三四少女、ポップミュージックにおける“削ぎ落とす”ことの美学 「“すごい”で止まってしまうなら意味ない」

「もっとシンプルで無骨なものでいい」(たみ)

たみ

ーーあんどりゅーさんは、バンドをやりたいという気持ちはそもそもあったんですか?

あんどりゅー:(キッパリと)まったくなかったです。

一同 (笑)

あんどりゅー:100分の1くらいの気持ちしかなかった(笑)。そもそも僕も普通に仕事をしていて、3カ月に1回くらいスタジオに入って気晴らしにって感じで、趣味でドラムを叩いていたんです。で、高校時代の友達がさっちゅーと専門が一緒で、そこでつながって趣味でコピバンをやるようになって、その流れで三四少女に入ることになったんです。ただ、仕事も調子がよくて昇進とかもしていたし、最初は三四少女にも息抜き程度に入った感じでした。そのままぬるっと行きまして、今はすごくバンドを頑張っています(笑)。

ーー(笑)その「ぬるっと」の中にはどういった変化があったんですか?

あんどりゅー:初ライブのときに「めっちゃ楽しいな」と思ったのも大きかったし、「シュガースーサイド」という曲を初めて出したときもタイミングとしては大きかったです。自分らで作った曲で、僕がドラムを叩いた曲が初めて世に配信されたというのは、気持ち的に大きくて。「仕事もしているのに、裏でこんなことやってるの、最高じゃね?」と思って(笑)。そこから『閃光ライオット』や『十代白書』に出たり、アルバムを出したり……。そもそも自分は堅実な人生を生きようと思っていたんですよ。でも今は全然そんなことなくて。想定していた自分の人生からどんどん乖離していくのが楽しいんですよね。

ーーでは「どんな場所か?」と問われたら、あんどりゅーさんにとってバンドはどんな場所だと思いますか?

あんどりゅー:みんなが言うように「友達」なんですけど、裏を返すと、バンドをやっていなければ絶対に友達になっていない4人だと思います。誰とも気が合わへんと思う(笑)。

川田:たしかに。同じ教室におったとしても、喋らへんと思う(笑)。

さっちゅー:交わらへんよな。

ーーそんな4人が今、「居場所」として三四少女というバンドに集まっていることは、とても幸福なことですね。現時点で「三四少女らしさ」というべきものがあるとしたら、それはどんなふうな部分にあると思いますか?

川田:「安直じゃない」というのはひとつあると思います。私は、自分が作る曲は「自分だから作れるんやぞ」と思いながら作っています。かつ、この4人でやって違和感がないこと、4人のキャラクターに合いそう、ということは考えていますね。

さっちゅー

ーー三四少女として初めて作った曲は、先ほど話に出た「シュガースーサイド」ですか?

川田:その前にもう1曲あったんですけど、ボツになっていて。なので、実質的には最初の曲は、たみが作った「シュガースーサイド」ですね。

たみ:今でこそDAWソフトやDTMでデモを作ったりするんですけど、「シュガースーサイド」を作った頃はまだ弾き語りで作ったデモを送っていましたね。最寄り駅から家まで歩いて帰るときに、口ずさみながら出てきた曲で勢いのある曲を作りたいなと思って、そんなに作曲の知識も多いわけでもない中で作り始めました。コード進行も全部循環で、そのとき流行っていた進行で作ったので、最近作っている曲と比べると「あの頃しか書けなかった曲だな」と思います。歌詞も、必死なときだったからこそ出てきた語感や音の響き、想像力で書いているなと思いますね。

【桃源郷】三四少女-シュガースーサイド【LIVE】

ーー歌詞には、具体的に思い浮かべる情景などはありましたか?

たみ:歌詞は、あまり全部を説明しない方がいいと思っていて。ただ、僕は学校でもずっと本を読んでいるタイプの人間だったので、現実とは別の世界線の物語を思い浮かべて、その登場人物を歌詞に書くときがたまにあって。「シュガースーサイド」もそういう曲だと思います。歌詞を書くときは、聞いたことのない言葉の組み合わせとか、自分の想像力が広がるような言葉を使いたいなと思っていて。僕自身、そういう歌詞を聴くと興奮するし、考える余白がある曲がすごく好きなので。作ったときと今とでは考え方が違う曲もあるけど、そういう部分も含めて、「シュガースーサイド」は今見てもよく書けた曲だなと思います。

ーーたみさんは、お客さんからの反応に影響を受けて、自分から出てくるものに変化を感じたりすることはありますか?

たみ:そうですね……最近は、難しい曲を作らないように頑張っているとは思います(笑)。それは手を抜いているわけじゃなくて、「シンプルなもので勝負するのって意外と難しいことなんだ」と最近、思うんです。僕は昔のパンクとかグランジが好きなんですけど、シンプルなパワーコードでリフを作れる人の方がかっこいいなと思う。ゲームで言うなら、初期装備でラスボスを倒せる人の方がかっこいい、みたいな(笑)。削ぎ落すからこそ、かっこよく見えるものもある。そういう部分は最近意識するし、考え方を素直にしていっているところはあります。複雑なことをやったとしても、聴いた人が「すごい」で止まってしまうなら、意味ないなと思う。それならもっとシンプルで無骨なものでいいから、名曲をこの4人で引き出すことができればいいなと最近は思っています。

ーー三四少女は現在、たみさんと川田さんが作詞を担っていますが、川田さんにとって歌詞を書くという行為はどういうことですか?

川田:私は、絶対に歌詞の中で言いたいことは言うようにしています。当たり前のことだと思うんですけど。たぶんこの先も、自分にとって「変わらなそうなこと」を書いていますね。矛盾を生みたくないんです。曲と曲の間で「言ってることちゃうくね?」ということがあってほしくない。そこは意識しています。あと、言いたいことはあるけど、それを自分にしかわからへんくらいのレベルで言い換えたり、オブラートを何重にも包んだ上で、言う。そういうことは意識しています。

ーー自分にしかわからないくらい言い換えたいのは、何故ですか?

川田:そうしないと可愛くないからです(笑)。

ーーなるほど(笑)。

川田:正直過ぎるのは可愛くないなと思う。あと、みんなが言いたいことを言い過ぎていたら怖いかな、と思うので。私は周りの人に嫌われたくないから(笑)。ストレートに言えている人はかっこいいと思うし、それを羨ましいと思うときもあるけど、自分はめちゃくちゃオブラートに包んで言うことが可愛いと思っているので、そうしています。

ーー曲によって言うことが矛盾することに抵抗がない人もいると思うし、むしろそこに美徳を感じる人もいると思うんですけど、川田さんが「矛盾したくない」と思うのは何故なのだと思いますか?

川田:言っていることがコロコロ変わる人が好きじゃないからです。私はそうはなりたくない。

三四少女-ユートピア【Music Video】

ーーこの度リリースされるアルバム『恋してる・コンティニュー』は、タイトルには「コンティニュー」という言葉が掲げられ、1曲目のインスト曲は「▶つづきから」というタイトルですね。「続き」あるいは「続くこと」が重要なモチーフになっているように感じられますが、これは何故なのでしょうか?

川田:『閃光ライオット』に出たとき、「ユートピア」を演奏する前に「三四少女と恋しましょう」と言ったんです。「恋」は、三四少女の第一章のテーマだったような気がしていて。でも、それが終わってもバンドは続いていくし、「三四少女に恋し続けてほしい」という思いもあって、このタイトルは付けました。

ーー三四少女にとって、「恋」という言葉はどのような意味合いを持っていますか?

川田:恋って、即効性のあるものだと思っていて。「喰らう」みたいな。バンドを好きになる感覚ってそういうものだと思うんです。「あ、ヤバ。このバンドめっちゃいい!」みたいな……三四少女に対して、みんながそんなふうに思ってくれたら嬉しいなって。

ーー川田さんはKANA-BOONがすごくお好きだそうですが、川田さんにとってはKANA-BOONに出会った瞬間も「恋」と呼べるものだったと思いますか?

川田:恋かもしれない。……恋です(笑)。

ーーご自身の実体験的に、バンドに恋をすると、人間はどうなりますか?

川田:例えば、学校で「授業おもしろくないな」と思ったり、仕事を「しんどいな」と思ったときに、頭の中でうちらの曲が流れていてくれたら嬉しいなって。そういうのが恋なんじゃないか? と思います。頭から離れない存在になりたいです。

ーー学校は面白くなかったですか。

川田:学校、全然面白くなかったです(笑)。正直、あんまり行ってなかったです。高校、半分くらいしか行ってなかったと思う。

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