乃木坂46が今、Wセンターという勝負に出る意味 井上和&中西アルノは新たな時代の象徴に?
乃木坂46が3月26日にリリースする38thシングル『ネーブルオレンジ』の選抜メンバーが、3月2日深夜放送の『乃木坂工事中』(テレビ東京系)で発表された。今回の選抜メンバーは前作に引き続き19人。今回の最大の注目ポイントは、5期生の井上和と中西アルノによるWセンターの採用だろう。グループとしては初めてWセンターに5期生を起用することになり、新たな時代の到来を象徴する形となった。
遠藤さくらがセンターを務めた37thシングル『歩道橋』から3カ月ぶりとなる今回のシングル。この間に、3期生の与田祐希が卒業を発表し、今年2月には地元・福岡のみずほPayPayドーム福岡で卒業コンサートを行った。3期生として加入早々に18thシングル『逃げ水』でWセンターに抜擢され、以降グループの中核を担ってきた与田の卒業は、乃木坂46にとって一つの時代の区切りとなった。長きにわたって選抜入りの常連だった与田が卒業したことで、グループの中心は4期生、5期生へと大きくシフトしていると言えるだろう。この世代交代の流れ自体は昨年から、もっと言えば5期生が入る以前から進んでいた印象だが、今作『ネーブルオレンジ』でそれが一段と明白になった印象だ。
1期生、2期生が卒業し、3期生も次々と旅立っていく中で新世代メンバーがグループの看板を背負う役割を担う必要があるのも事実。そうした中で生まれたのが今回の5期生Wセンターであり、グループはまさに変革期の只中にあると言えるだろう。
5期生のWセンターということに関してはある程度予想できたが、井上と中西という5期生を牽引してきた2人がともに真ん中に立つということに、感慨を覚える人も多いのではないだろうか。『乃木坂工事中』での選抜発表では、「気持ちとしては、乃木坂46の素敵なところをよりたくさんの人に伝えられるようにみんなで頑張りたいなって思います」とすでに覚悟が決まっている印象だった井上。それに対して中西は、「『どうして私?』って思ってしまってるんですけど、この場所はすごく特別な場所だと思う」「このシングルが私と(井上)和のセンターで良かったって思ってもらえるように、とにかく頑張ります」と俯きながら話していたのが印象的だった。それは、中西が加入後まもなく経験した苦難と無関係ではないだろう。5期生として加入した直後、センターに大抜擢された中西。その後、アンダーメンバーとしての活動を通して自分の立ち位置を模索し続けた彼女にとって、今回のWセンターはまさに試練と成長の象徴とも言える。そんな中西が戸惑いながらも「良かったと思ってもらえるように」と前を向く姿勢には、これまでの経験を乗り越えてきた強さが垣間見える。
井上と中西は、常に互いにリスペクトし合い、成長を支え合い、時には比較されてきた関係でもある。井上が持つ王道的なアイドル性と、中西の表情豊かなパフォーマンスのあり方は対照的でありながら、それぞれが補い合うことで、乃木坂46の新たな時代を象徴するような組み合わせと言えるだろう。この関係性を象徴するかのような出来事が、昨年の『真夏の全国ツアー2024』東京公演Day3で起きた。井上と中西は5期生楽曲「絶望の一秒前」をサプライズでデュエットし、観客を驚かせた。井上の伸びやかな歌声と中西の情感あふれる歌唱が重なり合い、楽曲に新たな解釈を加えたあの瞬間は、多くのファンの記憶に刻まれたことだろう。
そして、彼女たちWセンターの2人の脇を固めるのが、遠藤と賀喜遥香という盤石の体制だ。今の乃木坂46において、この2人がどのような相乗効果を生み出し、どのような影響を与えるのか。その答えは、彼女たちのパフォーマンスとこれからの歩みによって明らかになっていくだろう。
2列目には久保史緒里とキャプテン・梅澤美波という経験豊富な3期生が揃っている一方で、ほかの5人は全員が5期生なのも興味深いポイントだ。5期生からは小川彩、川﨑桜、池田瑛紗、五百城茉央、一ノ瀬美空が2列目に選ばれた。五百城は1st写真集『未来の作り方』(小学館)が大ヒット、4月からスタートするドラマ『MADDER(マダー)その事件、ワタシが犯人です』(カンテレ/FOD)では連ドラ初出演にして初主演と絶好調であり、常に安定したパフォーマンスを見せている。強力なバックアップである3期生と、伸び盛りの5期生が融合することで、中列はグループの安定感と将来性を同時に体現する形となった。
3列目の冨里奈央と菅原咲月は、今作で選抜復帰を果たした。36thシングル『チートデイ』以来の選抜入りとなった冨里は、5期生楽曲「考えないようにする」と37thシングル『歩道橋』収録のアンダー楽曲「それまでの猶予」でセンターを務め、37thシングル期間で開催された『37thSGアンダーライブ』では座長として頼もしい姿を見せた。冨里の持ち味である清楚で穏やかな雰囲気に加えて、アンダーメンバーとしての経験を積んだことで表現の幅が広がった印象もある。今回の選抜でも重要な役割を果たしてくれることが期待される。
また、5期生楽曲「バンドエイド剥がすような別れ方」などでセンターを務め、繊細な表現力としなやかなダンスを見せてきた菅原は、昨年12月に副キャプテンに就任。今回の選抜発表で菅原が涙を浮かべながら「(前作では)近くで梅さん(梅澤)の背中を見られなかったのがすごく心残りだったので。今回は何か自分もグループのために何かできたらいいなと思うし、いろんなことを学んでいける期間にしたいなと思います」と語っていたように、今作でようやくキャプテンと副キャプテンが選抜に揃うことになる。経験豊富な梅澤を補佐しながら、菅原がどのようにサポート役としての使命を果たし、チームを支えていくのかという意味でも楽しみな選抜だ。