DEAN FUJIOKA「誰かのためになる音楽活動をしなければ意味がない」 再構築と初心、2カ国語で歌う新曲を語る

本当の自分は「歌や演技をしていると隠しようがない」

ーー「役者の仕事をする時にはリサーチに時間をかける」とおっしゃっているのを拝見したことがあるのですが、「In Truth」でいちばん時間をかけた、苦労した工程はどこだったのでしょうか。

DEAN:俳優業ではリサーチに時間をかけますね。今回も台湾の法廷にいる検察官の方に直接インタビューをしに行って、どういう表情で、どういう語気で、どういう言葉で仕事をしているのかを学ばせてもらいました。もちろん音楽を作る時も深める作業はしているんですけど、これだけ自分で曲を書いてきていると、思ったことをある程度具現化できるようになってくるんですよね。もちろんプロと比べたらまだまだですが、デモを作るくらいはひとりでできるようになるんです。今回は中国語バージョンを作ったところが苦労したポイントかな。今回初めて原盤を自分で持つ形で作っていったので、そのあたりの仕切りや契約、交渉がしんどかったです。

ーーなるほど。

DEAN:フライトを取ったり、スケジュールを組んだり。「音楽をビジネスとして成功させるためには」と考えたり、進行管理のような部分も担ったりしていたので、この一年は脳みそがギュッとする感じが続いていました(笑)。今となっては笑い話ですけど、武道館公演の制作期間中もセルフプロデュースという形で主演映画作品の作業をしていたり、一方では歌い手としていろいろと調整をしていたり、多ジャンル、多言語、多業種で動いていたので相当過酷でした。途中からチームで分業できるようになってきたのですが、それまでは大変でしたね。でも、そういう道を選んだからしょうがないですけどね。成長のきっかけだと思っています。

ーー多方面で活躍するDEANさんならではの苦悩ですよね。歌詞を拝見すると「本当の自分とは?」と考えさせられます。DEANさんは本当の自分をさらけ出すことに抵抗があるタイプですか? それとも積極的に開示したいタイプですか?

DEAN:歌や演技をしていると、隠しようがないですよね(笑)。なので諦めているというか、本当の自分を開示することが自分の責務だと思っているというか。僕は演技をするって、生理現象を表に出すことだと思っていて。もちろん役と自分はまったく別物です。役を入れたうえで表現する感情って、自分のなかにあるもの以外は出てこないんですよ。だから、カメラに映っているものが本当の自分だなと思います。

抱える違和感の解決法「いちいち向き合っていたら生きていけない(笑)」

ーーなるほど。この楽曲に関して「周りの人との関係性、そして自分と自分の関係性を、見つめ直すきっかけになれば」とコメントされていますが、DEANさんはどんな時に自分や周りの人との関係性を見つめ直そうと思いますか?

DEAN:どんな時なんだろうなあ。心のなかに、小さな違和感みたいなものがあると思うんですよ。それを気にしないでいられるならいいなと思う。でも、変化を渇望する感覚や焦燥感のようなものが出てくるなら、見つめ直すきっかけかもしれないですね。

ーー「面倒くさい」「怖い」という感覚からその違和感を無視してしまう人もいると思うのですが、DEANさんは向かい合うタイプなのですね。

DEAN:本当は向き合いたいんですけど、いちいち向き合っていたら生きていけないですよ(笑)。向き合い続けると「じゃあどうする?」と四六時中考えなくてはいけなくなってしまいますしね。

ーーたしかに(笑)。ただ、向き合うタイプだからこそ先ほどの再構築のお話にも繋がるのかなとも思っていて。

DEAN:ああ、それはあるかもしれないですね。自分の心と向き合うことって、体と向き合うことと同じだと僕は思っているんです。仕事柄、体をどう動かしていくかということに向き合っていて、人体は脳、骨、神経、筋肉、皮膚、臓器……いろいろな組織が集まって成立していますよね。それは多くの人が同じ構造になっていますが、同じ人体なのに長距離を気持ちよく歩ける人もいれば、腰や膝に負担がかかって歩けなくなってしまう人もいる。気持ちよく歩ける人は構造を理解して、正しく動かすことを知っているわけです。もし、気持ちよく歩けないのであれば、正しいアプローチができるようになったほうがいいですよね。それによって筋肉が成長したり、新しく神経の回路が生まれたりもするかもしれないし。自分の心と向き合うのも、それと同じなのかなって。一見遠回りに見えるかもしれないけれど、見直して、時には従来のやり方を捨てて、新しいオペレーションを組むことで、これまでにはなかったようなインスピレーションが生まれたり、効率化を図ることができるかもしれない。僕の場合は役者として体に向き合ってきた経験則があるので、心の違和感を無視せず向き合うことが多いのかもしれませんね。

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