ずとまよ、月詠み、ヨルシカ……秋アニソン豊作、ネット発アーティストが生み出す楽曲と作品を彩る手法

月詠み、ヨルシカ……アニメ作品を彩る手法

 アニソンが国内外問わず人気……といった類の話が聞かれるようになったのは少し前のこと。現在、AdoやYOASOBI、米津玄師といったアーティストがその最前線にいるのは言うまでもない。

 だが、そういったモンスター級のアーティストはともかく、歌い手やボカロPなどネットシーンから生まれたミュージシャンを軽視しがちな世代や界隈は一部ではあるものの、現在もあるのではないだろうか。筆者の周囲にいる40代以上ではいまだにそういうアーティスト(歌い手やボカロ)の曲というだけであまり評価しないという人もいるし、世界最大のアニソンイベントである今年の『Animelo Summer Live 2024 -Stargazer-』にはMindaRynとカノエラナ(早見沙織 feat. HoneyWorksなど区分けが難しいアーティストも存在する)しか出場していないという現状がある。1アニメ好きとしては、このようなアーティストのアニソンがもう少しシーンで脚光を浴びてもいいのではと感じてしまうのだ。

注目作の多くでネット発アーティストが主題歌を担当

 始まったばかりの2024年秋アニメに限っても、ネット発アーティストが多くの注目作の主題歌を手がけているのがわかるだろう。秋アニメ全体でも一番のヒット候補と目される『ダンダダン』(MBS/TBS系)のエンディングテーマ「TAIDADA」はずっと真夜中でいいのに。によるもの。お得意の言葉遊びの中に作品の世界観や主人公2人の関係を忍ばせており、歌詞カードを見ながらの視聴が捗る。

TVアニメ「ダンダダン」エンディング映像|ずっと真夜中でいいのに。「TAIDADA」

 そのずとまよやYOASOBIとまとめて“夜好性”と呼ばれていたヨルシカは、こちらも力作の『チ。 ―地球の運動について―』(NHK総合テレビ)のエンディングテーマを担当。「解決が難しい問題」や「それに困惑する状態」を意味する哲学用語をタイトルに引用した「アポリア」は、人が持つ飽くなき探究心を描く作品にぴったりで、シンプルな始まりから感動的なサビまで、静かに熱い作品後のクールダウンに最適。

アニメ『チ。 ―地球の運動について―』ノンクレジットエンディング映像「アポリア」ヨルシカ

 また、『株式会社マジルミエ』(日本テレビ系)はこれまで多数の名アニソンを歌ってきたまふまふとsyudouがそれぞれオープニングとエンディングを担当。爆速のほうきで空を駆ける魔法少女の疾走感を味わえる前者の「オーダーメイド」、新入社員の奮闘記というフレッシュな作品だからかいつもよりシニカルさ抑えめながらそのストレートな応援歌で泣ける後者の「ワークアウト」……そんな具合に、近年の傾向と同じく、ネット発アーティストのアニソンが今期もどれも“アニソンとして”抜群に熱いのだ。

TVアニメ「株式会社マジルミエ」ノンクレジットオープニング映像|まふまふ「オーダーメイド」

『デュエマ』最新作に月詠み? 本編を観たら納得、高次元での絶妙な“バランス感”

 閑話休題。こうした秋のネット発アーティストのアニソンで一番のサプライズだったのが『Duel Masters LOST ~追憶の水晶~』(以下、『LOST』)のオープニングテーマとなる月詠みの「ナラティブ」だ。

アニメ『Duel Masters LOST 〜追憶の水晶〜』第1話

 そもそも『LOST』は20年以上展開してきたカードゲーム原作の朝アニメ『デュエル・マスターズ』の最新作だが、路線変更ぶりがものすごい。開幕即血しぶき、さらにカードのクリーチャー(モンスター)が現実世界に現れて人々を襲う! 主人公は記憶喪失ながらなぜかカードバトルはできる……だが、第1話で具体的なデュエルはなし、 と「なるほど、これを『プリキュア』の裏のホビーアニメとして放送できんわ……」と配信独占作なのも強く頷ける内容。過去に『デュエマ』に触れたことがある人はもちろんながら、シリーズ作品を通っていないアニメファンでも驚ける代物だ。

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