レトロリロン、メジャーデビューの瞬間 「あなたの曲になる瞬間を楽しみに」――覚悟の一夜を振り返る

 丁寧に歌い上げると、涼音はステージをあとにした。すると始まったmiri、飯沼、永山の3人によるツアーのお楽しみタイム、通称“デンジャラゾーン”。オーディエンスとともに楽しむための時間では、各々がキーワードから連想したものを答えて正解を見つける某バラエティ番組のゲームを開催。「EX THEATER ROPPONGIの“イ”から始まる、大きいものは?」というお題には、会場から一斉に声が上がった。オーディエンスとのコミュニケーションをひとしきり楽しむと、涼音がステージへ戻ってきた。

 「後半戦もどうぞよろしく!」と「ヘッドライナー」からライブは再開。飯沼のスラップが会場の空気を切り裂き、「せっかくだから声を出してみない?」と涼音が煽ると、会場の一体感はさらに増す。「焦動」、「きれいなもの」と間髪を入れず奏でる。終盤になっても衰えない涼音の歌声、miriの鍵盤に至っては、後半になるにつれて、強度を増しているような感覚もある。4人の内から紡ぎ出される音の葉は確実にオーディエンスの耳に、胸に、浸透している。ライブも終盤戦、「EX THEATER ROPPONGIを会場に選んだことは挑戦だった」と再び涼音が気持ちを吐露する。彼のまっすぐな言葉に会場も息を呑む。「これからもあなたのために曲は書かないし、僕にとって音楽が、人生が何なのかを知るために、自分から出たものを曲にしていく。でも、何かがぶつかって、あなたの曲になる瞬間を楽しみに歌い続けます」と決意表明をすると、永山のカウントから「深夜6時」が始まった。真っ赤に染まったステージで音をかき鳴らす、4人の姿。きっとこの4人でなければ、レトロリロンでなければ鳴らせない音があるのだろう。涼音はそれを理解しているし、曲の間奏で必ずメンバーと目を合わせるのは、リスペクトと信頼の表れなんだと、そう思う。とても人間的な4人が鳴らす音には血が通っている。オーディエンスは彼らが鳴らす音にただ寄り添うだけ。そこに最高の空間が完成している。

 「楽しめた? みんな友達だからな、親友になって帰りませんか?」と、本編の最後に「TOMODACHI」を投下したレトロリロン。オーディエンスは自由に彼らの音楽に身を委ねている。クラップ、シンガロング。ライブの冒頭で涼音が発した「自分らしく楽しんでくれ」という言葉を体現するフロア。そんな空間のなかで4人は圧倒的な演奏とグルーヴを魅せつけている。演奏終えると、深々と頭を下げ、ステージをあとにした4人に割れんばかりの歓声と拍手が送られると、すかさずアンコールを求めるクラップが会場を包んだ。

 再びステージに姿を現した4人はグッズ紹介を挟み、「曲をやります。みんなそれを待ってたんだよね?」と「夢を見る」、「アンバランスブレンド」の2曲を披露。この日ラストソングとなった「アンバランスブレンド」のアウトロで涼音は、「みんなに最後ひとつだけ……」と、レトロリロンのメジャーデビューを発表した。オーディエンスは驚きを隠せない模様だ。「これからもどうぞよろしく!」――。歓声と拍手、さまざまな感情が入り混じったEX THEATER ROPPONGI。そんな歓喜の空間には、桜色の紙吹雪が舞い踊っている。レトロリロンとしての集大成を見せ、新たなスタートラインに立った4人は、「みんなで大きいところまで行きましょう!」という涼音の言葉で、ライブを締め括ったのだった。

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