後藤真希の人生を変えた出会い 現在にも活きる“夏まゆみ先生”の教え「本当に私たちのことを思ってくれてた」
「13歳の頃は思ってもみなかった」
ーーそんなこんなで25年間やってきて、現在の率直な心境としてはどんな感じですか?
後藤:いやあ、25年経ってもまだこうしてアルバムを出すような立場にいるなんて、13歳の頃は思ってもみなかったですね。だって、当時ハロー!プロジェクトの社長に「私は19歳になったら結婚して辞めるんだから!」って言ってたんですよ(笑)? それが今でも歌っているわけですから、びっくりですよね。
ーー感慨よりも驚きが先に来るんですね。
後藤:こんなに長い間がんばってこられた環境に感謝だなって思うんですよ。とくにファンのみんなが……まあ、いなくなる人もいますよ? いるけど、新たについてくれるファンもちゃんといて。「何を見て好きになってくれたんだろう?」「何がきっかけでライブに来てくれたんだろう?」って不思議に思ったりもするんですけど。
ーーすごく若いファンの子とかも普通にいますもんね。
後藤:そういう子が新たにファンになってくれるっていうのがすごく不思議な感覚でもあり、新鮮な気持ちにもなれるので本当にありがたいですね。
ーーファンが常に応援してくれるから活動できているという一方で、ご自身の中にも「ここが居場所だ」という感覚があったからこそ続けてこられたんじゃないかとも思うんですが。
後藤:うん。本当にこの業界というか、とくに歌に関しては「私はやっぱりこれなのかな」って気持ちが最近はより強くなってきてますね。この仕事って、どちらかというと大変なことのほうが多いんですよ。歌ってるときは大変だし苦しいし、考えなきゃいけないことも悩むことも多い。いいことばかりじゃないんです。だけど本番がうまくいった瞬間、その一瞬でファンのみんなの気持ちが動いたりするわけじゃないですか。そういうのを見ると「この一瞬のためにやってるんだな、私」ってふと思いますね。
ーー歌への思いが最近より強くなったんですね。どういうタイミングでそれを感じたんですか?
後藤:今回のミニアルバム『prAyer』を作っている中で思いました。なんか、どんなに時間のかかる大変な作業も全然苦にならなかったんですよ。どれだけ手間や時間がかかったとしても、「もっといいものを作りたい」という気持ちのほうが上回っちゃう。やっぱり私はこういうことをやっている時間が好きなんだな、楽しいんだなって改めて実感できた制作期間でしたね。
ーーそもそも今回、どういう経緯でミニアルバムを出すことになったんですか? やはり25周年タイミングというのが大きかった?
後藤:そう。以前から新しい曲を出すタイミングを見計らっていたところはあったんですよ。そこにちょうど25周年という絶好の機会が重なったので、「じゃあ1曲だけとかじゃなく、何曲か出そうか」という話になり、それがミニアルバムという形になり。
ーーたとえば20周年タイミングのときって、ライブはやってますけど音源は出していないですよね。
後藤:そうですね、新しいリリースとかはまったくなかった。その頃は作品を作ることよりも、歌の活動を継続的にやっていくことのほうに重きを置いていた感じで。ライブもそうですけど、YouTubeで“歌ってみた”を始めてみたりとか……まあ、段階ですよね。いきなりここまでは登れないから、ちょっとずつちょっとずつ登っていった感じです。
「歌謡曲はそこまで好きじゃない」
ーーその新作『prAyer』ですが、これまで以上にダンスミュージックに特化した作品という印象を受けました。
後藤:べつに「踊りたい!」と思ってるわけじゃないんだけど、なぜか選ぶ曲が全部ダンサブルなんですよね(笑)。あとになってから「これを選んだということは、踊らないと……」って思うんですけど。
ーーそこはやはり、ハロプロ育ちならではの嗅覚みたいなところなんですかね。
後藤:結局、こういう曲が好きなんでしょうね。集まったデモをひと通り聴いて、「いいじゃん」ってピンと来たものを残しつつ絞っていく感じで選んだんですけど。
ーー前作『愛言葉(VOICE)』はここまでダンス特化という感じでもなくて、もっと歌謡ポップス寄りの曲もわりとありましたよね。
後藤:そうですね。でも私、歌謡曲はそこまで好きじゃないんですよ。
ーー(笑)。
後藤:普通に聴いたり、カラオケで歌ったりする分には全然いいんですけど、自分の作品として歌謡曲っぽいものを出すことにはずっと違和感があったんです。もちろん「そういうのもいいんじゃないか」という周りの意見を信頼してやってきたことではあるんですけど、ここ数年とくに「自分のやりたいこと、作りたいものに関してはしっかり主張していこう」と強く思うようになってきていて。その結果、今回は自分でも本当にいいものを作れたなと思ってるし、みんなに聴いてほしい気持ちもより強いですね。
ーー歌詞的にもけっこう攻撃的というか刺激的なワードが多めな印象ですけど、後藤さんの今歌いたいことが反映されたもの?
後藤:そうです。クリエイターの方にはまず大まかなニュアンスをお伝えして書いてもらうんですけど、上がってきたものに対して「ここはこういう言葉のほうがいいんじゃないか」と案を出したりとかしました。
ーーだいぶ女王様テイストな。
後藤:そう(笑)。でも「CLAP CLAP」はそういう雰囲気もありつつ、〈Ya ya ya ya〉とか〈No no no no〉とか、ライブでファンが掛け声を入れられるパートもたくさんあったりして。ソロアーティストとして1人で歌う曲ではあるんだけど、人数感があるような雰囲気にしたかったんですよね。だからコーラスも厚めに入れてたりするし。
ーーちなみに『prAyer』というアルバムタイトルにはどんな思いが込められているんですか?
後藤:いくつか候補があった中から「『prAyer』いいね」ってなって。これは“祈り”という意味ももちろんあるんだけど、私の中では「いちプレイヤーとしてここに立っているんだ」という意志も含んでるイメージなんですよ。prayerであり、playerでもあるみたいな。
ーーなるほど。先ほどの表現者としてのスタンスみたいなお話にもそのまま通ずるタイトルなんですね。
後藤:そうそう。だから本当に、タイトルも含めて「25年やってきた今、私はこうなんだよ」というのをそのまま表すミニアルバムにできたなと思います。
ーーそのアルバムリリース後には『後藤真希 25th anniversary live tour 2024 〜pr∀yer〜』と題したツアーも控えています。
後藤:「A」が逆さまになっているのは“all”って意味なんです。来てくれるファンに対して「あんたたちもプレイヤーよ、がんばりなさい」みたいな(笑)。
ーー他人事じゃねえぞと。
後藤:そう、みんなで作っていけたらいいなって。まだ決まっているのはセットリストくらいなんですけど、それに合わせてどんな衣装がいいかなとか、振付も含めてどういう演出ができるかなっていうのを考えている最中ですね。25周年記念のライブなので、みんなと一緒に25年間を振り返って走馬灯を見られるようなライブにしたいなと思ってます。
ーーということは、後藤さんの25年間を網羅するようなセットリストになっている?
後藤:……って思うじゃないですか。違うんですよ。
ーー違うんですね(笑)。
後藤:でも、ところどころでそういう雰囲気を感じられるライブになったらいいなという“祈り”もありつつ。キービジュアルで「愛のバカやろう」っぽい雰囲気を出してたりもするんですけど、そんなふうに要所要所で匂わせる感じにしたいんですよね。あからさまに懐かしさを押し出すんじゃなくて、わかる人にはわかるくらいの。
ーーアルバム1曲目の「QUEENDOM」に出てくるフレーズくらいのさりげなさで?
後藤:そうそうそう! そういうこと(笑)。
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