AA=のライブが問い質す“ALL ARE UNITED”の真意と“平等”の形 ひとつの理想を築き上げたステージを見て

実にいろいろなことを考えさせられるライブだった。いや、実際に観ている最中というか、その場に渦巻く音に身を委ねている間は、むしろ思考などできる余地もないほどにのめり込んでいたはずなのだが、歌詞の断片やステージ上の上田剛士が発する言葉、刺激的な轟音の狭間のちょっとした静寂、視界の端に飛び込んでくる情景といったパズルのピースが、すべてを観終えたあとに自然に繋がっていくような感覚があった。
1月25日、渋谷・WWW Xで開催された『AA= LIVE THE NEXT』は、AA=にとって今年最初のライブであるばかりではなく、その公演タイトルからも“次”の動きに向けてのヒントが散りばめられたものになるのだろうと想像していた。そして実際、ライブの中盤には新曲が披露され、終演後には次なるアルバム『#7』が4月23日にリリースされるとの情報が告知映像を介して公開され、人で埋め尽くされたフロアからは歓びの声が上がっていた。そこで筆者自身の興味も“次”へと向かったことは間違いないが、同時に「AA=とは何か?」というシンプルな質問を改めて突き付けられたかのような感覚でもあった。

実はこの日、開演を待つ間もそんなことを考えていた。その発端となったのは、ステージの両脇に掲げられたフラッグに描かれていた“ALL ARE UNITED”という言葉だった。堅苦しく直訳すれば“すべてが結合”ということになるだろうが、“全員でひとつに団結しよう”といった標語のようにも受け取れる。そこで当然ながらAA=という名称が持つ“すべての動物は平等”という意味合いとの関連性について考えさせられるわけだが、さまざまな人たちがひとつになるうえでは、当然ながらそこで誰もが平等であることが不可欠だといえる。そこで重要になってくるのは、平等という言葉の意味するところだろう。それは、同じような者同士が同じような扱いを受けるということではなく、さまざまに多様な者たちがお互いを等しく尊重し合うことを指しているはずだ。そして、そうした関係が成立してこそ“ひとつになる”ことができるのだと思う。


そんな当たり前だけれども忘れてしまわれがちなことについて考えていると、いつの間にか開演定刻の午後6時になり、ほどなく会場内は赤い照明に染まり、オープニングSEが流れ、超満員のフロアは歓喜の声に包まれる。幕開けを飾ったのはドラムビートとメッセージのみによって成り立っている「BLUE & YELLOW」。青と黄色という色の取り合わせから、あの国を思い出さない人はいないだろう。そこで上田の口から“STOP THE WAR”という言葉が聞こえてくるのだから、なおさらだ。しかし彼はこの曲で戦争に中指を突き立てながら、実際にはピースサインを掲げ、フロアもそれに同調していた。世の中の不条理や納得のいかないことに対して悪態をつき、中指を突き立てるのは簡単なことだ。ただ、それだけでは何の解決にも繋がらないのに対し、そこに人差し指を添えるだけで平和を伝えることができる。ほんの少しの発想の転換が大きな違いに繋がり得ることを、そんなごく一般的なハンドサインが示しているように感じられた。


上田が「OK、渋谷。始めようか」と呼びかけると、「LOSER」が炸裂し、まさしくオーディエンスをひとつにしていく。次なる「GREED…」で音の洪水が激化すると、人の波の動きもそれに同調するように激しさを増していく。この曲も例外ではないが、AA=の楽曲は、どんなに激烈であろうとたいがい希望の光が差し込むような隙間が設けられている。それ自体が、当事者の考え方ひとつで絶望の闇から抜け出すことが可能になるということを示唆しているように感じられる。身体が勝手に踊りだすような「POSER」についても、シンフォニックともいえる響きとヘヴィネスが交互に訪れる「FIGHT & PRIDE」についても同じことが言える。しかも耳に飛び込んでくる歌詞の断片が、何らかの気付きをもたらすことが多々ある。どの曲のどんな部分で誰が何を見つけるかはその人次第だし、そこに正解があるわけではない。ただ、わざとらしく寄り添ってくるような歌詞に彩られた甘い音楽が心を素通りしていくのとは真逆のことを、彼らの音楽が起こしているのは間違いない。
