「Lonely voyage」では、真音ちゃんの存在をすごく近くに感じていられる

ーー「Lonely voyage」について、聞いてもいいですか？

南條：まぁ、どうしたって（黒崎）真音ちゃんのことを思い浮かべちゃいますよね。真音ちゃん自身も悲しいお別れを経験して、きっと乗り越えられたわけじゃないけど、ファンのみなさんの前では笑顔でいて。そんななか、自分の活動で吐き出しにくかった想いを、私に託して、そして教えてくれたのがこの曲だと思っています。

ーー今回の映像でも、特に大サビ以降の部分からよく伝わりますが、南條さんの歌い方が普段と変わるんですよね。こう、熱がこもると言いますか……。

南條：この曲を歌っているときは、悲しくて寂しいけれど、それでも真音ちゃんの存在をすごく近くに感じていられて。真音ちゃんがいなくなっちゃって、彼女から託された想いと、私自身が一緒に過ごした思い出はもちろん。それに合わせて、真音ちゃんのファンのみなさんが、彼女と過ごした思い出もまた、この曲の歌詞には乗っている気がするんです。

ーーなるほど。

南條：だからこそ、この曲を歌うときには、真音ちゃんのことを変に隠すことはせず。むしろ彼女のことを思い出して、みんなにも同じ気持ちに浸ってほしいなと願っています。

ーーそれほど強い想いが宿った曲だけに、披露すると決めるにも勇気が必要だったのでは？

南條：それでもこの10年間を振り返る上で、真音ちゃんの存在を欠かすことはできなかったので。なによりこの曲の歌詞では、自分の目を通して、そこで見た景色を“あなた”に伝えるんだと歌っていて。私もまた歌を通して、真音ちゃんの気持ちを代弁するというより、私が見た景色を彼女と、彼女が見せたかった人に届けていきたいと思っているんです。そうした意味で大きな責任が伴う曲ですが、これからも大切に歌っていきたいですね。

ーー本当に素敵な曲なので、私もずっと聴いていきたいです。

南條：……あ、思い出した。たしか私、この曲を歌った後のMCで「私にも伝えたいと思う人ができて」なんて話をしていましたよね？

ーーしていましたね。

南條：あの場で真音ちゃんの名前を出すのも無粋だし、みんなの心のなかでその名前を思い浮かべてくれれば、という意図だったのですが……私、結婚とかしないですからね（笑）。

ーー（笑）。

南條：伝わる前提で話してしまったものの、結果的に要らぬ誤解を生んだらしく（笑）。いや～、主語って大切。ライブに来ていた従姉妹からも、終演後に「あんなMCしてビックリしたよ！」なんて言われちゃいました。1年越しにはなりますが、この記事でしっかりと誤解を解かせてください！

ーーここは絶対に書き残しておきますね（笑）。“Memories”の話題を締めるべく、最後に「カタルモア」についてもお願いします。歌唱前には、まだ音楽活動を始める前の南條さんが、作家のしほりさんに悩み相談をし、その内容が歌詞に反映されているお話がありました。実は先日、南條さんの事務所の後輩にあたる前島亜美さんに取材をしたところ、今年11月にソロアーティストデビューをするにあたり、南條さんに作詞の手解きを受けたという、なんとも似たような話を耳にしまして。

南條：亜美ちゃんから聞きましたよ（笑）。私は当時、書き出した言葉を添削のように選んでいく形で、しほりさんに歌詞を作っていただきましたが、亜美ちゃんは自力で作詞をしていて。なんというか、亜美ちゃんには過去の自分とだぶって見えるところがあるんですよね。それと、私自身が幼い頃から、親戚のなかでも年上として振る舞うことが多かったせいか、“1”を聞かれると“10”を答えたくなっちゃうんです。だから大丈夫だったかな。相手からしてみればたぶん……うざいかも（笑）。

ーーあくまで親切心ですよね！

南條：そう伝わっていたらいいな（笑）。私がミニアルバム『カタルモア』を制作していた頃は、“本当はこうしたい”という想いを抱えてすごく悩んでいて。自己主張をしすぎて、周囲から面倒くさいと思われてしまったら、やっとの想いで始められたソロワークだとしても、すぐに終わってしまう可能性だってあるわけじゃないですか。

ーーお気持ちはよくわかります。

南條：このタイミングだから明かしますけど、そうして出来上がったのは、自分と周囲の意見が中途半端にまとまった『カタルモア』でした。リリース当初は、支えてくださる方々に“聴いてください！”と、素直な気持ちでお渡しできなかったのが本音です。自分のなかでやりきれた想いを持てなかったから、ちょっと苦い1枚なんですよね。でも、いまはそんな思い出も含めてかわいいし、愛おしいと思える1枚になりました。

ーー最後の言葉はまさしく、南條さんから教えられたものだと、前島さんもうれしそうに話していましたよ。それではもし、今回のライブ映像作品を『カタルモア』リリース当時、28歳の自分に見せたら、どんな顔をすると思いますか？

南條：え～、度肝を抜かれるのかも（笑）。もしくは、“へぇ～、こんな曲を出すんだ”って呟きながら、まじまじと見つめて、安心したりするのかな？　いや、当時の自分にはないものがあって、嫉妬しちゃうと思う。

ーーあくまで感動するわけではないのですね。

南條：あまり素直な性格じゃないから、内心はめちゃめちゃ喜んでいたとしても、未来の自分と対面して渡されたら、きっと嫉妬してくると思います。でもたしかに、どんな反応をするのか想像すると面白いですね。目の前で煽りたくなっちゃうかも。“うぇ～い”って言いながら、盤をチラつかせてやろうかな（笑）。