千葉雄喜、Spotify US/グローバルチャートでも存在感 「チーム友達」「Mamushi」ヒットが示す世界的トレンドとの合流

 日本のヒップホップシーンから世界へ。かつてKOHHとして知られ、現在は本名で活動する千葉雄喜が、2024年に立て続けにグローバルヒットを生み出し、音楽シーンに新たな風を吹き込んでいる。本稿では、そんな千葉雄喜による「チーム友達」と「Mamushi」という2つの楽曲を通じて、言語や文化の壁を超えた音楽の可能性について探っていく。

 2012年にKOHHとしてデビューし、日本のヒップホップシーンで独自の地位を築いてきた千葉雄喜。2021年末にKOHHとしての活動に終止符を打った彼が、2024年2月に本名で新たな一歩を踏み出した。その第一弾シングルが「チーム友達」だ。同曲は、注目のビートメイカーKoshyによるプロデュース曲で、低音のリズムが特徴的な中毒性の高いビートに乗せて、〈チーム友達 俺たち何?え?チーム友達〉〈契り〉といったキャッチーなフレーズが繰り返される。一度聴いたら耳から離れない、まさにバイラルヒットの要素を詰め込んだ楽曲だ。

 「チーム友達」は、2024年2月13日のリリース後、2月26日付のSpotifyバイラルチャート(日本)で初登場1位を記録。3月3日まで連続1位を維持するという快挙を成し遂げた。この成功の背景には、SNS、特にTikTokを中心とした楽曲に合わせたダンス動画の拡散がある。

 楽曲のMVは、大集団に囲まれた千葉雄喜のパフォーマンスを中心に、周囲の人々がリズムに合わせて身体を揺らすという、"集団で楽しむ"シチュエーションが特徴的だ。この独特の雰囲気が話題になり、SNS上での拡散を促進する大きな要因となった。

千葉雄喜 - チーム友達 (Official Music Video)

 特筆すべきは、川崎を拠点に活動するダンスグループKING OF SWAGの貢献だ。彼らは2月14日に「チーム友達(Dance Video)」の第1弾を投稿したのを皮切りに、約2週間の間に複数パターンのダンス動画を連続で投稿。これらの動画もMVの"集団で楽しむ"というコンセプトを踏襲しており、楽曲の魅力を視覚的に伝え、拡散を加速させた。

 さらに「チーム友達」のダンス動画は、プロのダンサーやパフォーマーだけでなく、渡辺直美や岩田剛典といった著名人もチャレンジし、その影響力がさらなる拡散を促進した。また、ここから派生したフリースタイルのダンス投稿も爆発的に増加。これまでの「ダンスチャレンジ」的なTikTok拡散パターンに加え、"大集団で自由に曲を楽しむ"という新たなフォーマットが生まれ、急速にミーム化していった。これにより、「チーム友達」は、より多くの人々が気軽に参加し、楽しめる楽曲として、その人気と認知度を大きく押し上げることとなったと考えられる。

 また、「チーム友達」の反響は日本国内にとどまらなかった。先述したKING OF SWAGは、海外にも積極的にカルチャーを発信しており、かねてから世界的な知名度を持つクリス・ブラウンとの親交がある。そのクリス・ブラウンがInstagramで楽曲を紹介したほか、ヒップホップシーンの重鎮バン・Bやメンフィス出身のラッパー、デューク・デュースなど、海外のアーティストたちが次々と反応。その理由として、大勢の声を使ったコーラスなどの楽曲の特徴やKING OF SWAGが振り付けたダンスにメンフィス発祥のストリートダンス「ジューキン」が取り入れられていたことがグローバルなヒップホップシーンのアーティストの目にも留まりやすかったと指摘する識者も少なくない。

 さらに「チーム友達」の人気を拡大させたのが、様々なリミックスバージョンの登場だった。国内では大阪を皮切りに、東海、九州、青森などのご当地バージョン、さらにはWatsonやキングギドラなどによる新たなバージョンが次々に生み出されていったが、特筆すべきは海外アーティストによるリミックスも登場したことだった。韓国や香港、台湾などアジア圏だけでなく、先述のデューク・デュースによるリミックスが発表され、楽曲は加速度的にグローバルな広がりを見せるようになった。とりわけメンフィスのヒップホップシーンを代表する存在として知られるデューク·デュースのリミックス参加は「チーム友達」が単に日本国内だけでなく、グローバルなヒップホップシーンでも認知されていることを示す証拠となった。

 「チーム友達」のグローバルヒットで勢いにのる千葉雄喜がさらなる国際的な注目を集めたのが、USの人気ラッパー、ミーガン・ジー・スタリオンとのコラボ曲「Mamushi」だ。2024年6月に配信リリースされたミーガン・ジー・スタリオンのアルバム『Megan』に収録されたこの楽曲は、「チーム友達」と同じくKoshyが楽曲プロデュースを担当。Koshyが手がける特徴的なサウンドに合わせて日本語と英語が混在しながらラップされるという斬新な構成で話題を呼んだ。

 この楽曲で特筆すべきは、歌詞の大半が日本語であるにもかかわらず、世界中で注目を集めているという言語の壁を巧みに克服している点だ。「Mamushi」のヒット要因は、〈お金 稼ぐ 私はスター〉〈私かわいい いい体〉など、ミーガンのシンプルかつキャッチーな日本語リリックだとよく指摘される。ちなみに日本語を第一言語とする人は米「CIA World Factbook」によると世界人口のわずか1.7%に過ぎない。それだけに世界的に見てマイナー言語と言える日本語混じりの楽曲が海外でヒットすることは驚くべき現象だと言えるだろう。

Megan Thee Stallion - Mamushi (feat. Yuki Chiba) [Official Video]

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