Def Techが贈る至福のひととき 夕暮れの野音から幕を開けた『What The Frequency Tour』
8月24日、東京・日比谷公園大音楽堂から、『Def Tech “What The Frequency Tour”』がスタートした。残暑から秋へ向かう日本列島を駆け抜ける、全9公演のホールツアーだ。今年はリリースペースも快調で、7月15日の海の日には、JQ from Nulbarichがプロデュースしたコラボ曲「FANTASY」が出たばかりだ。客席は老若男女の陽に焼けた笑顔であふれ、立見席までいっぱいの賑やかなムード。さぁ、パーティーを始めよう。
夕暮れの野音に、心地よい口笛のメロディが鳴り響く。大歓声を浴びて登場したShenとMicroが、がっちりと手を合わせて肩を抱き合う。オープニングは「B-3」だ。バックを固めるのは、バンドマスターのNagachoを中心とした4人のメンバー。DJとドラムマシーンがグルーヴを生み、2本のギターが爽やかな風と鮮やかな色彩を運ぶ。「日比谷野音、始まっちゃったぜ!」とMicroが叫ぶ。始まっちゃったからには、とことん楽しむしかない。最初のセクションは、ゆったりと体を揺らす曲が揃っている。1曲終わるごとに拍手と歓声が響くーーみんなこの日をどれだけ待っていたことか。
「暑いからゆっくり行こうぜ」と言いながらもMaicroがタオルを持ち出してぶんぶん回し、ぐんぐん煽る。曲は「Pacific Island Music」だ。Microがタオルを客席に投げ込むと、Shenも投げる。Shenが上着を脱いでシャツ1枚になれば、Microも脱ぐ。「ここからは飛びますぞ!」とMicroが叫べば、満員のオーディエンスが一斉にジャンプする。「Summer Steppin‘」からは4人の男女混合ダンサーズを迎え、タオル回しとクラップで盛り上げ、客席に水鉄砲をぶっ放して大騒ぎだ。「いい感じで気持ちいいでしょ?」とShenが笑顔を見せると元々びしょ濡れになる準備万端のオーディエンスも笑う。いい雰囲気だ。
「“Summer Live Forever”へようこそ。マジで待ってたぜ、この時を。今日は最後の一秒まで楽しんでいってください」(Micro)
ここからは、ダンサブルな曲調とストイックな音色で聴かせ、踊らせるセクションへ。5月にリリースした「Ring D Alarm」は、オーセンティックなレゲエのリズムが心地よく、ダンサーたちのパフォーマンスもキレキレ。昨年リリースした「Automatic」のメロディアスなEDMは、すでにDef Techのライブにしっかり溶け込み、サビでは全員参加の大ジャンプ。アコースティックでオーガニックなグルーヴも、エレクトロ色の濃いダンスチューンも、どちらでも盛り上げられるのがDef Techのライブの強みだ。ShenとMicro、ダンサーとの息の合ったダンスパフォーマンスもばっちり決めて、あっという間にライブは後半へ。
「Def Techのライブには70歳から2歳までいるから。座ってもいいし、何をしていてもいい。自由に楽しんで」(Micro)
イントロで大歓声が上がった新曲「FANTASY」は、ライブで聴くのは初めてだが、予想以上に素晴らしい。NulbarichのJQがプロデュースしたトラックは、繊細でメロディアス、それでいて力強く壮大なスケールで心を打つ。どこからか湧き出した無数のシャボン玉がまばゆいライトに照らされながら目の前を横切り、空へと舞い上がる。ShenとMicroの優しいハーモニーが、すっかり陽が落ち、涼風が吹き始めた野音に響き渡る。この日の名場面の筆頭に挙げていい、それはそれは美しいシーンだった。