田原俊彦「一発ヒット曲が出れば80歳まではやれる」 加齢やキャリアによる“重さ”はいらない、エンターテイナーとしての美学

キャリア45年、でも「毎回毎回、この一回が勝負だって思っている」

ーー今、お話にあったように、WOWOWでは、12カ月連続の田原俊彦さん特集の第一弾として、10月27日に山梨は甲府、YCC県民文化ホールで行われたライブの模様をオンエアすることが決定しています。実は僕も、その公演を現地で拝見していて……。

田原:観に来てくれましたか。どうでした? 面白かったでしょ(笑)。

ーーはい(笑)。田原さんの相変わらずのエンターテイナーぶりはもちろん、会場の雰囲気も含めて、すごく楽しいライブでした。

田原:まあ、山梨というか、その甲府公演は、凱旋公演じゃないけどーー甲府というのは、僕が10代を過ごした、思い出の故郷なんですよね。結構大きい会場だったから、満杯になるのかちょっと心配だったんだけど、甲府にいるおふくろが、親戚や知人をかき集めてくれたみたいで(笑)。

ーー(笑)。

田原:もちろん、ファンの方々も全国から足を運んでくれたというか、うちのファンクラブとかでも、その日はWOWOWのカメラが入るから「みんなで盛り上がるぞ!」って前振りをしていて。だから、お客さんも気合いが入っているというか、そういうつもりで集まってくれたんじゃないかな。そう、今回カメラを入れるなら甲府がいいんじゃないかって、僕のほうから言ったんだよね。「甲府で撮ろうぜ!」って。

ーーそうだったんですね。それはどんな理由で?

田原:凱旋公演のほうが、ちょっとスペシャル感が出ていいんじゃないかなって思って(笑)。いつもは東京で撮ることが多いんだけど、今回の東京2DAYS公演は、ツアーの前半戦の終わりぐらいだったんですよね。だったら、終盤の甲府のほうが、スケジュール的にも10月の末だし、ツアーも熟成されて、良い感じになっているんじゃないかと思って。やっぱり、映像を撮るときって、僕も緊張するし、すごく気を遣うんですよ。あんまり歌詞を間違えちゃいけないとか(笑)。

ーー(笑)。

田原:ダンスだけじゃなくて、ピッチに気を付けたりとか、歌のほうにも、ちゃんと比重を置くようにして(笑)。でも、すごく良いライブになったんじゃないかな?

ーー良かったです。田原さんの故郷・甲府ならではのアットホームな雰囲気もあって。

田原:うん、そういう感じはあったかもしれない。甲府でやったのは、5年ぶりとかになるのかな。毎年ではないけど、周年のツアーのときには、なるべく行くようにしていて。まあ、おふくろが生きているうちに、ガシッと見せなきゃいけないので(笑)。あと、僕はお姉ちゃんが2人と妹ひとりいるんだけど、彼女たちもみんな観に来てくれて……その子どもたちもいたかもしれない。

ーー田原さん自身としても、いろいろと感慨深いライブだったんですね。

田原:そうですね。でもまあ、もう長いことやっているから(笑)。というか、ライブに関しては、この日に限らず、毎回毎回、この一回が勝負だって思っているんです。「また絶対、観に来させるぞ!」っていう強い気持ちで毎回やっているというか、冗談ではなく命懸けで挑んでいるようなところがあって。そうじゃないとお客さんに対して失礼だし、僕のファンの人たちには、全部見透かされちゃうんですよね。

 なので、毎回真剣勝負というか、僕のコンサートのあいだは、みんなに良い夢を見て欲しいなって思いながらやっているようなところがあって。ひとりも残さず、全員良い気持ちで帰って欲しいなっていうのは、いつも思っていることなんですよね。ただ、コンサートに来たくても、いろんな事情で来られない人っていうのも、やっぱりいるわけじゃないですか。だから、こういった形で、その映像をいち早く放送してもらえるのは、ホントありがたいことだなって思っています。

ーー曲もアップテンポなものばっかりでしたし、ダンスも相変わらずカッコ良くて、ちょっと驚いてしまいました。

田原:でしょ? たまに「えっ。トシちゃんって、まだ歌ってるの?」とか言われることもあるけど、ナメないでほしいなっていう(笑)。でも、不思議なもんでさ、普段はホント、何もしてないのよ。ジムに行ったりもしてないし。もちろん、ステージ前は、念入りにストレッチをやって、関節を全部緩めたり、全部の筋を伸ばしたりはしているけど、普段はホント、何もしてないんだよね。最近ちょっと、歩いたりはしてるけど(笑)。

ーーそれ、MCでも言っていましたけど、本当なんですか?

田原:ホント、ホント。ヤバいよね(笑)。それなのに、なんであんなすごいステージができるのか……それは僕にもわからないんだよ(笑)。ただ、ひとつ思うのは、それは「田原俊彦」だからできるってことであって。それはヘンな意味ではなく、もう本当に長いこと、僕は「田原俊彦」として、毎年毎年ステージをやってきているわけですよ。リハーサルとかも含めて、年間100日ぐらいは、必ず身体を動かしていますから。3日に1回は、踊っているみたいな(笑)。そういう生活を、もうずっと続けていて……だから、今もこうして、なんとかやっていられるんじゃないかな。

ーーそれにしても、本当に軽やかなステージで……そう、良い意味で「重さ」が全然ないんですよね。思わず「トシちゃん!」って声を掛けてしまいそうな「軽やかさ」があるというか。

田原:ああ……重いのって、好きじゃないんだよね(笑)。このステージをやるために、日々これだけの努力してきましたとか。そんなことよりも、良いショーを観せてナンボだっていうか、軽やかな感じで颯爽とステージに登場して、いきなりすごいショーをやるっていう(笑)。

ーーそこは、ある意味「田原俊彦の美学」ですよね……。

田原:まあ、大概ふざけてるんだけどね(笑)。

ーーいやいや(笑)。人間、年を重ねていくと、どうしても「重さ」が出てしまうというか、良くも悪くも、まわりからそう見られがちじゃないですか。

田原:ダメだよ、「重さ」なんて出したら(笑)。

ーーそこが、とても頼もしいというか、すごく心強く感じました(笑)。

田原:(笑)。そう、さっき男性のお客さんが増えたっていう話をしたけど、男性のお客さんの感想でいちばん多いのは、「勇気と元気をもらいました」とか「自分も頑張ろうと思った」とか、そういう感想で……僕のステージが、そうやってみんなの励みになっているなら、それはそれですごく嬉しいことだよね。もちろん、女性たちも、そんなふうに思ってくれているみたいで……まあ、僕はやっぱり「アイドル」ですから(笑)。

ーー「アーティスト」ではなく「アイドル」……というか、ツアータイトルにも銘打っていましたけど、田原さんは「KING OF IDOL」ですもんね(笑)。

田原:そうそう。って、自分で言わせないでよ(笑)。まあ、基本的には大笑いしているから(笑)。でも、それで生きていけるわけだから、環境的にはすごく恵まれていると思いますよ。

関連記事