asmi、人生初の失恋から始まった物語 アルバム『リボン』と“かわいい”を貫く理由を語り尽くす

 TikTok35億回再生を記録したヒットソング「PAKU」、TVアニメ『ポケットモンスター』(テレビ東京系)主題歌「ドキメキダイアリー」、ドラマ『マイ・セカンド・アオハル』(TBS)挿入歌「開青」などを歌うシンガーソングライター・asmiが、ついに1stメジャーアルバム『リボン』を完成させた。その内容は、これまでリリースした楽曲をコンパイルするだけでなく、13曲中9曲が新曲という充実っぷり。asmiは本作の曲順をとても気に入っているというが、インタビューで掘り下げていくと、アルバムの流れはasmi自身が音楽活動を始めてから今日に至るまでの5年間の人生物語そのものを表していることが見えた。『リボン』とこのインタビューから、「認められたい」という切実な想いから始まったasmiのストーリーをお届けする。(矢島由佳子)

人生初の失恋から始まったasmi「あの失恋がなかったら曲を書いてないかも」

――メジャー1stアルバム『リボン』が完成して、それがリスナーにも届いて、今どんな気持ちが真っ先に浮かんできますか?

asmi:何年もあたためて「早く聴いてほしいな」と思っていた曲も入っているので、これを全部出せた今は「スッキリした」というのがいちばんです。自分のなかでは傑作ができたと思っていても、聴いてくれた人の反応を感じないと自信がなくなってくるタームもあったりするので、やっと聴いてもらえて、いっぱい感想をもらえて、今は生き生きしています。現時点での最高傑作は『リボン』です。

――みんなからポジティブな反応も得られて、今は自信満々に「最高傑作」と言える、と。メジャー1stアルバムが13曲中9曲も新曲であることにまず驚いたんですけど、そこにはasmiさんのどういった想いがありましたか。

asmi:“ワクワク”を最優先したという感じです。私は、人をびっくりさせることとか、いたずらが好きで。今まで出した曲も自信満々のものばかりなんですけど、ワクワクしてもらいたいし、自分もワクワクしたいし、新曲をいっぱい聴いてもらえるのは自信にもなるので、こういった形にしました。

――その結果、『リボン』は“シンガーソングライター・asmi”として今やりたいことが鮮度高く詰まったアルバムになっていると思いました。5年間の音楽活動を経て、今asmiさんはどんな音楽/表現をやりたいと思っているのか、言葉にするといかがですか。

asmi:最近はいろいろな形で活動されている方がいますけど、私は自分で曲を書いてそれを歌うこともあるし、シンガーとしての一面もあるので、こうやって新しい形で表現できていることがすごく嬉しいです。そのなかでも、「かわいい」ということはやっぱり何より大事にしていて。それはただ単に「形が綺麗」とか「べっぴんさん」という意味ではなくて。いろんな意味で「かわいい」ってあると思うんです。愛嬌だったり、ウキウキする感情だったり。「かわいい」は、誰かに言われていちばん嬉しい言葉かもしれないです。その次は「面白い」(笑)。

――asmiさんにとっての「かわいい」は、ただ見た目のことを指したり、「女の子らしい」ということではなく、いろんな側面を内包する大きな肯定の言葉として捉えている、ということですよね。

asmi:たしかに。ダメなところにも「かわいい」って使いますもんね。ちょっとアカンところも認めてあげられる言葉が「かわいい」だなって思います。

――1曲目「叶わない」について、「asmiのはじまり、5年前/人生で始めての失恋をした」とX(旧Twitter)にポスト(※1)されていましたが、この曲はどういう曲で、なぜメジャー1stアルバムの1曲目に置いたのかを聞かせてもらえますか。

asmi:この曲は、5年前にasmiが始まるきっかけとなった失恋をしてから2、3年くらい経ってから書いたんです。別に引きずっているわけでもないし、まだ好きとかでもまったくないけど、あの時の気持ちを思い出してすっごく胸が痛む瞬間がいつまでもあって。それを歌にしようと思いました。「この曲で蓋をしよう」「あの失恋について書くのはこの曲で最後にしよう」と思って書きましたね。でも、これがasmiの始まったきっかけの物語なので、この曲からアルバムが始まったら意味があるかなと思って1曲目にしました。

――失恋した気持ちを曲にしたところからasmiは始まった?

asmi:ちょうど5年前、高校を卒業して専門学校に入ってから3カ月くらい付き合った人に振られて。人生で初めて振られて、もう電車に乗るだけで涙が出てくるし、何を考えても泣いちゃうようになって。「失恋ってこんなにツラいんや」って知った時に、専門の先生からも「asmiのその気持ちが今いちばん種になるよ」と教えてくれて、この気持ちを曲にしていけばいいんだと思って曲を書き始めました。その失恋がなかったら、もしかしたら曲を書いてないかもしれないし、音楽を諦めていたかもしれないので、こんなことにはなってないですね。

――その時に恋愛における感情の揺さぶりを音楽にする楽しさややりがいを感じて、それが今もasmiさんがラブソングを書く動機として続いているという感覚ですか?

asmi:うん、そうですね。その頃書いた曲は音源になってないものもあるんですけど、「osanpo」を初めて専門の人たちの前で披露した時に「これいいやん!」って言ってもらって、そこで認められた感じがして。asmiが始まってからの数年間は、誰かに認められることを目標にしていたというか、それをいちばん大事にやっていたんです。4つ上のお姉ちゃんがすごく歌が上手くて、お正月の集まりとかで親戚の前で歌って褒められてるのを見て、「私も褒められたい」という気持ちがずっと根底にあって。「osanpo」をみんなに褒めてもらったことをきっかけに、「私はこの感情がすごく幸せだ」「生きてる心地がするぞ」と思って、asmiが始まってからもずっとそれを最優先にしていたんですよね。でも、応援してくれる人が出てきて、だんだん目的も変わっていきました。

――前回のインタビュー(※2)でも「応援してくれる人たちの存在を直接感じて、もうちょっと力になりたい、もうちょっと強い存在になりたいと思った」という想いを語ってくれましたよね。「認められたい」という想いから、どういうふうに変わっていったのでしょう。

asmi:「認められなくてもいいかもって思えたんやな」と思ったんですけど、今この話をしていて、それは認めてくれる人がいるからやなとも思いました。こうやって認めてくれて、私に自信を与えてくれた人たちを、もっともっと大きいところへ連れていって恩返しをしたいというのが今のいちばんの目標ですね。

――それは「あのね、」などに繋がってくる話だとも思うんですけど、今の話でもうひとつだけ質問させてもらうと、なぜ「osanpo」がみんなに褒めてもらえる曲になり得たのだと思いますか? きっと、その手応えがasmiさんが曲を作るうえでずっと大事にしていることのひとつになっているのだろうなと思って。

asmi:たしかに。そのままやったからかなあ。あまり飾らない自分でいたいということは常に思っていて。歌詞を書くうえで、たとえば言葉の発音をそのままメロディにできたらなとか、話し言葉みたいにしたいなと思っていて、それは「osanpo」を書いた時からやっていたことで、ずっと変わってない部分かもしれないです。それ、今気づきました。ありがとうございます(笑)。

――(笑)。「My Life」はいつ頃書いたものですか? これはまさにasmiさん自身の人生や性格が丸ごとそのまま曲になっているような曲で。

asmi:今、大阪と東京の2拠点生活をしてるんですけど、東京にも拠点を作ることを考え始めたタイミングで書きました。世界が広がったタイミングで。私、ビビりな部分もあるんです。ただ、行動力が半端ないところは私の長所だと思っているので、そういう私らしさを歌って、みんなにとってもパワーになる曲を書けたらなと思って書いた曲です。

――asmiさんは、どういうことに対してビビる気持ちが出るんですか。

asmi:自分のことを「メンタル弱い」って思い続けちゃってるのかなあ。だから、新しい環境に自分を掘り込んだとしても潰れちゃったらダメやなあって、想像しちゃうところがあるんですよね。そこがビビりやなって思います。でも、そうと決めたらすぐに行動するところが私のよさですね。この曲は、私自身が光になれている感じがして心地好いです(笑)。

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