白上フブキ×Revo(Sound Horizon)異色の“二国間会談” 文化の壁も越える、音楽エンタメの面白さ

白上フブキ×Revo異色の二国間会談

Revoから白上フブキへアドバイス「続けていたら何かになるよ」

ーーRevoさんはSound Horizonで過去に用いた言葉やフレーズを、Sound Horizonを離れた楽曲でも用いることがありますが、これは他の楽曲がSound Horizonの地平線へ接続する余韻を残すような仕掛けなのか、それともこうした言葉選び自体がRevoさん自身の言語空間、ひいては作風であると捉えるのが自然なのか、ご自身としてはどちらに寄ってこういった表現を選んでいますか。

Revo:そういう仕掛けは入れようと思えばいくらでも入れられるんですが、入れることが目的になるのは絶対にダメだと思っています。それだけは強く戒めているので、自然と浮かんだら入れてみようという感じです。また、着地点として「聴いていて自然である」ということは大事にしたくて、そのうえで気づく人だけが気づいたら楽しい要素として考えています。

 ただ、今回はなるべくそういう仕掛けは入れたくなかったんです。それは多分、“国歌だから”だと思うんですよ。「国歌を作ってください」と頼まれたときに、明らかに自分の国の歌と共通するフレーズが入っていたら、それは人の国に対して失礼じゃないかと。「国歌ってそういうもんじゃないだろ」という風に思ったので、なるべくそういうことはやらないようにしたつもりなんです。探せばどこかにエッセンスはあるかもしれないですけどね。

白上:でもそのうえで、これはRevoさんの作った楽曲だということがめちゃめちゃ明らかですよね。初めて聴いた時、これは自分の曲なんだと思いつつも、やはり節々からRevoさんらしさというのを感じ取れて、それですごいニヤニヤしちゃったんですけど(笑)。本当にRevoさんにしか作れない音楽であるということを音にも歌詞にも強く感じたので、やはりRevoさんに頼んで、引き受けていただけてよかったなと思いました。

ーー詞のモチーフとしては、先ほどおっしゃられていた“星”や“星座”のほかに、“次元”という概念の扱い方が印象的でした。次元を増やしていく、次元を越境していくというストーリーが展開しますが、“次元”というモチーフとその取り扱い方も打ち合わせで決まっていったのでしょうか。

Revo:それは打ち合わせでは出てこなかったもので、多分僕の勝手な感覚なんです。そもそもフブキさんのようにご自身がVTuberだと、VTuberであることが当たり前だと思うんですよ。だからことさらに「“VTuberである私”を表現してください」とはおっしゃらなくて、FBKINGDOMというテーマに基づいた楽曲を依頼してくださったと思うんですが、こちらはもう一つ引いたところからその文化を見ているので、そもそもVTuberという存在がエモいし、VTuberが国を作ろうとしているというのもまたエモい。そんなことが起きているならそれを最大限入れ込みたいなと思ったんですよね。

 星って離れたところから見ると点に見えるじゃないですか。そう考えると、次元の話にもやっぱりなってくるなぁと思って。本当は離れている、3次元的には離れているはずのものが2次元で見るとすごく近くに思えたりとか、そういうことがVTuberと共通すると思ったので、浮かんだ時には「これしかないな」と。これが白上フブキの曲じゃなかったらまた違ったと思うんですが、一番星だったり五芒星だったりといったモチーフを持っている方だから、そういった背景も含めて考えるとこの国歌が、今の自分が考えうるなかで一番エモい表現かと思います。

ーー白上さんは、今Revoさんから伺ったVTuberについてのある種の解釈というのはどういう風に思われますか。

白上:本当にその通りだと、ずっと頷いていました。素敵な解釈だと思いつつ、自分もそういう存在でありたいなと。

ーー白上さんはたびたびTRPGの配信を行ったり、Revoさんも昨年のコンサートのドレスコードに“仮装”を用いたりと、お二人はいずれも演じることについて自覚的なアーティストだと思いますが、キャラクターを演じることについての面白さや難しさについて思うことがあったらお伺いしたいです。

Revo:人に言えるような立派な演技論があるわけでもないですが……人ってやっぱり“狭い”んですよね。自分というものでしかない。すべてのことを知ることはできないし、すべてのものになることもできない。だからこれは人の宿命で……“寂しい”という言葉が一番近いのかな。けれども何かを演じたり何かになったりできるというのは、その枠を広げることだと思うんですね。純粋に自分というものであることは素晴らしいんだけれども、それに疲れたりもするし、呪いにもなる。自分というものがどこまでもどこまでも、好きでも嫌いでもずっと付いてくる。そんな自分の枠を広げるということは可能性の追求でありながら、それ自体が癒しのような気もします。身体的表現としてそれが行われることを“演じる"と呼ぶんじゃないかと思いますが、精神の活動として言うのであれば、何かを観るとか聴くとか読むとか、そういう体験によって自分とは別の物語にコミットしていくこと、それ自体がひとりの人間の枠の限界を超えていく行為だと思うんですよね。

 そういう前提のもとに自身の演技、創作、エンタメを考えると、人の狭さや、孤独であること、そういうことを前提として認めたうえで、「それでも君は自分で思っているほどひとりじゃないし、世界は狭くもないんだよ」って語りかけるようなことを、やろうとしているんでしょうね。音楽表現というフィールドで。難しいけれど、エンタメとしても面白いのは確かなので。

白上:私は自分で何かを産み出して演じるということが本当に大好きで、ただそれも結局は、自分の持っている知識の中でしか言葉を発せなかったり、行動できなかったりする。それがすごくもどかしくて、もう1人別の頭脳を持った自分がいたらなぁといつも思っているんです。でもだからこそ色々学んだり、自分で産み出したキャラクターがもっと自分から離れた何かになってくれと願いながら演じさせていただくこともあったりして。もっと自分に知識があればとか、こういう人生を送っていれば……という悔しさもありつつ、演じることは楽しいし、知らない自分をまた知れるきっかけになるので大好きです。

ーー様々な世界を舞台にドラマを描いてきたRevoさんから、何か白上さんにアドバイスはありますか。

白上:おぉっ!

Revo:いや、ないよ!(笑)。そんな、偉そうに語ったりアドバイスをしたりなんてことは。ただ……歴然たる事実として「続けてきた」ということがある。今、デビューして20周年で、20年続けてきた人間として言えるのは、「続けよう」ってことだけなんだよね。必要なことはそれぞれ違うだろうけれど、必要なら何かのタイミングで身につけるだろうし、「続けていたら何かになるよ」に尽きると思います。本気で願うなら国だってできるし、腕だって動く(笑)。

白上:続けていきます、会社が倒産するまでは! カバー株式会社がなくなるまでは白上フブキはここに立ち続けようと、改めて思いました。

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