DOPING PANDAとthe band apartのロックは時代を先取ってきた 変化と美学が詰まったスプリットEPの裏側

「バンアパは一番過小評価されてるバンドだと思ってる」(Furukawa)

ーードーパン復活以降、ご自身が書く言葉ってどう変化してきたと思いますか。

Furukawa:うーん……昔の方が自分語りとかしてた気がするけど、今は変に尖ってもいなければ、恋愛の話とかも自然と減ってないとおかしいし。そういう意味だと昔みたいなパッションは減ったかもしれないです。ただ、もっとデカいところにパッションがある気がしていて。「人生を生きる」「3人でバンドをやり抜く」みたいな。今はそっちなのかもしれない。中年思春期を楽しんでるので、「デカい景色を見たいな」っていう青さは逆に強くなってるような気がします。

ーードーパンって強く再評価された2010年代の四つ打ちロックブームの時代に、すでにシーンからいなくなってたじゃないですか。けど、そういうブームが一通り落ち着いた2022年に盛大にカムバックしていることを思うと、いい意味で時代の波と違うタイミングにやってくるバンドだなって思うんです。けどそれは、2010年代のちょっとした青春ロスを取り戻しにいくようにも見えて面白いなと。ご自身ではどう思います?

木暮:時代の波に乗ってないってさ(笑)。

Furukawa:はははは! まあ狙ってないですからね。解散せず、もう少し踏ん張ってたらもてはやされたかというと、そうでもない気がするし。その頃には俺たち、四つ打ちをやめてるので。照明も真っ暗にして、16ビートのキックで細かく踏んでばっかりで、ドツドツしたやつは全然やってなかったから。むしろ冷却保存したおかげで、復活した今は四つ打ちをやれてるんで。それが時代と合わないっていうのはみんなよくあることなのかな。

ーーさっき『YELLOW FUNK』の話も出ましたけど、2010年代は四つ打ちブームの次に、ヒップホップやファンクの流れを汲んだ邦ロック作品も多く出てきたと思うんですよ。木暮さんの言葉を借りるなら、やはりドーパンは「早かった」と言えると思いますが。

Furukawa:どうなんですかね……俺としては洋楽を追っかけてたから自然とそうなったっていうだけなので。だからこそ今の邦楽のメインストリームともだいぶかけ離れたところにいるなと思います。YOASOBIとかAdoとか米津(玄師)くんとかって、洋楽ルーツっていうだけでもなさそうだし。今は洋楽に対して追いつけ追い越せみたいな空気もないじゃないですか。若いバンドにとってはむしろJ-POPやJ-ROCKの方がかっこいいんだろうから。俺らはまた違う感覚のところにいるなと。

ーー今は洋楽・邦楽の混ぜ方がどんどん自由でフラットになってる感じはしますよね。でも、バンドの地力としてどれだけ洋楽的なグルーヴを吸収しているかが大事なのは間違いないですし、2000年代的なバンドサウンドの再評価もあるので、これからドーパンがフォーカスされる機会もさらに増える気がしています。

Furukawa:そうありたいですね、頑張ります。お前らもだろ?

木暮:え?

Furukawa:「え?」じゃなくて! 俺はバンアパなんて、一番過小評価されてるバンドだと思ってるから。今となってはだけど、“5人目のThe Beatles”みたいなしっかりしたブレーンがいたら、時代を変えるぐらいすごいバンドになったんじゃないかなと思うんです。本人たちにその意思はなさそうだけど(笑)。

木暮:あんまりないね。

Furukawa:まあそんなヤツがいたらバンアパじゃなかったかもな、とも思うので。けど、UKで言うところの“フランツ(Franz Ferdinand)以降”みたいに、“バンアパ以降”みたいな線引きって明確にあったし。メロディック(パンク)が終わっていく中でガーッと上がってきたことで、「ツービートやらなくていいんだ」「違う表現でもいいんだ」みたいな流れを作ったのがバンアパだったと思ってるので。わりに、それだけの評価をもらってないんじゃないかな。

木暮:そうかな?

Furukawa:だからね、欲がないのよ君たちは。

木暮:だって、ずっと横ばいでこの歳までやってこれてるんだよ。

Furukawa:全員それ言うよね(笑)。荒井はこないだ占い師に怒られたらしいよ。「年に1回、2000人ぐらいのキャパでライブやれればそれでいい」って言ったら、「志が低い。もっと高い目標を言わないと、それすらできなくなるわよ」って(笑)。

木暮:(苦笑)。

「“こいつらにだけは不寛容にならないように”という意識がずっとある」(木暮)

ーーバンアパにとっては、4人のグルーヴを育みながら25年以上変わらずに続けてきたことが大きいわけですよね。「変わらずに」っていうと平坦な気がしますけど、むしろ続けるために変化してきたことって何が大きいと思いますか。

木暮:もともと同級生だからなんだろうけど、メンバー同士に対する寛容性を4人とも強く持ってるのが大きいかな。趣味とか出身地とかもバラバラなのに、強制的に同じ学校で過ごして仲良くなるみたいなことって、それ以降あまりなかったから。10代の頃の俺は、サザンオールスターズって言われても「なんか売れてる音楽でしょ? 俺ラップしか聴かねえから」みたいなクソなヤツだったんだけど、荒井がそれだけ好きって言うなら聴いてみようと思って、良さを知ったりとか。そういう経験を繰り返してきているので。同じ機材車に乗ってツアーしてたら軋轢が生まれるタイミングもあるんだけど、やっぱりベースには“幼馴染”があって、「こいつらに対してだけは不寛容にならないようにしよう」という意識がずっとある。

 それは曲作りも同じで、1stアルバム(『K.AND HIS BIKE』)までは原が全部作ってたんだけど、あいつが締め切りに間に合わなさすぎるから、「俺らも作ろっか」みたいに全員で作り始めて。そうやって作曲者のバランスが変わっていくから、年月ごとに曲のカラーが違うのは当然なんだけど、その感じで横ばいでやってこれてるのは我ながらすごいなと。昔、“5人目のThe Beatles”みたいなヤツもいたけど、相当ボンクラで、挙げ句の果てにいなくなっちゃって(笑)。でも4人だけのシンプルな形になったことで、みんなの意識が変わってきた気がする。「事務所のトイレットペーパー買うのにもお金がいるよね」とか「ゴミは捨てよう」とか(笑)、そいつを介してしか話さなかった経済的なこともちゃんと共有するようになったし。“5人目のThe Beatles”がいなくなって4人とも成長できたというか。

ーー親のいない状態でどうやって食べていくかを相談する兄弟みたいな?

木暮:うん、それが近いかな。その結果ドーパンにも誘ってもらえて。Yutakaは「もっと大きい会場でやろうよ」みたいに普通に言うけど、俺らは本当にそういうことがないので、すごい刺激になるし。

Furukawa:だってさっきから、“横ばい”をポジティブに使ってるから。普通ネガティブに使うじゃん(笑)。

木暮:(笑)。しかも今回ソニーのチームも入ってるから、すごくちゃんとしたやり方を経験できたなって。まあ当たり前に締め切りに間に合わない俺らがボンクラすぎただけなんだけど。リリースよりこんだけ前倒しで音源ができるんだなって思いました。

Furukawa:そりゃそうだよ。前にリリースが間に合わずにバンアパのツアーが始まって、めちゃくちゃいじられてたじゃん? それで俺も田野口くん(DOPING PANDAのA&R)も相当ビビってて、「締め切りはここを徹底しましょう」って言ってたら、むしろめちゃくちゃ早く終わった(笑)。俺の人生の中でも一番早かったかもしれない。

木暮:早く終わって悪いこと何もないね。

Furukawa:そうだよ!

木暮:俺らも頑張ります(笑)。

DOPING PANDA×the band apart『MELLOW FELLOW』

◾️リリース情報
スプリットEP『MELLOW FELLOW』
発売日:2024年6月12日(水)
完全生産限定盤(CD+BD):2,750円

配信:https://dopingpanda.lnk.to/MELLOW_FELLOW
購入:https://dopingpanda.lnk.to/20240612_MELLOWFELLOW_CD

<収録内容>
[Disc-1 / CD]
1.MELLOW FELLOW [DOPING PANDA / the band apart]
2.goodbye to the old me [DOPING PANDA]
3.夢太郎 [the band apart]
4. DEKU NO BOY [Covered by DOPING PANDA]
5.Crazy [Covered by the band apart]
6.SEE YOU [DOPING PANDA / the band apart]
[Disc-2 / Blu-ray]
1.MELLOW FELLOW [Music Video]
2.SEE YOU [Music Video]

◾️DOPING PANDAツアー情報
『mugendai THE CARNIVAL 2024』
9月16日(月)北海道・札幌PENNY LANE24
サブタイトル:mellow fellow SAPPORO
対バン:the band apart

9月28日(土)福岡・福岡BEAT STATION
サブタイトル:mellow fellow FUKUOKA
対バン:the band apart

10月5日(土)愛知・CLUB QUATTRO
サブタイトル:mugendai THE CARNIVAL 2024 ~DANDYSMANIACS NAGOYA~

10月14日(月・祝)東京・恵比寿LIQUIDROOM /
サブタイトル:mugendai THE CARNIVAL 2024 ~DANDYSMANIACS TOKYO~

通常チケット代:5,500円(税込/+1Drink代別)
オールスタンディング U-18:3,000円(税込/+1Drink代別)
※18歳以下対象、当日身分証確認有

DOPING PANDA 公式サイト
the band apart 公式サイト

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