櫻坂46、“個の確立”を強く打ち出した4周年ライブ 現在のフェーズで結果を残し、限界を超えた2日間
松田と井上梨名のオリジナルメンバーで披露されるのも久しぶりだった「On my way」や、本ライブが初パフォーマンスとなった「今さらSuddenly」といった選曲、そのあとに「ブルームーンキス」「思ったよりも寂しくない」「最終の地下鉄に乗って」といったムーディーな楽曲が並ぶのも、今年の『アニラ』の特徴と言える。序盤の「何歳の頃に戻りたいのか?」や「BAN」以外は、後半戦まで彼女たちらしい激しく攻めるダンスナンバーは控えめで、どちらかといえば柔らかさが伝わる楽曲が多く用意された印象が強い。
しかし、そうしたナンバーを通じて伝わったメンバーの“個”も確実に存在しており、今回のような緩急の付け方ができるようになったことで櫻坂46のメンバー層の厚みを今まで以上に実感することもできた。そう考えると、昨年の『アニラ』で提示された“グループとしての多様性を含むオリジナリティを確立させる”という課題もついに今年でひとつ結果を打ち出すことができたのではないだろうか。
だからこそ、「Start over!」から始まる攻めの後半戦はより強く響くものがあった。DAY1の時点から強烈な構成だと感じていたが、DAY2は前日以上の気迫が加わり、観ている側も息をするのを忘れそうになるほど見入ってしまう瞬間が多々あった。「Start over!」ではかつて土生が担った支柱的役割を村山が担い、小林由依のパートに村井が入ることで、初期のオリジナルに近いフォーメーションで展開。そこから昨年の『アニラ』を踏襲する演出の「静寂の暴力」へと繋ぐという、動と静の対比が際立つ並びも実に櫻坂46らしい。
そして、「マンホールの蓋の上」以降の怒涛の畳み掛けは圧巻の一言で、本編ラストを飾る異端の1曲「I want tomorrow to come」で櫻坂46が作り上げるひとつの物語は幕を下ろす。もはや音楽ライブの域を超え、1本の映画か演劇作品かと錯覚するような激怒の2時間強は、櫻坂46だからこその個性だと断言したい。
この完成された物語があるからこそ、アンコールの「Buddies」や「櫻坂の詩」ではホッとした空間を心の底から満喫することができる。これは観る側のみならず、演者側も同様なのだろう。ライブ本編以上にリラックスした笑みを浮かべるメンバー、観客の声援に涙するメンバーなど、彼女たちが素に戻る瞬間も多々目撃でき、MCでは本編ラストの「I want tomorrow to come」で圧倒的なパフォーマンスを見せたセンター山下が、緊張の糸が切れたかのように涙をこぼす場面もあった。プロとしてステージに立つ者と、等身大の少女としての姿、その両方を目にすることで、我々は櫻坂46という存在にどんどん惹きつけられていくのだと、この日改めて実感することができたのも筆者にとっては大きな収穫だ。
2024年は前年以上にライブの数が多かった櫻坂46だが、それがすべていい方向に作用し、迷いのなさを見せつけたのが『4th YEAR ANNIVERSARY LIVE』だった。ある種、ウィニングランのような2日間を経て、グループはスピードを緩めることなく、まだまだ前進を続けていく。充実の1年を経て、また新たなフェーズへと突入するであろう2025年はどんなトピックで我々を楽しませてくれるのだろう。奇しくも2025年は櫻坂46の5周年であると同時に、前進グループ・欅坂46の結成10周年という大きな節目を迎える。そんなタイミングだからこそ、我々の想像を遥かに超えるような活動で楽しませ、あるいは驚かせ続けてくれることを願ってやまない。
■櫻坂46『4th YEAR ANNIVERSARY LIVE』
2024年11月24日(日)@ZOZOマリンスタジアム
<セットリスト>
M0.Overture
M1.ドローン旋回中・Anthem time
M2.嵐の前、世界の終わり
M3.何歳の頃に戻りたいのか?
M4.BAN
M5.一瞬の馬
M6.本質的なこと
M7.TOKYO SNOW
M8.桜月
M9.標識
M10.On my way
M11.今さらSuddenly
M12.ブルームーンキス
M13.思ったよりも寂しくない
M14.最終の地下鉄に乗って
M15.Start over!
M16.静寂の暴力
M17.マンホールの蓋の上
M18.もう一曲 欲しいのかい?
M19.承認欲求
M20.自業自得
M21.I want tomorrow to come
EN1 Buddies
EN2 櫻坂の詩
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