JUVENILE×KIM DO GYUN(82MAJOR)が語る世界を繋ぐ“音楽の力” グローバルコラボの経緯、制作秘話に迫る
“From Tokyo To The World”というスローガンを掲げて活動するDJ・音楽プロデューサーのJUVENILEが2025年、自身の音楽を世界へ発信するグローバルプロジェクトを始動させた。彼は1月24日、プロジェクトの第一弾として「Letter feat. KIM DO GYUN(82MAJOR)」をリリース。2023年10月にデビューし、わずか1年足らずで米・ビルボードへのチャートインを果たした新進気鋭のK-POPボーイズグループ・82MAJORのメインボーカルであるKIM DO GYUNとのコラボレーションを実現させ、“この冬最大の失恋ソング”を世に放った。
これまでにもTeresa、DAZBEE、Liyuu、OoOoなど数多くのアーティストと楽曲を生み出してきたJUVENILE。今回どうして、世界の音楽ファンから熱い視線が注がれている82MAJORのメンバーとの楽曲制作が叶ったのだろうか。その背景やレコーディング時のエピソード、KIM DO GYUNが書き下ろしたという歌詞の制作秘話などについて、たっぷりと語ってもらった。(市岡光子)
現在の活動とコラボレーションの経緯
——まず、お二人の活動の現在地を教えてください。
JUVENILE:僕は今、“From Tokyo To The World”をコンセプトに掲げながら、DJ/アーティスト、音楽プロデューサーとして活動しています。これまで、ガールズユニット・HUNNY BEEのリコ、小柳ゆき、鞘師里保、Teresa、DAZBEE、CIKIなど、国内外の多彩なアーティストとコラボレーションして楽曲を発表してきました。その取り組みを発展させ、今年は国境を超えて様々なアーティストとコラボレーションし、世界に音楽を発信するプロジェクトを本格始動させます。その第一弾として実現したのが、今回のK-POPボーイズグループ・82MAJORのメンバー、KIM DO GYUNくんとのコラボレーションなんです。
——JUVENILEさんは、そもそもなぜ“From Tokyo To The World”を掲げているのでしょうか。
JUVENILE:このコンセプトは2020年にソロ活動を始めてから掲げ続けているもので、僕が住んでいる東京や日本に視野を狭めるのではなく、最初から世界を見据えて、世界の人に届く音楽を作ろうという意識を言葉にまとめたものです。とはいえ、何かすごく特別なことをしているわけではありません。今の時代、YouTubeやTikTok、Spotifyなどのプラットフォームを通じて、日本発の音楽が世界中どこでも聴けるようになったので、日本のリスナーだけでなく世界のリスナーにも気に入ってもらえるような、自分でも納得のいく“良い音楽”を作ろうと意識している形です。
僕の曲の特徴としては、歌詞の言語が多様であるという点が挙げられるかもしれません。今作の歌詞は韓国語を使った部分がありますし、以前は中国や台湾出身のアーティストとコラボして、中国語詞の楽曲をリリースしたこともあります。日本の音楽プロデューサーが中国語の楽曲を出した例はあまり聞いたことがないので、僕のコンセプトを象徴する取り組みだと思いますね。でも本当に、すごく高い意識を持っているとか、高尚なことをしているわけではなくて。あくまでも自然体で取り組んでいます。
——DO GYUNさんは、2023年10月にデビューした82MAJORのメインボーカル。グループは昨年、デビューからわずか1年で米・ビルボードチャートにランクインして話題を集めました。
KIM DO GYUN:ビルボードチャートにランクインしたことは、とても嬉しかったです。グループとして、楽曲のリリースやライブなど、様々な活動に懸命に取り組んできました。世界のファンのおかげだと思っているのでとても感謝しております。
——お二人とも普段はまったく異なる場所で活動していますが、コラボレーションの実現にはどのようなきっかけがあったのでしょうか。
JUVENILE:個人的にK-POPが大好きでよく聴くのですが、僕は以前から、独自路線を追求する面白いグループとして82MAJORに興味を持っていたんです。今回、グローバルプロジェクトを動かすにあたって、どんな人とコラボレーションできるかを考えていた時、ふと思い浮かんだのが82MAJORでした。彼らとのコラボはどうだろうかとマネージャーさんに相談したところ、事務所と繋がりがあるという話になったので、そこから具体的な話が進んでいきました。
KIM DO GYUN:コラボレーションのお話をいただいた時は、JUVENILEさんと一緒に音楽を作れるということがとても嬉しくて、光栄に思いました。プロジェクトを始めるにあたって、JUVENILEさんが僕たちのライブを日本と韓国で2回も観てくださって、本当にありがたく思っています。日本公演ではあまりお話ができませんでしたが、韓国公演の後にたくさんお話をすることができました。
JUVENILE:2024年の夏頃だったかな。ライブ終わりに、82MAJORの事務所に伺ったんです。移動中の車内で翻訳アプリとSpotifyを使いながら、DO GYUNくんとお互いのこれまでの実績や好きな曲について話したのを思い出しました。
KIM DO GYUN:あの時に聴かせていただいた「Vintage Record.」というJUVENILEさんの楽曲は、とても気に入りました。逆にJUVENILEさんも、僕がカバーした楽曲を好きだと言ってくださって。JUVENILEさんと僕は普段の活動で展開する音楽の方向性が大きく異なっていますが、じっくり話をしてみると、実は音楽的によく似た好みや感覚を持っていることがわかりました。今回のプロジェクトはきっと良いものになると直感しましたね。
歌詞の世界観はDO GYUNのアイデアから
——楽曲の方向性はどのように決まったのでしょうか。
JUVENILE:大きな方向性は、82MAJORの事務所で話をしたときに決めていました。順当にいけば冬にはリリースできる見込みがあったので、“冬にピッタリな楽曲”という指針がまず定まって。そこから曲調を考えていったのですが、僕が普段からゆったりとしたテンポの楽曲を作っていること、DO GYUNくんがソロで挑戦したいものの1つにバラード曲があったことから、“冬にふさわしいバラード”というテーマで制作することが決まりました。
——2024年夏に方向性が決まってから、2025年1月には楽曲がリリースされています。非常に速いスピードで楽曲制作が進んだのですね。
KIM DO GYUN:僕もこんなに早く楽曲が出せるとは思っていなかったので、びっくりしました。
JUVENILE:僕はいつもこんな感じで、駆け抜けるように生きてます(笑)。
KIM DO GYUN:(日本語で)素晴らしい(笑)!
——「Letter feat. KIM DO GYUN(82MAJOR)」は、かつての恋人を想う切ない心境を叙情的な言葉で表現した歌詞が印象的です。歌詞の制作エピソードについても、教えていただけますか?
JUVENILE:この歌詞の世界観は、DO GYUNくんのアイデアです。コラボするからには彼の意見や考えを曲の中に取り入れたかったので、トラックができた9月下旬の段階で、DO GYUNくんにメールで歌詞のテーマについて相談しました。恋愛要素を入れるかどうかが大きな分かれ道だったのですが、DO GYUNくんから「恋愛を主題とした歌詞はほとんど書いたことがないけれど、誰かを想う気持ちを表現してみたい」と返事があったことで、恋愛ソング、失恋ソングが楽曲のコンセプトに決まって。その後、DO GYUNくんに歌詞の原案をハングルでまとめてもらって、その一部を日本語に意訳する作業を経て完成したのが、現在の歌詞です。
KIM DO GYUN:作詞を任せていただいて、すごく嬉しい反面で責任重大だなと感じました。恋愛を描いた歌はやはり、リスナーの皆さんの心に響く歌詞になっていなければいけません。ただ、一口に恋愛や愛情といってもいろいろな表現の仕方がありますから、今回の楽曲ではどのような物語を描き、どのような言葉を使うべきか、本当にたくさん悩みました。
——最終的に「失った恋人を求める心境」を描こうと思ったのはどうしてですか?
KIM DO GYUN:曲のメロディに触れる中で、愛していた恋人が自分のもとから去ってしまった主人公の姿が思い浮かんできたんです。元恋人への気持ちを完全には断ち切れずにいて、心の中にぽっかりと穴があいたような、大きな寂しさを抱えている。そういう人物の物語がこの曲にはふさわしいのではないかと思ったことで、歌詞の世界観や使う言葉が定まっていきました。
——DO GYUNさんが韓国語で書いた歌詞の一部を日本語に置き換えていく作業は、JUVENILEさんがご自身で行われたのですか?
JUVENILE:僕がやりました。 DO GYUNくんが歌詞に込めた意図を変えないように、それでいてシンプルな余韻のある日本語の歌詞になるように細心の注意を払いながら言葉を選んでいったので、翻訳の作業は結構大変でしたね。でも、うまく歌詞をまとめることができたんじゃないかなと思います。そういえば、DO GYUNくんに1つ聞いてみたいことがあって。今回作ってくれた歌詞は、元彼女が別れを告げた手紙に対する“アンサー”であるように感じたのだけど、その解釈で合ってる?
——歌詞の中に〈サヨナラの夜に渡されたポケットの手紙〉とありますね。
JUVENILE:そうなんです。その部分はDO GYUNくんが最初に作ってくれたハングルの歌詞の中でも特に印象的だったので、言葉をほとんど変えずに現在の歌詞に残しているのですが、実はもともと歌詞の冒頭で「手紙一枚で私のもとを去ってしまったあなた」という表現もあったんですよ。直接話すことなく、手紙だけで別れを切り出されてしまった主人公が、冬になってからポケットの中にしまい込んでいた別れの手紙を改めて読んでみて、元彼女の想いに返事をしている……そんな歌詞なのかなと思ったのですが、DO GYUNくん、どうですか?
KIM DO GYUN:そういう解釈もできますね! 僕としては、主人公が一人きりで元恋人を想うストーリーが一番のポイントだと考えていたのですが、JUVENILEさんが再解釈してくださって新鮮な発見がありました。手紙のくだりはたしかに、この曲の性格が一番よく表れていますね。(日本語で)素晴らしいです!
JUVENILE:よかった、結果オーライですね(笑)。