shallm、1stフルアルバム『charme』を経て気づいた音楽への信頼 「私はやっぱりハッピーエンドが好き」

shallmが信じる音楽

本当に両極端(笑)。0か100で動いてます

shallm(撮影=はぎひさこ)

shallm(撮影=はぎひさこ)

――お話を聞いていると、liaさんはある意味極端な部分がありますよね。「何もやりたくない」と思っていた一方で、いざ音楽をやるとなったら、自分で楽曲も歌詞も全部作るようになったわけで。それはかなりのエネルギーを消費することだと思うのですが。

lia:そうですね、だからいっぱい寝ちゃうのかもしれないです(笑)。でも、楽しいなと思いながら作っています。

――先ほどボカロを聴いた時の感情がモチーフになったとお話しされていましたが、この曲も、高速かついろいろな要素がギュッと詰まった感じや攻撃的な歌詞を含め、ボカロックの雰囲気がありますよね。

lia:はい。やっぱりボカロっぽさを出したいなと思って、打ち込みも入れました。歌詞は、「冷めてる自分」と「もうひとりの自分」が言い合っているようなイメージで。〈心穿つ違和感を逃すな〉という歌詞は、自分のなかに感じた違和感を逃すなという意味を込めていて。この曲があるとないとでは、アルバムとしての完成度が全然違ったと思うので、作ることができてよかったなと思います。

――個人的には1曲目の「脳内ディストーション」にも通じる部分があると感じたのですが。

lia:そうですね、あの曲もすごく怒っている時に作った曲なので(笑)。今となっては何に対して怒っていたのか覚えていないんですけど、とにかくすごく怒っていました。

――liaさんはまったりした話し口なので、怒っているイメージが全然沸かないです(笑)。

lia:本当ですか? 信じられないことがあった時とか、理不尽なことを言われた時とか……どんなことで怒ったかは、パッとは思い出せないんですけど、全然怒りますよ、私(笑)。

――エモーショナルなバラード「閃光バード」も今回のアルバムが初出の新曲ですが、どんなイメージで書き下ろされたのでしょうか。

lia:今年の3月から6カ月連続で配信リリースをしていたんですけど、そういえば夏の曲がなかったなあと思って。そこで、夏休みの曲を作ろうと思ってできた曲です。私、夏休みってすごく退屈だなと思っていたんです。友達とも会えないし、本当に家から出なくなるので、檻のなかにいるみたいな気持ちになるんです。でも“夏休み”には、学校の喧騒のなかでは感じられない、自分の静かな部屋からしか見えないきれいなものというイメージがあって。だから、私のなかで夏休みは「退屈だけどきれい」なんです。そのイメージで「閃光バード」は作りました。

――まさに、檻のなかで外の光に憧れるような心情が歌詞で描かれています。

lia:この曲を書く少し前に『コンビニ人間』(村田沙耶香による小説)を読んで、その主人公がほかの人とは違う価値観を持っているんですよ。それがいいなあと思ったのもあって、ほかとは違う、ちょっとおかしな夏休みにしたかったんです。だから、本当に自分のことを鳥だと思っている人が、花火に憧れて飛んでしまうという物語にしました。

――liaさんが『コンビニ人間』を読んで共感できたのは、どんな部分だったのですか?

lia:主人公はコンビニの店員なんですけど、コンビニのために生きているんです。コンビニのために早く寝て、ちゃんとしたごはんを食べて、健康を保つっていう。生活のすべてがコンビニに支配されていく感じが、なんかわかる気がして、いいなあと思いながら読んでいました。人の気持ちが全然わからないところも、すごくおもしろくて。

――そこに共感を覚えるんですね。ある種、自由のきかない、レールに乗ったような生活でもあると思うのですが。

lia:でも、レールに乗っていることで落ち着くものもあると思うんですよ。やっぱり、冷静な自分もいるので、そういうのもいいなあ、わかるなあと思って。

――liaさんのなかには、心の動くものを求めて音楽を追求する自分と冷静な自分が、ずっと一緒にいるんですね。

lia:そうですね。どちらも自分なので。家から全然出ない時もあるし、急に旅行に行ったりする時もあるし、本当に両極端(笑)。0か100で動いてます。

「誰かに届きますように」と願いながら歌うようになりました

shallm(撮影=はぎひさこ)

――今回のアルバムに際し、ライブでよく歌われているエネルギッシュなロックチューン「stardust」も初音源化となりました。

lia:いちばん歌っていると言っても過言ではないくらいの曲で、ずっと出すタイミングをうかがっていたんです。自分の作った楽曲に納得できずに、「もっといける!」と思うことが多いんですけど、そのなかでも「stardust」は歌詞もちゃんと辻褄を合わせて作ることができたかなと思っています。ようやく出すことができて、私も嬉しいです。

――歌詞に〈混沌とした愛・アイデンティティー〉とあるように、星をモチーフにしつつ“自分らしさ”について歌った曲のように感じました。

lia:ずっと何かを探している気持ち、何かが足りないと思っている気持ちを書きたくて。私は宇宙や星が好きなんですけど、星を眺めている時に「自分はちっぽけだなあ」と思うことがあるんです。自分が生まれてきた意味、人生の意味みたいなものを書きました。

――〈書き殴った言葉で紡げこんな日々を/救う歌を聴かせてくれ〉とありますが、それがliaさんにとっての人生の意味のアンサー?

lia:アンサーといいますか、「わからないなりに頑張る」という感じです。歌詞に〈刹那の幻?〉と書いたんですが、このフレーズには幻で終わりたくないという意味を込めています。何か生きた証を残したい、という気持ちで書きました。

――だからこそ〈惑い星〉なんですね。ライブで歌う時は、どんな心持ちで歌っているんですか。

lia:最初の頃は「私はここにいるよ!」という気持ちだったんですけど、歌いながらだんだんと「私と同じ気持ちの人はいないかな?」と探すような感覚になりました。「私がちゃんと見ているよ」と言ってあげたくなるような気持ち。「誰かに届きますように」と願いながら歌うようになりました。それもこの一年間で変わったことです。

――ステージで歌いながら客席を見渡して、自分と同じ気持ちだと感じる人がいたりするんですか?

lia:はい。私は(観客の)目を見て歌うようにしているんですけど、目が合った時にそう感じるんです。もちろん、その人がどう思って聴いてくれているのかはわからないんですけど、「届いているといいな」「これが救う歌になればいいな」と思いながら歌っています。

――先ほどのエミリアの話もそうですが、liaさんはよく「かっこよくなりたい」とお話しされていますよね。その意味では、ご自身の理想とする「かっこよさ」を特に表現できたと感じる曲はありますか?

lia:やっぱり「暴動」ですかね? 「こんなふうに生きられたらな」という想いで作ったので、言えたらかっこいいと思ったセリフを歌詞にも入れていて(笑)。その意味では、かっこよさを表現できたのかなと思います。

――自分のなかでの理想のかっこよさを言葉にするとしたら?

lia:うーん……“仁義”でしょうか。自分は本当に人間らしい人間だと思っているので、もっと仁義に厚い人間になれるよう頑張りたいです。

――理想のかっこいい自分を表現できたのが「暴動」だとしたら、飾らない自分らしさがよく出ている楽曲はどれだと思いますか?

lia:「G2G」ですね。無垢な子どもみたいに、言いたいことをつらつらと綴った曲なので歌っていても楽しいです。

――この曲は5月に配信リリースされた楽曲で、五月病の何もやりたくない気持ちが表現されていますよね。

lia:何もしたくないという思いのなかで「やるんだ!」と自分を鼓舞する意味も込めて作りました。自分が作る曲は大体(主人公が)戦っているんですけど、この曲は「戦いたくない」と言っている曲なので、ほかの曲とは違っていて。私が思う“かっこよさ”とは違うかもしれないけれど、楽しい曲になりました。

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