映秀。が観客を巻き込んで作り上げる一つの音楽 最新ツアー東京公演で感じたアーティストとしての信念
渦巻く熱気を冷ますように、榎本の流麗なピアノソロを挟んで披露したのは、同じく『第弐楽章 -青藍-』からミドルバラード「雨時雨」。地声とファルセットを巧みに織り交ぜた映秀。の声が、抑揚のあるメロディを慈しむように歌い上げていく。ピアノと声だけでしっとりと聴かせた後は、杉村と映秀。の2人で「縁」。まるで古いラジオから聞こえてくるようなギターの音色と、憂いのある映秀。の歌声がコントラストを描き出す。
「もしかして今日のライブ、『聴きにきた』つもりの人いる? いやいや、一緒に『音楽』やるから!」
そう言って再びバンドアンサンブルに戻り中盤戦へ。「My Friend」では、透き通るようなファルセットを響かせたかと思えば、中盤ではアーシーかつブルージーな歌声を響かせ聴き手の心を鷲掴みに。さらにサビの掛け合いコーラスを全員で合わせ、一体感を高めていく。
オレンジ色の照明の下、「砂時計」ではレイドバックしたアンサンブルに乗せ、一筆書きのようなメロディを歌い紡ぐ。静と動をダイナミックに行き来する「黄色の信号」、ヨナヌキ音階を用いた切ないメロディとスケール感たっぷりのバンドアンサンブルが印象的な「残響」を続けて演奏し、ギターのロングトーンが哀愁を誘う「幸せの果てに」では、〈生きてるだけでさ 丸儲け〉というフレーズを全員でシンガロングし再び場内は一体感に包まれた。さらに「反論」では、16ビートのリズムに乗せ映秀。がアコギをかき鳴らし、山本のスラップベースが応戦。ライブ終盤に向けて一気に熱量が加速する。
「次の曲は、スマホで撮っていいよ!」そう言って披露した「全部しようぜ」。最前列でスマホをかざすオーディエンスからそれを拝借した映秀。は、ステージの様子を自撮りも含めてそのスマホでひとしきり撮影し、再びオーディエンスに返すという粋なサプライズ演出も。「さあ、次の曲はスマホをしまってタオルを持って回そう!」と呼びかけ、「星の国から」のサビをみんなでタオルを一斉に回し盛り上げていく。どこかお囃子にも似たリズムやメロディが、日本特有の文化である「タオル回し」と共に祭り好きな日本人のDNAを刺激する。
「今日のライブ、少しでも何かを受け取ってもらえましたか? たとえ記憶からなくなったとしても細胞に残り、いつか『あなた』の傘になることを願っています。これからも、楽しみたい時は一緒に楽しむし、苦しい時は背中から抱きしめるし、一歩踏み出したい時は背中を叩く。そういう音楽を、ライブをやり続けていきたい。これからも応援をよろしくお願いします!」
そう挨拶し、万来の拍手が鳴り響くなか疾走するリズムに乗せ伸びやかな声で「よるおきてあさねむる」を歌い本編は終了。アンコールでは、小説家・カツセマサヒコと共作した2曲「瞳に吸い込まれて」と「youme」を続けて披露。「youme」のエンディングでは、ギターのフィードバックノイズが会場を洪水のように埋め尽くし、〈涙の熱で目が醒める 深い夜の底〉と歌う歌詞と連動するかの如く、音と光がゆっくりと交わり、やがて一筋の朝焼けのように溶け合うようなフィナーレだった。
なお、MCでは8月2日にワンマンライブを開催することを発表。「音」とたわむれ、まるで「音楽」そのものと一体化したような圧倒的なパフォーマンスを見せつけた映秀。が、次のライブではどんな進化を遂げているか。今から楽しみだ。
※1 https://realsound.jp/2025/01/post-1907026.html
【セットリスト】
M01. まほうのことば
M02. 涙のキセキ
M03. ほどほどにぎゅっとして
M04. Boys&Girls
M05. ハ茶メ茶オ茶メ
M06. 東京散歩
M07. 僕等の秘密遊園地
M08. 喝采
M09. 雨時雨
M10. 縁
M11. My Friend
M12. 砂時計
M13. 黄色の信号
M14. 残響
M15. 幸せの果てに
M16. 反論
M17. 全部しようぜ
M18. 星の国から
M19. よるおきてあさねむる
[Encore]
EN01. 瞳に吸い込まれて
EN02. youme