BUCK-TICKを形作る“ストイックな積み重ね” ちわきまゆみ、『バクチク現象 - New World -』から辿るバンドとの日々

櫻井敦司の振る舞いから見える“BUCK-TICKの信頼関係”

ーーこのドキュメンタリー映画はデビュー35周年を記録するものとして制作がスタートしたので、2022年の『BUCK-TICK TOUR THE BEST 35th anniv.』(全21公演)とそのファイナルの日本武道館公演、翌年の『BUCK-TICK TOUR 2023 異空 -IZORA-』とその最後を飾った地元の群馬公演までメインに追いかけています。1カ所のステージをまるっと収録するような作品とは全く違う角度でBUCK-TICKというバンドを見ることができますね。

ちわき:ツアーのリハーサル、セットも入れたゲネプロから始まって、だんだん皆さんの衣装とかがバージョンアップしていったり、櫻井さんが「後ろの映像見せてください」とか演出のチェックを細かくしていて、どう見えるかをすごく考えてるんだろうなと。そういえば『異空 –IZORA-』のインタビューの時に、日にち違いで『シルク・ドゥ・ソレイユ』を観ていたことが判明したんです。そういうところからステージの演出の参考になるものをと思って、ご覧になっていたんだろうなって。レコーディングは今井さんと星野さんにわりと委ねている感じで、歌入れでも今井さんからの指示を「はい」って聞いて歌ってる。けれどステージ演出では櫻井さんが前に出て頑張る、みたいなところがあったんでしょうね。アンコールを1回にするか2回にするかをミーティングしているシーンで、ビシッと「1回でいいと思うけどどうかな」みたいな感じでしたし、そういうところでの役割分担やバランスは自然とできたことなんでしょうけど、お互いに信頼し合っての作り方なんだなって。ツアー中は毎晩ステージのことばかり考えているとおっしゃっているシーンもありますけど、番組でも同じようにおっしゃっていたので、「このことだったのかな」とか「こういうことだったのね」と、答え合わせのように観ていました。

ーー櫻井さんが仲良しで、ちわきさんも親しくされていたDer ZibetのISSAY(2023年8月5日没)さんとのデュエットシーンもありました。アニイさんの還暦祝いライブ『Yagami Toll ~60th Birthday Live~ IT'S A NOW!2022』の時の映像ですが、あの場面はどんなふうにご覧になりましたか。

ちわき:2人ともすごく幸せそうなステージで、いいシーンです。デュエットでの相思相愛ぶりには思わずにやけました。お互いの愛情とリスペクトがほとばしっていて胸一杯でしたし、ある時、櫻井さんがこの時のツーショットをとっても嬉しそうな笑顔で見せてくださったことを思い出しました。

 いろんな方のものと一緒に当日、(ヤガミへの)バースデーメッセージを流すということで、私はアニイさんへのバースデーメッセージを事前に録音していて、「Happy Birthday to You」もちょっと歌ったら、皆さんのコメントの最後に使ってくれて。マネージャーさんが「歌われたら最後にするしかないじゃないですか」って……そんなつもりじゃなかったのに(笑)。

ーーISSAYさん追悼のためのトリビュートアルバム『ISSAY gave life to FLOWERS - a tribute to Der Zibet-』で、ちわきさんは「沈みたい」を歌っていますよね。

ちわき:はい、トリビュート盤の企画は2024年に入ってスタートしたんですけど、最初は取り上げる曲のリストに「沈みたい」が入っていなかったんですよ。私も大好きな曲だし、櫻井さんがお好きなのも知っていたので、この曲をトリビュートに入れられないかなと思って、「おこがましいけど私が歌ってもいいですか」と言って、歌わせてもらったんです。今頃ISSAYさんはジタンを燻らせながら、櫻井さんと浴びるほどお酒を飲んでるかな……。

バンドを続ける決断「ドキュメンタリーを観たら自然と今の彼らにつながる」

ーー映像は5人のBUCK-TICKを最後まで追いかけて、2023年の日本武道館公演『バクチク現象-2023-』に至ります。4人でステージに立った最初のライブではありますが、櫻井さんの映像とリンクさせた5人でのステージになっていましたね。

ちわき:私はとても素敵なライブだったと思います。きちんと正面からいろいろなものを受け止めて、ファンの皆様にちゃんと見てもらうという。次に進むにしても、あれをやらないと次に行けないよねということだったと思う。メンバーが一番辛いというセンチメンタルな気持ちがあったと思うけど、それ以上に櫻井さんの持っていたものとか、武道館でしかできないファンの人たちとのやり取りとか、そっちにフォーカスしたんだなと。BUCK-TICKのすごいところは、櫻井さんもそうだけど「ファンのためなら頑張ります」というのが常にあるんですね。櫻井さんも番組で「僕が喋ることで皆さんに楽しんでもらえるなら」という精神で。すべてがそうだったと思う。それは4人も同じで、だから櫻井さんだったらこうしてほしかったんじゃないかとイマジネーションを働かせて作ったステージだったから、素晴らしいライブだったのだと思います。櫻井さんの急逝発表直後に、今井さんがBUCK-TICKを続けるとおっしゃったのは、ここまで積み重ねてきたものを止めるほうがいけないと思ったんだろうなというか……櫻井さんがいた時の、これまでの日々に対して。そういう決断も、このドキュメンタリーを観たら自然と今の彼らにつながるという気がします。

BUCK-TICK/『バクチク現象-2023-』トレーラー

ーー『バクチク現象-2023-』ではお客さんがフルに入り、ドキュメンタリー映画で通して観ることで通常のライブの状態に戻った実感もありました。この映像作品は奇しくもコロナ禍でのアーティストの状況やライブの現場の変遷を捉えたものにもなっていると思います。

ちわき:2023年9月の群馬音楽センターの盛り上がりとかすごいですもんね。地元の熱い感じと、コロナ禍からみんなが解き放たれて、「キャーッ! と言っていいんですか」みたいな。このドキュメンタリーの最初の武道館では半分しかお客さんが入れられなくて、声も出せなかったんですよね。あのライブを観た後に、ビクター(エンタテインメント)の宣伝担当の方に「35周年の番組をやっていただけないでしょうか」とお願いしたんです(それがのちに『BUCK-TICK 櫻井敦司とくるみちゃんの部屋』になる)。それもあるから、なおさらこのドキュメンタリーではいろいろなことがリンクして、思い出すことが多いです。でも、『Ⅱ』のエンディングで流れる、今井さんが歌う楽曲「眩しくて 視えない」ですべてが救われる感じですね。ミディアムテンポで、忘れられない日々を友達に歌うという。『I』のエンドロールで流れるのは星野さんが歌う「フリーダム フリーダム パラダイスロスト」で、こちらはちょっとアップテンポな曲を星野さんが書いていて。この2曲はまさに今井さんと星野さんから櫻井さんへのラブレターのようですし、これからもバンドが続いていくんだなって思えるのはいいことだなと思います。

ーーこの作品を観て、改めてBUCK-TICKというバンドをどう思いましたか。

ちわき:すごく稀有なバンド。ヴィジュアル系の元祖とか言われてますけど、そんなに、そういう雰囲気の曲はないじゃないですか。音楽性もいろんな要素が入っていて、櫻井さんもロックボーカリストっぽくない表現もたくさん持っているので、毎回別世界に連れていってくれる本当に唯一無二のバンドだと思いました。同じ時代に彼らを観れたことで、すごく豊かにしてもらった。そして改めて、櫻井さんの圧倒的な存在感、オーラ。でもそこに甘えない謙虚な姿勢。もう、この世のものじゃなかったんじゃないか、神話に出てくる神みたいな存在がたまたま群馬に降臨して生まれちゃった……みたいな(笑)、そういう人なんじゃないかという気がしています。

ーーでは、この作品をご覧になる方々へ一言、お願いします。

ちわき:そんなに寂しくならないと思うんですよね。私たちが毎回ライブで観させてもらっていた、現実を離れた夢のような時間。「日常を忘れて楽しんでください」みたいなことを櫻井さんがおっしゃっていますけど、その裏側でバンドがやっていることを観たら、皆さんも少し元気になれるんじゃないかなと思うんですね。BUCK-TICKもすごく頑張ってるんだなって。だから自分も頑張ろうって、そういう気持ちになってもらえるんじゃないかと思うので、ぜひ観てほしいです。

◾️公開情報
『劇場版BUCK-TICK バクチク現象 - New World -』
全国限定ロードショー
日程:
2025年2月21日(金)『劇場版 BUCK-TICK バクチク現象 - New World - Ⅰ』上映
2025年2月28日(金)『劇場版 BUCK-TICK バクチク現象 - New World - Ⅱ』上映
出演:BUCK-TICK [櫻井敦司/今井寿/星野英彦/樋口豊/ヤガミ・トール]ほか
監督:岩木勇一郎
<TICKET> 
ムビチケ前売(オンライン)発売中
Ⅰ・Ⅱ単券 各3,500円(税込)
※チケット、上映劇場に関する詳細は映画特設サイトをご確認ください。
購入:https://bt-movie.love

◾️映像作品情報
Blu-ray&DVD『劇場版BUCK-TICK バクチク現象 - New World -』
2025年3月12日(水)発売
・Blu-ray完全生産限定盤(3Blu-ray+SHM-CD)/ VIZL-2426 / ¥19,800(税込)
・DVD完全生産限定盤(3DVD+SHM-CD)/ VIZL-2427 / ¥16,500(税込)
・Blu-ray通常盤(2Blu-ray)/ VIXL-479~480 / ¥12,100(税込)
・DVD通常盤(2DVD)/ VIBL-1175~1176 / ¥9,900(税込)

【完全生産限定盤収録内容(4枚組)[Blu-ray/DVD共通]】
DISC1(BD/DVD) : 『劇場版 BUCK-TICK バクチク現象 - New World - Ⅰ』
DISC2(BD/DVD) : 『劇場版 BUCK-TICK バクチク現象 - New World - Ⅱ』
DISC3(BD/DVD) : 『TOUR 2023 異空-IZORA- FINALO』
DISC4(SHM-CD) : 『劇場版BUCK-TICK バクチク現象 - New World -』テーマソング

【完全生産限定盤特典(Blu-ray/DVD共通)】
・スペシャルパッケージ仕様
・2023年9月18日に群馬音楽センターにて行われた『BUCK-TICK TOUR 2023 異空-IZORA- FINALO』のライブ映像作品を収録した映像ディスクを付属
・『劇場版BUCK-TICK バクチク現象 - New World -』のテーマソング2曲収録したSHM-CD付属
・フォトカード10枚付属

『劇場版BUCK-TICK バクチク現象 - New World -』テーマソング
M1.「眩しくて視えない」作詞・作曲:今井寿
M2.「フリーダム フリーダム パラダイス・ロスト」作詞:今井寿 / 作曲:星野英彦

『TOUR 2023 異空-IZORA- FINALO』
<収録曲>
SE. QUANTUM I
01. SCARECROW
02. ワルキューレの騎行
03. ICONOCLASM
04. 残骸
05. 愛のハレム
06. さよならシェルター destroy and regenerate-Mix
07. Campanella 花束を君に
08. THE SEASIDE STORY
09. 人魚 -mermaid-
10. 無限LOOP -LEAP-
11. Boogie Woogie
12. 野良猫ブルー
13. THE FALLING DOWN
14. 天使は誰だ
15. 太陽とイカロス
16. die
17. CLIMAX TOGETHER
18. Cuba Libre
19. Coyote
20. ヒズミ
21. 名も無きわたし
22. New World
SE. QUANTUM II

<通常盤収録内容(2枚組)>
DISC1(BD/DVD) : 『劇場版 BUCK-TICK バクチク現象 - New World - Ⅰ』
DISC2(BD/DVD) : 『劇場版 BUCK-TICK バクチク現象 - New World - Ⅱ』

◾️展示情報
『BUCK-TICK展2025』
開催日程:2025年2月21日〜3月9日
場所:シアターマーキュリー新宿(新宿マルイ本館8階)
詳細:https://buck-tick.com/feature/ss_exhibition_2025

◾️ツアー情報
『BUCK-TICK TOUR 2025 スブロサ SUBROSA』
2025.4.12(土)宮城:仙台GIGS OPEN17:00 START18:00 
2025.4.13(日)新潟:新潟LOTS OPEN17:00 START18:00 
2025.4.19(土)大阪:Zepp Osaka Bayside OPEN17:00 START18:00 
2025.4.20(日)愛知:Zepp Nagoya OPEN17:00 START18:00 
2025.4.26(土)広島:広島CLUB QUATTRO OPEN17:00 START18:00 
2025.4.27(日)福岡:Zepp Fukuoka OPEN17:00 START18:00
2025.4.29(火・祝)香川:高松festhalle OPEN17:00 START18:00
2025.5.11(日)北海道:Zepp Sapporo OPEN17:00 START18:00
2025.5.16(金)東京:Zepp Haneda OPEN18:00 START19:00
2025.5.17(土)東京:Zepp Haneda OPEN17:00 START18:00
2025.5.24(土)東京:豊洲PIT OPEN17:00 START18:00
2025.5.25(日)東京:豊洲PIT OPEN17:00 START18:00
チケット一般発売:2025年3月15日(土)
ツアー特設サイト:https://buck-tick.com/feature/specialsite_subrosa

【追加公演】
『BUCK-TICK TOUR 2025 スブロサ SUBROSA』追加公演
2025.6.7(土)群馬:群馬音楽センター OPEN17:00 START18:00
2025.6.8(日)群馬:群馬音楽センター OPEN17:00 START18:00
2025.6.14(土)大阪:NHK 大阪ホール OPEN17:00 START18:00
2025.6.15(日)大阪:NHK 大阪ホール OPEN17:00 START18:00
2025.6.19(木)東京:LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂) OPEN17:30 START18:30
2025.6.20(金)東京:LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂) OPEN17:30 START18:30
2025.7.2(水)東京:LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂) OPEN17:30 START18:30
2025.7.3(木)東京:LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂) OPEN17:30 START18:30
2025.7.8(火)東京:LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂) OPEN17:30 START18:30
2025.7.9(水)東京:LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂) OPEN17:30 START18:30
チケット一般発売日:2025年5月24日(土)
ツアー特設サイト:https://buck-tick.com/feature/ss_subrosa

BUCK-TICK OFFICIAL SITE
アルバム『スブロサ SUBROSA』特設サイト

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