『MUSIC AWARDS JAPAN』とSpotify Japanに共通する“2つのミッション” 野村達矢氏×トニー・エリソン氏対談
国内楽曲が海外で今後もっと再生される可能性が見えている
ーーお二人は、国内の音楽ストリーミング市場の現状と、海外での日本の音楽の成長予測に関して、どのように考えていますか?
トニー:Spotifyは、全世界でアクティブユーザー数が6億7,500万人、Spotify Premiumを利用される有料会員が2億6,300万人の規模まで成長しています(2024年度末)。世界市場では、常にユーザーが増加し、成長も続いています。日本の業界の方からは、利益に繋がる有料会員の獲得がなぜ増えないのか、などとよく言われます。実際には、国内の有料会員数は年々増えています。ただし、爆発的な増加が起きていないのは事実です。私たちは、会員数を伸ばすには、成長軌道に乗り続けることが大事だと考えています。『MAJ』は、業界が一丸となって、日本のリスナーや海外の方々に向けて配信を推進する意味で大事な取り組みだと捉えています。
野村:海外の先進国では音楽サブスクリプションの有料会員数は人口の30%ほどを占める、と色々なデータで言われています。日本では未だ20%前後と推測されています。他国と比べて日本は少ないかもしれませんが、まだまだ伸びしろはあります。繰り返しにはなってしまいますが、『MAJ』の投票に一般リスナーや海外リスナーも参加できるように賞を設けたのは、グローバルで日本の音楽への関心を高めてもらいたいという思いがあるからです。『MAJ』が国内外に日本の音楽を広げる起爆剤の一つとなってほしいと願っています。
トニー:Spotifyでの国内楽曲の再生数を見ると、海外からの再生が増加傾向にあります。目に見えるところまで勢いが出てきました。海外で今後もっと再生される可能性が見えています。国内楽曲の海外リスナーをサブスクリプションの中で増やしていくこと。これが今のSpotify Japanが業界の皆さんから一番期待されていることだと思っています。
野村:実際にこの数年間、私の会社(ヒップランドミュージック)でも、海外からの売上が伸びています。サブスクリプションで再生される邦楽をグローバル規模で増やすことが、日本の音楽ビジネスやストリーミングビジネスの発展に繋がると考えています。日本の音楽に注目する海外リスナーが増え始めている現状をさらに拡大することが、私たちCEIPAと『MAJ』の使命だと思っています。
ーー最後に、野村さんからストリーミングサービスに今後期待したいことはありますか。
野村:今までのCD中心だった時代とストリーミング時代では、音楽との出会い方に大きな変化が生まれました。CD時代はシングルとアルバムを出して、テレビやラジオに出て、ツアーをやる、と大体の方法が決まっていました。しかし、SNSやストリーミングをきっかけに偶発的に新しい音楽、知らなかったアーティストと初めて出会う機会が増えたことは、純粋に素敵な音楽体験だと感じています。なかでもプレイリストでの音楽再生は、新しい音楽の聴き方や知らない音楽の紹介を象徴する文化です。こうした新時代の文化がさらに広がれば、新しい音楽と出会う人も回数も増えていくので、音楽を広げる好循環に繋がると思っています。