bird、25年間におよぶシンガーとしての旅路 大沢伸一や冨田恵一らとの出会い、自分らしさを更新してきた音楽人生

 1999年、「SOULS」で鮮烈なデビューを飾ったbird。そこから“歌うということ“にこだわり続け、彼女は25年間、音楽の旅をしてきた。

bird - SOULS / THE FIRST TAKE

 大沢伸一のプロデュースのもと、ブラジリアンから2ステップまでを呑み込んだモダンなサウンドで歌っていた時代があった。田島貴男から堀込高樹まで様々なソングライターと共作し、自身がトータルプロデュースを担って時代やモードに捉われないポップスを歌っていた時期があった。冨田恵一(冨田ラボ)のプロデュースのもと、USの新時代ジャズ/R&B/エレクトロと呼応した新しいポップを自分らしく表現していた時期があった。そして彼女はいろんな場所へと身軽に出向いては、その土地の人との触れ合いを大切にしながら歌うということを長きにわたってやってきた。

 “愛“も、“優しい風“も、いつも裸の気持ちで感じとって歌ってきた、そんなbirdのデビュー25周年を記念したリエディット・ベストアルバム『25th anniv. re-edit best + SOULS 2024』が9月18日にリリース。そこには再び大沢伸一を迎えてデビュー曲をアップデートさせた「SOULS 2024 Shinichi Osawa ver.」も収録されており、新しい聴き手にも、長くbirdの歌を聴いてきたという人にも、フレッシュな感覚で届くことになるはずだ。このインタビューでは、彼女が歌の力を知った大学時代から現在に至るまでの全キャリアを振り返ってもらい、最後に現在制作中だという新しいオリジナルアルバムについても少しだけ話してもらった。(内本順一)

アレサ・フランクリンへの憧れからスタートした歌手としての道

ーー25周年。四半世紀ですよ。

bird:「四半世紀だね」って言われて、これまで自分ではその言葉を使ったことがなかったんですけど、「そうなんだな、四半世紀なんだなぁ」って噛みしめています(笑)。

ーー25年はあっというまでしたか?

bird:あっというまかどうかはわからないですけど、こんなに長く歌うとはデビューした頃は思っていなかったので、自分でもびっくりというのと、嬉しいというのと、いろんな感情が混ざっていますね。

ーー『25th anniv. re-edit best + SOULS 2024』のブックレットにbirdさんの文章が載っていて、大学生のとき歌に惹かれていったきっかけが書かれてありました。デビュー当時に自分がしたインタビューでもそのあたりの話を聞いたかもしれないんですが、さすがに忘れていたので、「ああ、そうだったか」と新鮮な気持ちで読ませていただきましたよ。

bird:忘れますよね(笑)。だいぶ経っちゃってますから。

ーーなので今回は改めて大学時代の話から辿っていきたいと思います。大学生のときはふたつのサークルとひとつの部活を掛け持ちしていたそうですね。ジャグリングのサークルと、軟式野球のサークルと、軽音楽部。本命はジャグリングのサークルだったと。

bird:そうです。高校生のときにシルク・ドゥ・ソレイユの公演を大阪で観て、感動したんですよ。めっちゃかっこよくて、パンフレットも買って、どうしたらここに入れるんだろう?って。

ーー入団したかったんですか?!

bird:はい(笑)。でも当時はインターネットもないからどうしたら入れるのかわからないし。まあ、できるできない以前の話なんですけどね。それで、大学に入ってからとりあえず技を覚えようとジャグリングのサークルに入って、先輩に教えてもらいながら活動していたんです。

ーーいろいろな技を覚えたわけですね。ライブで披露すればよかったのに(笑)。

bird:ライブでやったことはないんですけど、今回過去のMVがたくさん配信されたので見直していたら、「チャンス」のMVでお手玉をやっているシーンがあって、「あ、こんなことやってたんだ?!」って。自分でも忘れてました。

ーージャグリングのサークルは自主的に入ったそうですが、軽音楽部には「たくさん友達ができるよ」と誘われて入部したとのこと。ボーカルを選んだのは楽器を買わなくていいからだったとか。

bird:初心者でしたし、身軽なほうがいいという気持ちがあって(笑)。それで新入生歓迎会のときに初めてバンドを組むわけですけど、そのなかのひとりが米米CLUBが大好きな人だったので、初めて練習したのが米米CLUBの「Shake HIP!」。でもキー設定とかもまだできないから、男性キーのまま歌うことになって、ガッと行けずに低いところで歌いながら「なんか違うなぁ」なんて思っていました。

ーーそれまで人前で歌うという経験は?

bird:なかったです。だから最初は歌詞を持つ手がブルブル震えて、その手を見て余計に緊張するみたいな。どうしたらいいのかわからないところからのスタートでしたね。

ーー音楽を聴くことはその前から好きだったんですか?

bird:ラジオやテレビから流れてくるものを普通に聴いていたくらいでした。だから先輩からいろんなジャンルの音楽を教えてもらって、「いろんな音楽があるんだなぁ」なんて思っていたところ、先輩から貸りたカセットテープに入っていたある曲を聴いて「うわぁぁぁ」ってなって。アレサ・フランクリンの「Respect」。阪急電車で家に帰る途中だったんですけど、声の持つ力に圧倒されて、「めっちゃかっこいい!」「自分もこういう存在になれないだろうか」って。

ーーそれが歌の力というものを知った最初の瞬間だった。

bird:はい。それで、まずアレサ・バンドを作ろうって思ったんです。友達に声をかけて、アレサの曲ばかり歌うバンドを結成して、ライブをやるようになった。それまではどういうジャンルが自分に合うのかもわからないから、いろいろ試行錯誤していたんですけど、アレサと出会ったことで熱く歌うようになったんです。それが大学2~3年のときですね。

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