Linked Horizonが“鎖地平団”として愛された理由もここに ベスト盤で追体験する『進撃の巨人』の物語

 10年という年月に渡り、TVアニメ『進撃の巨人』シリーズに寄り添い、いや共に壮大な世界観を創り上げてきたLinked Horizonの『進撃の巨人』関連楽曲のベストアルバム『進撃の記憶』が8月7日にリリースとなる。ここに収録された名曲群を耳にすれば、あの場面やセリフが鮮明に浮かんでくるであろう、まさにLinked Horizonによる“『進撃の巨人』物語”を追体験できる音世界がここにある。既存曲のリマスタリングに加え、「特装盤」(PCSC受注生産限定)には、とある登場人物をテーマに据えた新曲がボーナストラックとして収録されており、最後の最後までファンを飽きさせないマニア涎垂の内容だ。

 本作を聴いて、あらためて凄まじい楽曲強度と完成度の高さを実感するわけだが、“Linked Horizon=『進撃の巨人』”のイメージを決定づけた各オープニング楽曲のインパクトは今なお強烈だ。2013年のアニメスタートと同時に人々を震撼させた、Season1前期オープニング主題歌「紅蓮の弓矢」。ダイナミックな楽曲展開と猛り狂う金管楽器を軸としたスケールの大きいオーケストラアレンジ、力強くまっすぐで勇猛さを感じるRevoのボーカル。どこか古典的な音楽性を漂わせ、往年のアニメソングを彷彿とさせるヒーロー感と斬新さが介在する曲調はまさに『進撃の巨人』で描かれた、時代も背景も不明瞭な壁の中の世界にぴったりであった。そしてフル音源には、TVサイズではわからなかった更なる音楽の深みがあり、我々を驚愕させた。Aメロ、Bメロ、サビ……といったJ-POPのセオリーに縛られないクラシック音楽のような構成に加え、シュレッドなギターを筆頭に各楽器の超絶技巧の見せ場があったり、ハードロックやメタル、プログレをも呑み込んだバンドアレンジがベースになっていることも忘れてはならない。

 こうした音楽性は、荘厳な合唱隊が印象的な「自由の翼」(Season1 後期オープニング主題歌)、歌劇を想起させるシンフォニックな響きと展開に圧倒される「心臓を捧げよ!」(Season2 オープニング主題歌)と引き継がれ、さらに発展していった。

 Linked HorizonとRevoが多くの進撃ファンを唸らせ、愛されるようになった理由はこうしたオープニング主題歌だけではない。キャラクターやストーリーに沿った楽曲の数々である。そして全曲をRevoが歌うわけではなく、楽曲の世界を表現するに相応しいボーカルを迎えている。

 母から子への普遍的な愛を綴った「14文字の伝言」。主人公エレン・イェーガーの母、カルラ・イェーガーの想いを松本英子が優しく歌い、女型の巨人として責務を果たそうとしたアニ・レオンハートが、己を封印した結晶体となった中での葛藤「彼女は冷たい棺の中で」を、福永実咲が凛と歌っている。その歌詞が意味するところは、アニメファンであればわかるだろう。しかしながらそこに直接的な表現があるわけではない。これは、多くのアニメに見られるような“キャラソン”などとは異なり、あくまで『進撃の巨人』のファンであるRevoによる解釈で書かれたものが多いということでもある。Linked Horizonが“鎖地平団”という愛称でファンから呼ばれ、愛される理由でもある。

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