レトロリロン、メジャーデビューの瞬間 「あなたの曲になる瞬間を楽しみに」――覚悟の一夜を振り返る

 今年1月に3rd EP『アナザーダイバーシティ』をリリースしたレトロリロンのツアー『RETRORIRON 3rd EP「アナザーダイバーシティ」RELEASE ONEMAN TOUR 2025』。大阪、名古屋、仙台、広島、福岡、札幌でのワンマンを各地駆け抜けてきた彼らは、4月6日にEX THEATER ROPPONGIでツアーファイナルを迎えた。『インナーダイアログ』、『ロンリーパラドックス』と合わせて3部作を成す『アナザーダイバーシティ』。この3部作でバンドとしての確固たるスタイルを確立したであろう、レトロリロンのライブは、紡ぎ出す音の葉から4人の自信が垣間見ることができたし、笑顔で彼らを見つめるオーディエンスの表情を相まって、幸福な空気が溢れるライブだった。

涼音(Vo/Ag)

 多くのオーディエンスが詰めかけた、EX THEATER ROPPONGI。SEが会場に流れ始めると、ハンドクラップが会場に巻き起こる。ひとりずつステージに姿を現すレトロリロンの4人は定位置につくと、「東京! 楽しむ準備はできてる?」と涼音(Vo/Ag)の挨拶から「ワンタイムエピローグ」でライブの口火を切った。奔放に躍り回るリズムと畳み掛けるグルーヴィーなサウンドを力強く演奏する4人に、会場からは大きなクラップ音が響き渡る。冒頭から、熱気ムンムンな会場。1曲目から彼らの独壇場でライブは進行していく。「DND」、「Restart?」を持ち前のソウルフルな歌声とスキルフルな演奏で駆け抜けると、「今日はありがとう。話したいことはたくさんあるけど、音楽と演奏に乗せて伝えようと思います」と涼音は言葉にする。すると、大きな歓声が会場を包む。ボルテージがさらに上昇したフロアで「カテゴライズ」を投下する4人と、彼らのサウンドに寄り添いながら心地好く体を揺らすオーディエンス。涼音はメンバーと時折目配せをしながら、この最高のライブを作り上げる。飯沼一暁(Ba)と永山タイキ(Dr)が鳴らすビート、miri(Key)が織り成す多彩な音で我々をレトロリロンのフィールドにさらに引きずり込むと、「カウントダウン・ラグ」、「独歩」と立て続けに披露していく。スキルフルな演奏と同期を交えながら展開されていく、非常にカラフルなライブ。ポップネスとマッドネスが入り混じったセットリストは、我々の感情を揺さぶり続けていく。

miri(Key)
飯沼一暁(Ba)

 「Document」でシンガロングが巻き起こり、会場がひとつになると、機材のみが置かれていたステージにベッドやランプなどの家具が出現する。涼音はベッドに腰をかけると、ギターを爪弾きながら「自分の話をしていいですか?」と口を開いた。メンバーへの思いと音楽活動に対する胸中をオーディエンスに語りかけるように明かし、「ずっとひとりでやってきたけれど、誰かをきっかけに人生が変わるのも悪くない。誰も寄せ付けなかった過去の自分に書いた曲を」と、「救いのない日々よ」を歌い始める。過去の自分への手紙のような楽曲を力強くも儚く歌い上げる涼音。その歌声に呼応するのは、彼が信頼する3人のメンバーだ。涼音の歌声を中心に、音の葉が広がっていくのがわかる。そんなあたたかい音色にオーディエンスは酔いしれる。

永山タイキ(Dr)

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