『ユイカ』にとってのラブソングとは? 音楽を始めた理由から現在までを刻んだアルバム『紺色に憧れて』

 19歳のシンガーソングライター『ユイカ』が、初めてのアルバム『紺色に憧れて』をリリースした。アルバムをリリースすることが夢のひとつだったという『ユイカ』。2021年にTikTokに投稿した「好きだから。」から約3年、彼女はシンガーソングライターとして、そしてひとりの女の子として、何に気づき、何を歌にしているのか。一つひとつ丁寧に話してくれた。(編集部)

『ユイカ』超重大発表!!

何事も「いけんじゃね?」って(笑)。だけど、恋愛だけはちょっと自信がない

――まずは1stアルバムが完成した今の心境を教えてください。

『ユイカ』:アルバムを作るのがずっと夢だったので、完成して嬉しいです。制作中は「アルバムって作るのこんなに大変なんだ……」と思っていたので、今は「形になってよかった」という感じです。

『紺色に憧れて』

――アルバム制作において、何が特に大変でしたか?

『ユイカ』:今までは、曲を作る時に“締め切り”というものが存在していなかったんです。思い浮かんだら曲を作って、作ったら聴いてもらって、それが「お、いいじゃん!」となったらリリースするという形だったんです。だから、アルバムを作るとしたら私は締め切りを設けてもらわないと期限までに曲を作れないと思ったので、締め切りを設けて。でも、そうするとずっと「何か曲を作らなきゃ」というマインドになってしまって。それが大変でした。

――今までは、曲の一部をTikTokやYouTubeにあげて、という段階を踏んでいましたもんね。

『ユイカ』:はい。1小節とかワンブロックできたら、それをTikTokにアップして、反応がよかったらフルで作るという流れだったので、今回は大変でした。

――それで言うと、今回はまったく世に出していない曲がリリースされるという緊張感のようなものも?

『ユイカ』:そうなんですよ。「みんな聴いてくれるかな?」「みんなどう思うのかな?」っていう不安な気持ちも少しあります。

――そもそもアルバムを作るのが夢だったということですが、それはどういった理由から?

『ユイカ』:私は曲を聴く時に、そのアーティストさんのアルバム単位で聴くことが多いんです。アルバムでは順番とかも考えて作っているだろうし、そこに込められている想いのようなものを探すのがすごく好きで。だから、「いつか自分も……」と思っていました。

――ということは、『ユイカ』さんのなかに「アルバムとはこういうもの」みたいな考えが存在する?

『ユイカ』:はい。アルバムは、そのアーティストの振り幅を見せられるというか。そのアーティストの全部を表現できるのがアルバムだと思っていて。シングル1曲だけでもその人の味は出るかもしれないけど、「こんなこともできるんだ!」とか「こういう曲も書けるんだ!」という違う一面も見せられるのがアルバムだと思っています。

――そんなアルバムに対する理想や憧れのある『ユイカ』さんが作る初めてのアルバムですが、制作の段階で構想はありましたか?

『ユイカ』:今回は、今までに出したシングルで見せてきた『ユイカ』とは違う部分を、いつも聴いてくださっている方に届けたいという思いで作りました。

――では、まず新曲についてお話を聞かせてください。まずは1曲目「紺色に憧れて」。『ユイカ』さんご自身のことを綴った曲だと思いますが、この曲を作ろうと思ったのはどうしてだったのでしょうか?

『ユイカ』:「17さいのうた。」という曲で音楽に対する葛藤は書いたんですが、どうして音楽をやりたいと思ったのか、今どういう気持ちで音楽に取り組んでいるのかということは曲にしたことがなかったんです。それを表現できる曲がひとつあるとアルバムの顔になるんじゃないかなと思って、書き始めました。

色に憧れて / 『ユイカ』【MV】

――今の音楽に対する気持ちをあらためて曲として書いてみて、いかがでしたか?

『ユイカ』:曲ができてみて「私はこう思っているんだな」と、自分で再確認したところがあって。やっぱり音楽が好きだなという気持ちと、これからも音楽をやっていきたいという気持ちを再確認しました。

――2番の〈どんな詩も、/自信がない子ばっか書いてるの。〉という歌詞を読んで、たしかにと思いました。ご自身では、自信がない子ばかり書いているのはどうしてだと思いますか?

『ユイカ』:私自身は、もともと自信がないタイプでは全然なくて。むしろ、何事に対しても「いけんじゃね?」って思っちゃう(笑)。だけど、恋愛だけはちょっと自信がないんですよね……(小声で)ちょっと奥手なんです。だから、恋愛を表現しようとするとそうなっちゃうのかなって。自分の曲をあらためて聴き返した時に、「この恋愛、うまくいくかな?」という気持ちばかりを書いているなと思って、この歌詞を書きました。

――アルバムを作るうえで、ご自身の曲を振り返ったんですね。

『ユイカ』:はい。自分が今までどういう気持ちで、どんな曲を書いてきたのか、それをどうしたいのかということを、全然自分で理解していないなと思ったんです。そもそも、私は普段は全然自分の曲を聴かないんですよ。自分の書いている曲が、自分のよく聴くテイストの曲ではなくって。だから、自分の曲をいちリスナーのような気持ちで聴いて「『ユイカ』ってこうなんだ」という確認をしました。自分の曲を聴いていると、なんかちょっと恥ずかしくなっちゃうんですよね。

――ご自身の好きなテイストの音楽とは違う音楽を作っているとのことですが、それはどうしてですか?

『ユイカ』:私はヨルシカさんとか坂口有望ちゃんとかが好きなんですけど、なんで好きかと言うと、マイナスな感情を儚く表現しているのがすごく素敵だなと思うから。でも、私の性格としては儚くないし、消えちゃいそうな女の子でもない(笑)。だから、自分がそういう音楽をやるのはちょっと違うなと思って。そういうものではなくて、恋愛の曲にしても、悲しい失恋よりは「これから両想いになるかもしれない!」というような状況を歌っているほうが自分っぽい。自分が書きたい曲は明るいもの。だからこそ、私っぽい曲になっているんだろうなと思います。

――たしかに、『ユイカ』さんの曲は、恋をしている瞬間を歌っていますし、最後に実るのでキュンとすることも多いですよね。

『ユイカ』:うれしい! そうなんですよ、すぐに(歌詞のなかの登場人物を)くっつけたがっちゃうんです(笑)。

――話を少し戻しますが、アルバム名とそのタイトル曲が「紺色に憧れて」。野暮な質問かもしれないんですが、『ユイカ』さんは何に憧れていたのでしょうか?

『ユイカ』:この“紺色”というのは、私が音楽を始めるきっかけになったアーティスト・坂口有望ちゃんのことです。有望ちゃんの曲に「紺色の主張」という曲があったり、『さよならネイビー』『ただいまネイビー』というライブタイトルの公演があったりして、彼女はいろいろな場面で“紺色”を使っているんです。有望ちゃんは制服という意味で“紺色”を使っているんですが、私にとっては紺色=坂口有望ちゃん。本当は「有望ちゃんに憧れて」と言いたいくらいなんですが、音楽を始めた理由として、このタイトルをつけました。

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