リアルサウンド連載「From Editors」第62回:10年の時を経て「ゆめかわいい」と再会する

 「From Editors」はリアルサウンド音楽の編集部員が、“最近心を動かされたもの”を取り上げる企画。音楽に限らず、幅広いカルチャーをピックアップしていく。

「ゆめかわいい」との再会

[Full Cam] ILLIT(아일릿) - Magnetic (4K) | ILLIT : I'LL (SHOW) IT
[페이스캠4K] 아이브 장원영 'Accendio' (IVE JANG WONYOUNG FaceCam) @SBS Inkigayo 240519

 ILLITの「Magnetic」やIVEの「Accendio」など、少女的で可愛らしいく、ドリーミーでどこか毒っぽさがあるようなモチーフがK-POPアイドルの楽曲に用いられることが最近多いように感じます。これらのモチーフは“Y2K”、つまり2000年代というよりも、2012年から2016年ごろ流行っていた「ゆめかわいい」の概念が近いように感じます。1996年生まれの私は、ギラギラにデコったガラケーのような、いわゆる“平成ギャル”はリアルタイムに見ていなくて、「ゆめかわいい」をちょうど高校生〜20歳になるまでの間に夢中になっていた世代なので、どちらかといいうとこっちのモチーフに強烈な懐かしさを感じます。

 高校生の時から「流行ってるものがなんでも好き」というミーハーさと、「クラスの誰とも被らない服が着たい」という自我を持っていた私は、当然のように「ゆめかわいい」ものに夢中になります。原宿に行ってCandy StripperとMILKを何度も往復して見比べて服を買ったり、文房具をSWIMMERで揃えたり(あと、勉強に使う蛍光ペンを全部くすんだパープルで統一するこだわりもありました笑)。当時の私にとっての憧れの存在が、モデルとして活躍していたAMOさんになります。

 現在は2人のお子様を育てながらアパレルブランドのディレクターとしても活躍しているAMOさんですが、4年前に開設しあまり更新されなくなっていたYouTubeチャンネルが6月から活発に更新されています。

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 久しぶりにAMOさんが喋る姿を見て思ったのは、私にとって「ゆめかわいい」はファッションのジャンルではなく、自分の居場所であったということ。流行っていたとはいえ「ゆめかわいい」はメインカルチャーではなく、「人と違うもの」が好きな人に向けてのモチーフでした。「ゆめかわいい」が持っている徹底した可愛らしさと共にあるどこか虚構のような毒っぽさはそういうメインカルチャーになり得ない部分が起因しているように感じます。そんな中でAMOさんがブログで紹介する映画や音楽、考え方はクラスの誰も知らないことでしたし17歳の私は影響を強く受けていました。

 K-POPアイドルによる「ゆめかわいい」のリバイバルとAMOさんのYouTube復活という、デザイン性と精神性の両面で私が10年前に大好きだったものが注目を集めていることはなんだか不思議な気分ですが、あの時のままではなく2024年らしさを持ちながら再解釈している様子は本当に面白いので、どうかもう少しこのブームが続くといいなと思っています。

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