杉山清貴、変わらぬ歌声が彩る極上の空間 熟練バンドと届けたツアー『古いシネマを観るように、、、』

杉山清貴『古いシネマを観るように、、、』レポ

 その後、堀川の映画紹介では岩井俊二監督の『Love Letter』(1995年)を紹介。実はこの映画は、堀川の姉が音楽を担当したという。そんな意外な事実も明かされたところで、堀川が作曲し、杉山が作詞した「Yokohama north dock」を披露。

 杉山の歌は各楽器とよく絡み合う。とりわけサックスとの相性は抜群で、次の「サマー・ムーン」における杉山の歌声からサックスのソロへと移る場面は、なんとも表現しがたい美しさがあった。

杉山清貴『Sugiyama Kiyotaka Concert Tour 2024「古いシネマを観るように、、、」』(撮影=インテツ)

 続いて西脇が映画を語るターン。西脇は『ウエスト・サイド物語』(1961年)を選び、劇中の「Tonight」からいつの間にか映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のテーマになっているという芸をやってみせて、会場が笑いに包まれた。

 ライブ後半は「Nightmare」、「Night Bird」、「月に口づけ」と夜にちなんだ楽曲から続いていった。曲中には照明が一層暗くなり、ステージ上のライトが点灯したり、バックスクリーンに大きな月が映ったりと、視覚的な演出も見られた。その後の映画を語るコーナーでは、住友からティム・バートン原作の『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』(1993年)が紹介された。

杉山清貴『Sugiyama Kiyotaka Concert Tour 2024「古いシネマを観るように、、、」』(撮影=インテツ)

 ここで杉山から「次は夏を感じてもらおうかと思います」とひと言。披露したのは「あの夏の君と」、「夏服 最後の日」、「long time ago」の夏曲3本立て。映画のようなライブだからこそ、こうした季節外れの楽曲もぴたりとハマる。外は肌寒い真冬の空気だが、この空間だけは真夏の爽やかな風が吹いていたような気がした。ラストは「さよならのオーシャン」を熱唱。会場総立ちで拍手喝采のなか、本編が終了した。

 「普段はやらない楽曲を引っ張り出してきた」というこの日。杉山が「一曲一曲、映画のようにシーンが見えてくるようなライブ」と話していた通り、ライブそのものが映画のようにシーンが切り替わっていく感覚があった。アンコールでサンタの帽子を被って登場して笑いを誘う一幕もあり、その茶目っ気が長く愛される秘訣なのかもしれないと感じる。そして、2時間の公演で疲れを一切見せず、むしろ歌いながらどんどん元気になっている杉山の姿に、こちらもエネルギーが漲ってくるようなコンサートでもあった。

杉山清貴『Sugiyama Kiyotaka Concert Tour 2024「古いシネマを観るように、、、」』(撮影=インテツ)

■セットリスト
01. Too good to be true
02. She(エルヴィス・コステロ カバー)
03. 風が止んでも
04. プリズム・レインに包まれて
05. PARK SIDE ROMANCE
06. Rainy Day in New York
07. Yokohama north dock
08. サマー・ムーン
09. Nightmare
10. Night Bird
11. 月に口づけ
12. あの夏の君と
13. 夏服 最後の日
14. long time ago
15. さよならのオーシャン
EN1.  最後のHoly Night

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