「石井恵梨子のライブハウス直送」Vol.2:SPOILMANの轟音は観客を置き去りにしない ラスト1秒まで必見のスリル
SPOILMAN最大の見せ場はラストシーンだ。曲のアウトロでカシマはアンプに向かい、ツマミをすべて最大、いわゆるフルテン状態にセットする。とんでもない音量のノイズがギュイーンと響き渡る。ここまではよくある。安いギターを床に叩きつける人も過去にはいただろう。ただ、カシマは爆音が出たまま、アンプ横にあったソフトケースにささっとギターを仕舞って担ぎ、アンプのスイッチを切る。そして颯爽とステージを降りていくのだ……撤収、早っ。唖然した後に爆笑がやってくる。もちろんここでも、僕らユニークでしょう? といった表情はないのである。
「恥ずかしいんですよ。演奏は全然恥ずかしくないけど、終わって『ありがとうございました』とか言って、普通にBGMが流れ出す。みんなガヤガヤ話し始めて、もうこっちを見ていない。そんな中でケーブル抜いたり仕舞ったり、カチャカチャ片づけるのが本当に恥ずかしい。なんでこんな時間があるんだろうと若い頃から思っていて。そこをカットするために始めました」
こんな終わり方見たことない、こんなふうにライブが終わったら最高っていうベスト3に入りますね――当日同行していた編集者が興奮気味に話していた。もちろん同意。無法地帯のライブハウスもいいが、立つ鳥跡を濁さず、の終わり方はすこぶる新鮮だ。コロナ禍明けでハイペースのライブ活動が戻ってきた今、初めてSPOILMANを観てハマる人が続出中である。
「石井恵梨子のライブハウス直送」Vol.1:えんぷていの音楽が呼び起こす郷愁 “ロックバンド”であることへの矜持
コロナ禍以前の活気が戻ってきたライブハウス。人と集まることも声を出すことも禁止されていた時期の反動もあり、ここでは今、若いミュー…