青葉市子の音楽はなぜ海外リスナーの共感を集めるのか 言語の壁を越えて広がった楽曲群の制作背景

青葉市子、海外人気曲の制作背景

次作アルバムは“小さきものの声を聞くこと”がテーマ

青葉市子インタビュー写真(撮影=林将平)

ーー5位「太陽さん」は『マホロボシヤ』(2016年)通算5枚目オリジナルアルバムの収録曲ですね。

青葉:実はこの曲、割と初期に書いたんですよ。踊ってばかりの国のボーカルの下津光史くんと出会った頃、「初めましてなんだから歌でも書き合おうや」と言ってくれて(笑)。それで彼に書いた曲をずっと温めていて『マホロボシヤ』に収録しました。自分でも好きな曲で、よくライブの最後に演奏することが多いです。

ーー7位になったのが「いきのこり●ぼくら」(2013年)。この曲はどのようにして生まれましたか?

青葉:2012年か2013年の頃に書いた曲ですね。「Dawn in the Adan」と同様、夢で見たことを歌詞にしています。悪夢だったのですが。

ーー3.11(東日本大震災)から2年後にリリースされたアルバム『0』収録曲ですし、内容も震災を思わせるような歌詞ですね。

青葉:確かに、時期的にそう思われることの多い曲ですが、実際にはもっと前から興味を持っていたチベットの鳥葬が影響しています。亡くなった遺体を焼いたり埋めたりせずに、鳥に食べてもらうというシステムが非常に興味深く、そのことを考えた時期の歌詞だったので。

ーー8位の「卯月の朧唄」は、通算6枚目のアルバム『qp』(2018年)収録曲ですが、どのように作った曲ですか?

青葉:まさに4月の霞がかった空気の中で即興的に書いた曲です。気分で最初のワルツを弾いているうちに、スラスラッと最後まで歌詞とメロディと曲が同時に出てきました。

ーーそういうことって結構ありますか?

青葉:ありますね。ボイスメモを回しっぱなしにしておいて、遊んでいるうちに出てきたアイデアのいいところを切り取って曲にすることは割とあります。

青葉市子インタビュー写真(撮影=林将平)

ーー9位に入っているのが、フランスのシンガー Pommeをフィーチャーした「Seabed Eden(海底のエデン)」フランス語バージョン(2024年)です。「数年前からあたためていたプロジェクト。まずは私の曲に彼女がフランス語の歌詞を書いて、一緒に歌いました」とX(旧Twitter)に投稿されていましたが、もともとどういうきっかけで始まったプロジェクトなのですか?

青菜:最初Pommeに会ったのは、彼女が初めて来日した2018年です。日仏交流イベントがあり、その時に彼女が来日して、私も日本から参加しました。彼女のパフォーマンスがとても素敵で、「また会えたらいいな」と思っていたらInstagramで繋がってフランスで再会したんです。そこから彼女のショーに呼ばれたり、逆に私のショーに彼女が来てくれたりと交流が続いていました。

 Pommeはジブリ作品が大好きで、『千と千尋の神隠し』の主題歌「いつも何度でも」を自分のショーでよく歌っているんですよね。私も一緒に歌ったこともありますし。で、コロナ禍になる少し前に「お互いの曲を翻訳し合って一緒に歌いたいね」と話していたのですが、そこから2人とも多忙になり……。しかし再会のタイミングで「そういえばあれが途中だったね」と思い出し、お互いのチームのマネージャーたちも加わり、プロジェクトが進みました。

ーーせっかくなので、期待のニューアルバムについて進捗状況を聞かせてもらえますか?

青葉:あともう一息という感じです。前作『アダンの風』はストーリーをがっちり作り込み、「架空の映画のためのサウンドトラック」という名前をつけたくらいなので、限定されたストーリーの中で音楽が鳴っていました。しかし今回はその枠を広く取り、広い解釈で作っていますね。

ーー「広い解釈」というのは、具体的には?

青葉:私たちは個体として存在していますが、俯瞰的にみると一つの生命体のように群れとして循環のシステムに組み込まれている。そんなふうに、私たちが自然を形成する星のうねりの中にいることを、距離や角度を変えて見られる作品にしたいと思っています。

ーー以前のインタビューで、「20年頃から南の海で潜るようになった。クジラが鳴くと水が揺れる。吐き出す息にも水分が含まれているから、歌とは水を出し、水を振るわせる行為なんだと思った。水の中で感じたことを制作中のアルバムでも歌うつもり」(※1)とおっしゃっていました。

青葉:私は素潜りが好きで、海によく行くんです。沖の方までサバニや船で行って、そこで潜ると深いところにしか生息していないクラゲの赤ちゃんみたいな小さな生物が見えるんです。七色に点滅している小さな紐のようなものが、すっと横を通り過ぎるんですよ。それに、海の中では陸よりも音が伝わる速度が速く、遠くの音がすぐ近くに聞こえます。そういうところで、自分たちの見えていることが全てではないことを拾い上げて音楽にする取り組みをしています。小さきものの声を聞くことがテーマです。

青葉市子インタビュー写真(撮影=林将平)

ーー前作よりもさらに大きなテーマのアルバムになりそうですね。

青葉:今回も島へ撮影や曲作りに行ったりしていますが、そこに限定せず、ツアーで訪れるいろんな土地を含めて、この星でうごめく生物たちの声を取り入れるようなアルバムにしたいです。島や海だけではなく、ボーダーレスなところで作っています。

※1:https://www.yomiuri.co.jp/local/miyagi/feature/CO063776/20230309-OYTAT50039/

■リリース情報
新曲「Lullaby」配信中
https://ichiko.lnk.to/lullaby

■ライブ情報
『ICHIKO AOBA “Luminescent Creatures” World Premiere』
2024年10月19日(土)開場17:00 / 開演18:00
大阪・サンケイホールブリーゼ

2024年10月26日(土)開場17:00 / 開演18:00
東京・昭和女子大学 人見記念講堂

<2次先行受付中
期間:8月8日(木)12:00〜8月18日(日)23:59
受付URL:https://eplus.jp/ichiko-worldpremiere/
※抽選受付
※海外居住者向けチケット先行受付(先着)URL:https://ib.eplus.jp/ichiko-worldpremiere

『ICHIKO AOBA Japan Tour 2024』
2024年10月31日(木)開場18:00 / 開演18:30
福岡・福岡市立中央市民センター

2024年11月2日(土)開場17:30 / 開演18:00
広島・広島YMCA国際文化ホール

2024年11月8日(金)開場18:00 / 開演18:30
札幌・ふきのとうホール

2024年11月15日(金)開場18:00 / 開演18:30
金沢・金沢市アートホール

2024年11月22日(金)開場18:00 / 開演18:30
高松・サンポートホール高松 第1小ホール

2024年12月1日(日)開場17:00 / 開演17:30
名古屋・中電ホール

2024年12月8日(日)開場17:00 / 開演17:30
仙台・仙台銀行ホール イズミティ21 小ホール

<チケット先行受付>
受付期間:8月8日(木)12:00〜8月18日(日)23:59
受付URL: https://eplus.jp/ichikoaoba_japantour2024/
※抽選受付
※海外居住者向けチケット先行受付(先着)URL: https://ib.eplus.jp/ichikoaoba_japantour2024

チケット一般発売日:9月28日(土)

『ICHIKO AOBA Summer EU TOUR 2024』
8月26日(月)Feeërieën at Warandepark, ベルギー・ブリュッセル
8月29日(木)Dominicuskerk, アムステルダム・オランダ (SOLD OUT)
8月30日(金)Into The Great Wide Open Festival, オランダ
9月1日(日)End of the Road Festival, イギリス
9月3日(火)St Martin-in-the-Fields, イギリス・ロンドン (SOLD OUT)
9月4日(水)ElbPhilharmonie, ドイツ・ハンブルク (SOLD OUT)
9月6日(金) Barbican w/ Cornelius ロンドン・イギリス (SOLD OUT)
詳細:https://ichiko.lnk.to/Live_in_2024

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる