Caravan、久々のバンド編成ライブを堪能 初期アルバム2作に光を当てた20周年記念『新年祭』
2025年2月2日、CLUB CITTA’でCaravanが毎年恒例のワンマンライブ『Caravan 20th Anniversary LIVE EXTRA 新年祭 2025 “RAW LIFE in the music”』を開催した。
昨年はドラムの椎野恭一、ペダルスティールの宮下広輔とのトリオ編成でのステージだったが、今年はそこにベースのCurly Giraffeこと高桑圭とキーボードの堀江博久が加わったフルメンバーである。Caravanのバンドでのライブがこのメンバーになってもう長いが、Caravan曰く、2024年はこのメンバーでのライブが1本もなかったという。アンコールの時、Caravanがメンバーに一言ずつもらった時、それぞれ口々に「今年はもっとやりましょう」と言っていた。
なお、昨年に続き、チッタのフロアは、前の半分が座席、後ろの半分がスタンディング。チケットに少し値段差を付けたが、座席の方が売れ行きがいい──と、このライブの前にリアルサウンドで行ったインタビューでCaravanは言っていたが(※1)、その言葉どおり、満席である。後方のフロアも、踊る人、歌う人、腕を掲げる人などで、いい感じに埋まっていた。
今回の『新年祭』は、2004年にインディーズリリースした最初のアルバム2作、『RAW LIFE MUSIC』と『Trip in the music』の曲を中心に演奏する、という趣旨が、前もってアナウンスされていて、だからその2作をくっつけたタイトルが冠されている。実際に演奏されたのは、本編15曲、アンコール2曲の計17曲で、内訳は、『RAW LIFE MUSIC』収録の10曲はすべて、全12曲収録の『Trip in the music』からは7曲だった。1曲目の「Trip in the music」から7曲目の「246」までをバンド編成。8曲目〜10曲目の「旅について」「Over」「Feed Back」はひとりで弾き語り。11曲目の「Think」から本編ラストの15曲目「Night Song」まで、再びバンド編成。アンコールは、「Slow Flow」をひとりで弾き語りしてからバンドを呼び込み、「Camp」で終了──という構成。
2曲目の「Folks」で、「よかったらご一緒に!」と呼びかけて、この日最初のシンガロングを起こした後のMCで、今は20周年の活動の真っ最中である、という話をするCaravan。『RAW LIFE MUSIC』をリリースしたのが2004年4月21日なので、その日まで20周年ムードを味わおうかなと思っている、その2作がこのタイミングで、初めてアナログ盤になったことも、とてもうれしい──と。
で、「コロナ飲んだ?」と問いかけ、今年の振る舞い酒であるコロナビールをメンバー全員で持って、オーディエンスと共に乾杯。
3曲目「Stay」から始まって7曲目「246」まで続くブロックでは、ちょっとしたハプニングが。「もう1曲、懐かしい曲をやりたいと思います」と始まった、5曲目の「Tripper’s Anthem」を歌い終え、拍手喝采を浴びたところで、Caravan、「今、何が起きたか……僕が1曲飛ばしました」。高桑圭が「どこで気がついた?」と問うと、「終わって、圭くんを見た時、微妙な顔してた」。オーディエンス、大笑い。「Tripper’s Anthem」は、Caravanのギターリフの独奏で始まる曲なので、メンバーが咄嗟についていくことが可能だったのだ、と思われる。というわけで、次は飛ばされた「Soul Music」を演奏。ミラーボールが回る中、曲の後半の、Caravanが敬愛するミュージシャンたちの名前をメロディに乗せていくゾーンで、大きな歓声が湧き上がった。
7曲目の「246」は、20年以上前に亡くなったという身近な人に、Caravanが捧げた曲。今日のCaravanはこの曲を、2024年2月27日に亡くなった植木真吾に捧げた。Caravanの全作品のアートワークを手掛けた、Caravanと同じ歳のデザイナーである。アウトロの「La La La La La Life goes on」のリフレインで、オーディエンスはCaravanと声を揃えた。
「初心に返って」と、ひとりで弾き語りで歌われた3曲(「旅の歌です」と言ってから曲に入った「旅について」、生で聴けるのはレアな「Over」、『RAW LIFE MUSIC』の1曲目で「何回歌ってきたかわかんないけど、その都度いろんな風景が自分の中で見えた、一緒に歳をとってきた相棒のような曲」と紹介された「Feed Back」)、後半のバンドのゾーンへ。
ここの5曲で特筆すべきパフォーマンスは、本編ラストの2曲、「ハミングバード」と「Night Song」だった。今回のような趣旨のライブに集まるファンの場合、というか自分もそうだが、普段ライブでやらないレアな曲を期待するものだ。逆に、普段いちばんよく歌われる曲=今日もっともレアじゃない曲が「ハミングバード」なわけだが、堀江博久のピアノの長い独奏にCaravanの奏でるあのギターが寄り添って曲が始まった時の、場の空気の変わりっぷり、ちょっとすごいものがあった。この場にいる大多数の人が、音源でもライブでも数え切れないほど聴いてきたであろうこの曲が、初めてこの場で世に放たれたような新鮮さを湛えて、ひとりひとりに届いている、そのさまが目に見えるように感じた。