キマグレン、美しい夕日が祝した『再会と再開』の瞬間 9年ぶりにファンへ贈る歌声と感謝の想い

 解散から9年を経た今年6月に再結成を発表したキマグレン。すぐさま『THE FIRST TAKE』や『CDTVライブ!ライブ!夏フェスSP」(TBS系)に出演し、「LIFE」のパフォーマンスによってその圧倒的な存在感をあらためてシーンに提示することとなった。だが、彼らが本格的な再始動の狼煙を上げるための場所に選んだのは、やはりワンマンライブだった。夏の終わりとも言えるタイミングに、縁のある場所で――。

 9月1日、『キマグレン -再会と再開-』。場所は、鎌倉材木座海岸 海の家Asia特設会場。

 よしずで囲まれた海の家のエリアに詰めかけたオーディエンスたち。開演時間になるとTシャツにハーフパンツ姿のISEKI(Vo/Gt)とKUREI(Vo)の2人がふらりと現れる。大きな拍手に導かれながら、会場の中央にセッティングされた小さなステージへ。西日本に停滞していた台風10号の影響による強い雨が降る中、「ここまで来るのも大変だったでしょ」とISEKIが客席をねぎらいつつ、「どうもキマグレンです!」の一声でライブがスタートする。大仰に構えることなく、とんでもなく近い距離感、ラフなスタイルで“再会”と“再開”の時間を作り上げてくれるのが、実にキマグレンらしいところだ。

 2人がギターをつま弾きながらゆったりとしたムードで1曲目「君を忘れない」がプレイされる。雨は降り続けているものの、頬を撫でていく海風が心地よい。2人の色の違うボーカルが交互に現れ、それがひとつのハーモニーを生み出した瞬間、離れていた9年という長い時間が一瞬で霧消し、彼らが帰ってきてくれたことを強く実感する。続く「ガンバレロボ」では爽快な景色が描き出され、サビではオーディエンス全員が楽し気に手を振り、アウトロでは「ラララ」の大合唱が巻き起こった。

「今日は2人でやることにすごく意味がある。バンドでやったり、ちゃんとしたライブハウスでやるっていう選択肢もある中で、原点回帰ですよね。“再開”と“再会”ってことですから」(KUREI)

 そんな言葉をきっかけに、ISEKIが「ただいま!」と呼びかければ、客席からは「おかえり!」の大きな声が飛ぶ。続けて、「みんなもおかえり!」と投げかけると、観客も「ただいま!」と嬉しそうに返事をする。終始、リラックスしたムードで会話を楽しむISEKIとKUREIの2人の姿からは、最高の状態でキマグレンを再開させたことが明確に伝わってきた。

 「IT'S MY 勇気」では、小さなステージ上で機材の間隙を縫いながら動き、客席の一人ひとりに思いを乗せた歌声を届けるKUREI。機材の関係上、動くことができないISEKIもギターをエモーショナルにかき鳴らしながら、聴き手の胸を震わせる力強い歌声を響かせる。最高のメッセージを大合唱した「愛NEED」、メジャーデビュー曲「あえないウタ」と活動初期の名曲が連続で届けられると、空からは雷鳴が響く。KUREIが「あえないウタ」の歌詞である〈雪が辺りを包んだ〉を、〈雨があたりを包んだ〉に変えて歌ったことも含め、この日、この場所、この天候でしか実現できないライブが展開されていく。

 インディー時代の楽曲「白の日記」ではISEKIがギターを、KUREIがハープを演奏。あたたかな空気が満ちていく。曲の後半では男性と女性に分けて「tu tu tu」のパートを合唱。ステージ際で煽るKUREIも含め、皆が雨に濡れた状態ながらも、とにかく楽しい、笑顔に溢れた時間が流れていく。

 まさにこの日のライブにふさわしい去り行く夏へのアンセム「ENDLESS SUMMER」からは、マイクをワイヤレスにしたことでよりアグレッシブなパフォーマンスで会場を沸かせていったKUREI。その姿に触発され、ISEKIの歌と演奏にもより熱が帯びていく。降りしきる雨が、客席で突き上がる拳で激しく弾けていた光景が印象的だ。

 ライブ開始から1時間が経った17時。キマグレンからの粋な計らいにより、会場を囲んでいたよしずが取り払われたことで、広大な海を眺めながらのライブとなった。「I BELIEVE」からスタートしたメドレーでは、「リメンバー」「サヨナラの朝」「想い思い」「トコシエ」「6色の虹」と、キマグレンの音楽性の豊かさや彼らの人間性を強く反映した、心に響くメッセージ性をあらためて実感させる名曲たちが披露されていく。メドレーが終わった瞬間、「キマグレン、いい曲多いね」と思わず漏らしたKUREI。続けて、「キマグレンが解散したときに、もうキマグレンの曲は聴かない、もういいやって思ってた。でも全部の肩の荷が下りた状態でキマグレンの曲を聴くと、こんなこともあったな、いい思い出もたくさんあるなと思って。なので、ここからもう一回みんなと一緒に歌っていけたらいいなと思ってます」と今のリアルな胸の内をオーディエンスに伝えてくれた。

関連記事