
08月03日(日)岡山芸術創造劇場ハレノワ 大劇場・岡山
08月09日(土)仙台サンプラザホール・仙台
<チケット>
全席指定: ¥11,000(税込)
※3歳未満入場不可(3歳以上有料)
※お子様の会場における安全責任は、同行保護者に負っていただきます。
チケット購入はこちら:ローチケ/イープラス/チケットぴあ
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