『学マス』花海咲季の新曲が話題に Snow Man、NiziUら楽曲手掛けるKENTZのサプライズ起用の効果
そんな「Boom Boom Pow」という楽曲は、もちろんビッグネームの知名度頼みのものではなく、“花海咲季”というアイドルと出会うことによって最も強い輝きを放つナンバーとしての完成を見ている。サウンド自体はKENTZのフィールドを最大限に活かしたトラップ調のダンスチューンに仕上がっており、身体能力の高い咲季というアイドルにうってつけのナンバー。入学試験で首席の成績を収めた彼女によく似合う、隙のない圧巻のステージを見せつける光景が目に浮かぶようだ。サビ冒頭の〈Gonna, Gonna, Gonna〉といったフレーズの耳馴染みもとにかく良好で、たまたま耳にした人も惹きつけられること請け合いのキャッチーさも兼ね備えている。
続いて歌詞に目を向けると、「Fighting My Way」同様に力強く前へと進んでいく決意を感じさせたり、咲季らしい自信にあふれた言葉が並ぶ。まさに、前述したとおり首席で入試を突破した彼女が、観客に期待されるであろう圧倒的な強者としての姿にピッタリだ。切れ味鋭いうえに力強いダンスを見せながら、堂々と〈どんな時でもヒロインはMe〉と言い放つ曲は、やはり花海咲季にこそふさわしい。その一方で、後半ほんのわずかに弱さが垣間見える部分もこの曲のポイント。そこで挫けそうなときに支えてくれる存在として示唆されているものが、咲季のことを“早熟の天才”と認識しているプロデューサーにとっては自分自身でもあるように感じられるのと同時に、「支えてくれる者=ファン」へのメッセージとしても届く。こういったダブルミーニング性もまた、あらゆる人を満足させる大事なファクターのひとつではないだろうか。
こうして作り上げられた楽曲を彩る歌声が、単にスタイリッシュさだけを追求したものになっていないところも魅力的なポイントだろう。ラップ部分のフロウに代表されるような、挑発的な要素や小悪魔さの込められたボーカルワークは、勝ち気で自信にあふれた挑戦的な表情をステージ上で見せる“アイドル・花海咲季”のイメージにドンピシャ。そのうえで、身長が低めでかわいげも持ち合わせる彼女だからこそ求められるキュートさも、楽曲をカッコよく乗りこなしながら要所要所に絶妙な塩梅で織り交ぜている。この非常に見事なバランスが、この曲を本当の意味で“花海咲季”にしか歌うことのできない曲たらしめていると言っていいだろう。まずトラックに惹かれたという方も、ぜひ改めてボーカルにも注目して聴き込んでみてほしい。
花海咲季というアイドルは、超早熟という自身の特性に抗いながら、妹である花海佑芽を上回り続けるための挑戦を日夜続けている。そのアイドル像は、従来の「アイマス」の枠組みにとらわれずに新たな試みを絶えず行い、その裾野を広げている『学園アイドルマスター』というコンテンツ像とオーバーラップするものではないだろうか。だからこそ、そんな彼女の2曲目のソロ曲となった「Boom Boom Pow」を味わえば味わうほど、彼女が『学マス』の“信号機”のセンターにふさわしいと改めて思わされる。従来の「アイマス」楽曲らしく深堀りするほど味わい深くなる要素を持ちながら、コンテンツにとらわれないキャッチーさも兼ね備えた新たなソロ曲を携えて、これからも花海咲季は『学マス』の先頭に立ち、力強く引っ張り続けていくだろうと確信させてくれた。
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